二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.411 )
- 日時: 2013/02/24 11:48
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: CzRhDmzb)
第60章 再び平和を取り戻した日常、リンたちを揺るがす想い…それは何か?
(ストーリーモード:リン)
兄のバンから連絡を受け、警察が駆けつけた。キラード団のボスである直野を含む犯行グループはついに逮捕された。
私と綺羅は救急車で運ばれ、ミソラ総合病院に入院していた…意識が戻った頃は綺羅が目の前に居る。
「綺羅…?」
「リン、今まで心配かけてごめん……僕のせいで、こんなことになっちゃって…」
綺羅は本来の優しさを取り戻したが、笑顔はまったく見られない。
催眠術によるダメージが残っている可能性が高いため、リハビリが必要だそうだ。
幼馴染であることを否めないわけにはいかず、やっとの思いで動く右手を上げて、綺羅の頬を触る。
「綺羅……いつも心配してたんだよ、あんなことになってたとは思わなかった」
「ああ……僕が誘拐されたことはニュースで見てたんだろう?」
「うん……見てた。でも、無事で良かった…」
全身にダメージを負ったせいで、動くことができない。完治するのに、1ヶ月くらいはかかると言っていた。
その話を聞いていた兄のバンはいつも優しく、頭を撫でてくれた。綺羅と話しながら、自然に打ち解けているようで仲良くしてくれる。
「リン……」
「直登兄さんのこと覚えてる?」
「ああ、直登くんか。バンさんから聞いたよ…亡くなったって?」
「うん……諒平兄さんがいるだけでも嬉しいけどね……」
もう1人の兄・小海諒平は酒を飲むことが好きで、遊びまくっていた。
いつも優しい諒平は私のことを気遣ってくれて、時には遊び相手してくれた。
直登が居ない現在(いま)、本来の明るさを取り戻した綺羅は感情を取り戻すことが精一杯だという。
リハビリも兼ねて、幼馴染である私と会話することで表現しようと試みているのだが……なかなか、上手くいかない。
「そっか……」
「でも、綺羅が少しだけでも元気になってくれれば……私も嬉しいんだけどなぁ」
「……ああ、そうだな」
傷ついた心を癒そうと思っていても、自分の存在を認めてくれる人なんていない。
そう思っていた……でも、自分の周りには大切な家族や仲間たちが居るから。
辛くても頑張れるんだということを見せてあげたい…数年前に亡くなった実の両親に報告したいというのもあった。
「ねえ、綺羅……」
「なんだよ……」
「今度、退院したらさ……2人でお墓参りに行かない?」
提案を受け入れたのか、綺羅は思わず苦笑しつつも分かっていて頷いた。
「うん、その時に行こうか。まぁ、僕もリンの両親に報告したい」
綺羅は照れながら笑って、私の頭を優しく撫でた。心優しい幼馴染が居て当たり前だと思ってしまう。
彼の感情が豊かになるまで回復を待ちたいというのもあったし、心を開くのに時間がかかることも承知の上で覚悟するつもりだ。
「綺羅、感情が豊かになるまで回復できると良いね」
「……そうだな、リンのために頑張らないとなぁ……」
リハビリを頑張りながら、催眠術からの脱却を目指す綺羅。回復の進み具合によっては、早く退院できる可能性も否めない。
***
1ヵ月後、全身に負った傷も癒えてきて回復できるほどまでに元気を取り戻した。
右手の動きもようやく良くなってきて、回復できたというところを見せてやりたい。
バンの父親・山野淳一郎が学校帰りの健太と直太を連れてきて、迎えに来た。
「姉貴、もう大丈夫なの?」
「うん、だいぶ回復したよ。やっと動けるようになったからね」
健太の問いに答えながら笑う。心の蟠りはないものの、まだ癒える状態ではないことを物語っていた。
直太は私に歩み寄ってきて、人懐っこい笑顔を見せた。私の回復を待ちわびていたのだろう。
「良かった、あまり無理しなくていいからね」
「直太……ありがとね、バン兄さんは?」
兄のバンの姿が見えないことに気付くと、淳一郎が代わりに説明してくれた。
「バンは夜に帰ってくるそうだよ。今日はどうしても抜けられない用事があるって言うからな」
「そっか……用事があるなら、しょうがないね」
バンがどうしても抜けられない用事っていうのは何なのか…夜に帰ってくる可能性が高い。
夜になるのを待つか、自宅の部屋で健太たちと話して待つのもありだ。淳一郎・健太・直太の3人と一緒に自宅まで歩きながら帰ることにした。
「本当に心配かけてごめんね……」
「何言ってんだ、俺らは元気になってくれると思って待ってたんだからよ」
「健太……」
健太の言うことも何となく分かる。いつも部屋で喋りながら、優しく接してくれた。
綺羅のことも気遣ってくれていて、人懐っこく話しかけている健太と直太の姿を見てきた。
「綺羅も前より元気になってきてるから良いんじゃね?」
「そうだね……」
「あいつは確か、催眠術で操られてたんだろ?」
「うん……」
ちょっと複雑な気分になってきて、不安を抱えていた。バンと顔を合わせるのが恥ずかしい。
兄にどんな顔して会えば良いのか分からなかった。それでも、心を開いてくれたバンには本当に感謝している。
「姉貴?」
「ごめん……大したことないから大丈夫よ」
夜になるまで待って、バンに自分の想いをハッキリ伝えたい。その反応が気になって、仕方がない。
帰ってきたら、どんな風に話しかけようか……普通で良いかということで、夜になるまで待つことにした。
***
夜11時ちょうど、自宅の2階にあるバンの部屋でLマガを読みながら待っていた。
(帰るの遅いなぁ……)
CCMは既に用意してあるから、すぐに連絡が取れていてもおかしくない。
それどころか、抜けられずに居ることも有り得るんじゃないか。すぐに連絡しようかと考え込んでいた矢先、部屋のドアが開く音がした。
「あっ……」
見覚えのあるクセ毛の青年を見て、誰であるのか分かった。そこにいたのは、山野バンだった。
顔が赤いところを見ると、酔っ払っていることが伺えた。その右手に持っているのは、お土産のようなものだろうか。
「ただいまぁ……リン、待っていてくれたのかぁ?」
「お帰り……遅かったね、何してたの?」
「飲み会に行ってたんだよ。どうしても抜けられなくてさぁ、あいつらに無理やり連れ込まれたんだよ」
どうしても抜けられない用事って……飲み会だったのか。でも、無理やり連れて行かれたってどういうことだ?
「無理やり連れて行かれたって……何かあったの?」
「望月たちが一緒に飲みに行こうって言い出すから、抜けられなかったんだよ」
「へぇ……じゃあ、強制的に参加させられたってこと?」
「うん、そういうことになるな……迎えに来れなくてごめんな」
バンは思わず苦笑しながら、ポンと私の頭を撫でた。どう見ても、明らかに酔っている。
心配だけど、水を用意して持っていくことにしようかと思って気遣った。
「兄さん、水を持ってこようか?」
「ああ、さっき飲んだから良い。母さんが用意してくれたから」
「そっか……なら良かった。ところで、その袋は……何?」
さっきから気になっていた袋の存在を見て思い出しながら、バンに聞く。
ようやく思い出したのか、ベッドに座り込んでいたバンは無言で手招きする。
(ベッドに来いってこと……?)
頭の中で『?』を浮かべながら、首を傾げて向かった。ベッドの前までやってきた途端、グイッと引っ張られた。
突然の行動に目を見張って、何するつもりなのか分からなかった。バンは呆然と見つめている私を見て笑う。
「いつも思ってたんだけどさぁ、お前……本当に無茶してるよね?」
「えっ……」
「なんだぁ、俺が気付いてないと思ってた?」
何のことだか分からない……怒ってなさそうだけど、ちょっと気になる。
バンの話を聞いてみるのもいいか……気遣ってあげないとダメな気がするのは気のせいか。
「この前、リンを見てたら……何か思いつめてるような顔してたから気になってさ」
「えっ……私が?」
その事に思い当たる節があったのか、バンを見て納得する。病院にお見舞いに来てくれたことは覚えていた。