二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.428 )
日時: 2013/02/26 11:48
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: CzRhDmzb)

第60章の続き

(ストーリーモード:リン)

翌朝、チュンチュンと雀の鳴く声が外から聞こえる。目を覚ますと、バンの部屋にいた。
カーテンの隙間から太陽の光が漏れていることに気付き、眠そうに起き上がる。

「…スー…」

隣で気持ち良さそうに寝息を立てているバンの姿が目に映った。昨日の飲み会で疲れていたようだ。
いつも優しいバンは私だけでなく、健太と直太のこともちゃんと考えてくれて気遣いを忘れないようにしている。
そういうところがあって尊敬できるから、何か話しやすい。兄のバンはいつも面倒を見てくれるので、話し相手になってくれた。

「…兄さん…」

家族がどういうものであるか、それに気付かせてくれた。孤独を感じさせず、いろいろ話してくれる兄がいて当たり前。
心を許せる家族や仲間がたくさんできた…ハルやヒロたちもいてくれて、どんなに心強かったか。

(バン兄さんがいたから、ここまで生きて来れたんだよね…いつもありがとう)

優しさだけは誰にも負けない…そういうところが大好きだったし、いつでも頼りになる。
誰にも相談できずに生きてきたからこそ分かる、孤独と憎しみ。孤児院に居た子供たちの凍りついた瞳を見てきた。

(あの時は本当に辛かった…バン兄さんが救いの手を差し伸べてくれたから)

たった1人の兄…山野バン、彼がいなかったら…生きていけない。
その辛さを分かってくれていたのもあって、やっと心を開くことができた。
バンの存在が大きかったし、私に生きる希望を与えてくれた。そんな彼を見ていて、諒平と重なってしまうのは気のせいか。

「兄さん…いつもありがとね…」

その呟きが受け入れられるはずもない…当の本人はまだ爆睡しているのかと思って、チラリと隣を見た。
眠そうに目を開けていたバンはボンヤリと私を見つめている。まだ眠いのか、毛布の中に入った。

「リン…」
「おはよう。兄さん、もしかして…聞いてた?」
「おはよ…ぅん、聞いてたよ…何を思い出してたんだぁ?」

バンは上半身を起こし、眠そうに欠伸しながら聞く体勢に入った。自分が思ったことを呟くのも良い。

「バン兄さんはさぁ…私のこと受け入れてくれたんだよね?」
「あぁ…だから、何が言いたいんだよ」
「うん、理由を聞かないのは警察から聞いてたんだよね…それで何となく受け入れてくれたんだなって思ってさ」

バンが私に理由を聞かないことに気付いていたので、そこが不思議としか思えなかった。
でも、今なら分かるような気がする…バンは虐待のことを知っていたから、何も言わずに見守ってくれていたのだ。

「んー…まぁ、俺はお前に生きて欲しかったっていうのもあるけどな…」
「えっ、どういう意味?」

バンに質問しながら問い質す。優しい彼のことだから、分かりやすく話してくれるはずだ。
ようやく納得したのか…肩を竦めたバンは眠いのを堪えて、私に向かって話した。

「リンに出会った時、大人しそうな子だと思ってた…けど、その理由が明かされるまでは何も言わずに居ようって決めたんだ」
「えっ…」
「でもね、お前はもう1人ぼっちじゃない。例え、理由があっても…誰にも言えない事はないはず…そうだろ?」

バンは笑いながら、無邪気に私の頭を撫で回す。その温かさを感じていられるのも、家族の存在があってこそ…。
その優しさが染みてきて、孤独を感じさせないオーラを醸し出していることが伺えた。
そう…今はもう1人ぼっちじゃない。バンたちがついていてくれるから、寂しくない。

「うん、そうだね…」
「でも、俺は…お前が元気にはしゃいで遊ぶところを見たいから。ついでに言うと…お前に辛い思いをさせたくないんだよ」

バンなりに気遣っていることが分かった時、本当に尊敬できるからだ。

『プルルル…』

CCMの着信音が鳴ったので、机の上にあるCCMを取ったのと同時にバンに渡す。
ふと思い出したのか、CCMを取り出して起き上がったところを見ると…どうやら、予定が入っていたらしい。

「あー今日は土曜日だしなぁ…」
「今日、何か予定あるの?」
「あるけど…リン、お前も一緒に行くか?」
「えっ…兄さん、一緒に行っても良いの?」

バンは暇そうだから、連れてってやると言ってくれた。とりあえず、部屋に戻って着替えた方が良いかもしれない。
そう思っていた矢先、部屋のドアが開いたのと同時にハルさんがやってきた。

「おはよ、バン! っと…リンまでいたのね」
「ハルさん…久しぶりです」
「なんだよ…2人で話し込んでるのに、邪魔すんなよォー」
「でも、今日は朝から行くんでしょ?」
「朝から…?」

ハルの言ったことが分からないので、バンを見た。困ったような顔をして、ポリポリと髪を掻く。

「あぁ、リンは知らないんだっけ…ある場所でLBXバトルやるんだよ」
「誰と?」
「おっと、今回は俺じゃないぜ…キョウヘイたちがバトルするらしい」

キョウヘイ・ヒュウ・メイの3人がシントたちとLBXバトルを行うようで、場所は一緒に行けば分かると言って明かさない。

***

バンは私だけでなく、健太と直太を連れて行ってくれた。もちろん、ハルさんも一緒だ。
ミソラ商店街に入って、突き当たりに見たことのない店が建っていた。店名は『ブルーキャッツ』と書かれていたことから、バンが行ったことのある場所ではないか。

「兄さん…もしかして、そこに行ったことがあるの?」
「あぁ、中1の時にな…レックスが働いていたところなんだ」

顔を顰めながら、辛い過去の記憶を思い出して答えるバン。その様子を見て、それなりに辛い思いしてきたのだと分かった。
ハルさんが気遣って、店のドアを開けて促してくれた。バンの後に続いて入ったのと同時に目を見張る。

「うわぁ…ここ、カフェだったのか…」
「何か綺麗なところだね…」
「でも、カフェにしては静か過ぎじゃねぇか?」

私・直太・健太の順にそれぞれ感想を述べると、バンは思わず苦笑した。
カフェなのに、なぜか綺麗だった…カウンターもあって、椅子も備えられていて会話できるようにしておいてあったのだろう。

「でも、そのバトル会場はどこにあるの?」
「まぁ良いから…こっちだ、はぐれないように気をつけな」

カウンターの奥にあるドアを開けて移動すると…目の前に現れた光景はLBXバトル会場だった。
ヒロさんたちも含めて、たくさんの人が楽しそうにLBXバトルを行っている。
バンが私たちに分かりやすく解説しながら、バトル会場のことを説明してくれた。

「ここは…アングラビジダス会場だ。レックスが主催者となって、ここでLBXバトルしたんだ」
「アングラビジダスって…何?」
「いつもはLBXルールが課されてるよな…つまり、ルール無用のLBXバトルなんだ」
「ルール無用って…何か理由があったりするの?」
「理由は特にない…けど、ルール無用なだけあって複雑だったりするんだよな」

バンと私の会話を聞いていたハルが中に入って、分かりやすく話してくれた。

「アングラビジダスは、バンが初めて出た大会の1つでね…ここは伝説LBXプレイヤーだったレックスが主催者で、闇のLBXバトルと呼ばれるものだった」

闇の…LBXバトルって…何か怖い。でも、バンがその大会に参加していたことを聞いて驚いた。
健太と直太もバンが出ていたことを知らずに居たのだから、そこまで突っ込みそうになるのも無理はない。

「じゃあ、闇のバトルが行われたということになるのか?」
「うん、そういうことになるな…LBXバトルができるからと言って、ここは決して甘くない場所なんだ」
「えっ…どういうことなの、兄貴?」

健太は何か言いたいこともあったのか、すぐに突っ込んだ。バンはそれでも構わずに話を続けた。

「闇のLBXバトルが展開されているからと言って、身を乗り出すのも難しい。ついでに言うと…この大会には、ジンも出ていたんだ」

ジンって…確か、『秒殺の皇帝』と呼ばれる海道ジンのことだったような気がする。
彼がその大会に出ていたのは、どういうことだろうか…ちょっと気になった。

「ジンって…確か、海道ジンさんだよね?」
「そう…あいつも出ていたから、俺は決勝まで進んだ。まぁ、そこまで言うのも辛いけど、しょうがないよな」
「へぇ…キョウヘイたちがLBXバトルするって言ってたけど…その相手は?」

それを聞くと、バンは溜息をついて指差す。その方向を見ると、小学生グループというべきか、3人の少年が立っていた。

「へぇ…何かやる気がありそうだね…」
「あぁ、キョウヘイたちがやることになったのかも知りたいな」
「でも…理由を聞いたらおかしいと思う気がするから…そっとしといてやろうよ」

ムラッとやる気が出ているキョウヘイたちの姿を見て、満足そうに笑って答える。
バンたちもそのつもりでいたのか、コクリと頷きながらも思わず苦笑していた。