二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.459 )
- 日時: 2013/04/07 14:07
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
第60章の続き
(ストーリーモード:バン)
ハルは少し複雑な思いを抱いていた。過去の記憶を思い出すのが辛いのだろう。
6年前に兄の人見氷介を亡くしたという辛い過去を抱えている。その出来事をきっかけに心を閉ざしたのは言うまでもない。
「……ハル、もしかして…」
ハルに向かって話しかけようとしたその時、いきなり差し出そうとした左手を振り払って走り出すように立ち去った。
「お、おい…ちょっ…!?」
声をかけた時は既に遅し。ハルの心に蟠りができてしまっているのだ。
レオンを含め、ヒロたちに過去のことを話すべきか悩んでいた。誰にも言わずに生き続けて来た。
ハルは俺のことを気遣って、頼るのが辛くて言えないで居たことも…俺には何となく察することができた。
「…あちゃ、何かまずいことした?」
「レオン、ハルさんに突っ込みを入れない方がいいと思う」
「ヒロ、そこまで言うことないだろ。だって、ハルさんはバンの幼馴染だよな?」
「レオン…君の言うことは分かるけど、何でLBXバトルしたいんだ?」
レオンとヒロの会話を聞いていて思ったこと。それはハルに対する思い…彼女に話すべきなのかも分からない。
2人が言いたいことはすぐに察した。でも、ハルは今も周りのことを見ていないようだ。
信頼できる仲間と言うのが分からず、生きることに専念するしかなかった。
「…兄さん?」
物思いに耽っていたその時、リンが心配そうに顔を覗き込んで話しかけてくる。
そういえば、リンもLBXバトルしたことがないことを思い出す。空手の先輩・後輩関係であることは分かる。
とりあえず、今日はここまでにして帰るしかない。この後、用紙ができた。
「リン…健太と直太を連れて、先に帰ってろ」
「えっ…兄さんは?」
「俺は用事ができたから、ちょっと出かけてくる。帰りは遅くなるから、先に寝てていいぞ」
リンの頭を撫でた後、ヒロたちに「じゃあな」と言って駆け出すように立ち去った。
ブルーキャッツを出た後、夕方になっていたことに気付く。夕焼けが見えて、うっすらと映っていた。
「…しょうがねぇ、あそこで飲んでから帰ろうかな」
【dective bar】という馴染み深いバーに向かった。ドアを開けて入ると、数野さんがいた。
そこはレストランもかねていて、夕飯も食べられるようになっている。カウンター前に設置されている椅子に座った。
「おっ、バンじゃないか」
「久しぶりだな…何か食べるものない?」
「メニューを見て選んでくれれば、すぐに出すぞ」
「助かるぜ、えっと…どれにしようかなー」
メニュー表を受け取り、そこに記されている夕飯のメニューを見つめた。
カツ丼もいいけど、焼き鳥も捨てがたい…よし、カツ丼とビールを頼もうかな。
「カツ丼とビールを下さい」
「OK、あっ…ついでにウイスキーも飲む?」
「飲めたらな…まぁ、それでいいならよろしく」
笑いながら、カウンターでジッと見つめて待つことにする。同時に過去の記憶が思い出される。
6年前、当時中3だったハルは氷介を亡くしてから荒れ始めるようになった。
LBXバトルしようって誘っても、『いいよ』って断られる始末だ。兄の居ない孤独と寂しさを感じていた。
兄の氷介を亡くしてから元気のない姿を見せることが多くなった。それは俺もすぐに察した。
「…ハル、お前…もしかして、強がってるんじゃないか?」
「強がってなんか…」
「何年、幼馴染をやってると思ってんだ。目を見て、ハッキリ分かる…どうして、明るく振舞うんだ?」
教室で話しながら、隣の席に座っているハルを見て心配そうに問い質す。
孤独を感じていたのは確かだし、目で上手く誤魔化そうとしても無駄。それは周りを見て信頼できないでいるはず。
「バン…」
「俺は…お前に辛い思いさせたくないんだよ。勢いよく元気そうなハルの姿が見たいからさ」
「でも…私は…っ!」
ハルが言いかけたのと同時に午後の授業が始まることを知らせるチャイムが鳴った。
授業が始まってしまったので、教室に先生が入ってきた。次の授業は英語だった。
「起立、礼!」
教科係の合図で席を立ったのと同時に先生に向かって挨拶した。
「お願いします」
挨拶したのと同時に先生は椅子に座るように促した。先生の言うとおりにして座った。
俺の席は一番後ろの席なので、窓際だから比較的に居眠りしやすい場所だ。
ハルは俺の隣の席に座っている。クラス担任の先生がハルのことを気遣って配慮した。
生徒の中で知っているのは、俺だけしか居ないということで席替えをしてもらった。
(何か企んでなければいいけど…)
そう思いながら、チラリと見やる。英語はハルの好きな教科だけど、いつもと様子がおかしい。
気のせいではないと思ったが、英語の先生が嫌いというわけでもない。とりあえず、気を取り直して授業の内容を聞き入ることに専念した。
「…であるから…」
数分経った頃には、子守唄が聞こえてきそうな感じがして転寝する。やっぱり、英語は苦手だ。
コクッ、コクッと顔を下に伏せて眠り込みかける。ふと、少し目を開けてハルを見やった。
「…あ?」
ハルはコソコソと何かを探りながら考え込んでいた。眠そうにハルを見て、声をかけた。
「…おい、ハル」
「…!」
ビクッと肩を揺らしながら怯える。小声で話して、落ち着くようにしろというジェスチャーを出す。
ハルは素直に頷いて、顔を歪めたまま怯えながらも小さく声を出して言う。
「…っ、何?」
「お前…こんなことして、何やってんだ?」
「別に…何もォー」
「…まさか、抜け出す気か?」
サボり込む気なら、確実に課題が出される。そうでもなきゃ、居残りさせられることは間違いない。
ハルはバッグから何かを取り出して、バサッと何かを広げて覆うように纏った。
透明のようなものを覆っている…もしかして、何か企んでいそうだ。コッソリと抜け出していくつもりでいたのだろう。
「…ったく、どうなっても知らないぞォ…」
ふわぁーと欠伸交じりにハルのいない席を見て呟く。睡魔が襲ってきたのと同時に目を閉じた。
数分経って、机に突っ伏して寝ていた俺の机を踏んで起こす音が聞こえた。
「…んぁ?」
眠そうに目を開けて、ゆっくり起こすと…前の席に座っている青峰航一郎が顔を顰めていた。
コウはもう1人の幼馴染で、ハルや俺とつるんでいることが多い。起きたばかりで眠そうな俺の頭を軽く小突いた。
「寝惚けてねぇで、さっさと起きろよ…このバカ」
「バカで悪かったな」
ふと、ハルが居ないことに気付いたコウは首を傾げる。俺が起きたことに気付き、先生が駆け寄った。
「山野、人見は?」
「さぁ…寝てる間に教室を出てったみたいです」
「また抜け駆けか…説教しなきゃダメだな。授業が終わったら、職員室に来るように伝えておけ」
「…はい、分かりました」
部活引退したこともあって、気が抜けない日々が続いていた。いい加減に懲りて欲しいのもあった。
授業終了後、コウと一緒に探してみることになった。ハルの行きそうな場所といえば…あそこしかない。
「屋上に居るかもしれないぞ」
「あそこなら風が靡いてもおかしくないはずだぜ」
「そうだけど……ん?」
待てよ、英語の授業中に何か覆うものを被ってたような気がする。
もしかして、ハルはあるものを使ったんじゃないかと思って考え込む。
「…ハルのヤツ、アレ使ったんじゃねぇ?」
「…アレって?」
よく考えてみたら、ハルは透明なものを使ったのではないか。
そういった確信はないが、屋上に行って確認してみるしかない、
「行くぞ、コウ!」
「おう」
屋上に向かって走り出した。
数分後、屋上に着くと強い風が吹いていた。その時、どこからか声が聞こえる。
「キャッ!」
声のした方向を振り返ると…誰もいない。もしかして、マントの中に入ってるのか。
手探りで壁の辺りを見回しながら、ハルを探す。すると、少し反応して、紙みたいな感じのものを掴んで脱いだ。
白いものを取って掴んだのと同時にハルが現れた。やっぱり、透明マントだったのか。
「あっ…」
「やっぱり、ここに居たのか…。またサボってんな」
「バン、それにコウ…」
ハルは俺たちを見て、首を傾げた後に怯え出した。強がるのもいいけど、いい加減にして欲しい。
彼女の右手を掴んで、逃がさないといった表情を見せた。ハルは逃げられないと悟ったのか、やっと観念する。