二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.463 )
日時: 2013/04/07 16:42
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

第60章の続き(バン視点)

職員室の前でハルを待っていた。その時、中から先生の説教がけたたましく聞こえた。

「人見、お前はいつも抜け駆けして…何がしたいんだ?」
「先生に私の気持ちが分かるわけないですよ。私のことが気に食わないんでしょ?」
「お前…そこまで拘る必要があるなら、居残りだ!」

やっぱり…居残りさせられてしまうことは間違いなかった。孤独を紛らわそうとしていたんだろう。
寂しさもあって、辛い思いをしているのは…ハルの方だ。英語が好きでも、寂しいのを堪えるしかなかった。
ハルの怒声が聞こえてきて、喚くような声が耳の中に入ってきた。

「先生に私の気持ちが分かるわけないじゃないですかっ!」

その時、職員室のドアが開いたのと同時にハルが出てきて、逃げ出すように立ち去ろうとした。
英語の先生が咄嗟にハルの右手を掴んだ。しかし、ハルは右ひじで腹を突く。

「がっ…」

その隙にハルは抜け出して、すぐに逃げ出していった。先生のところに駆け寄り、心配そうに顔を覗き込む。
思ったより苦しそうだ…やっぱり、ハルは強がっている。何となく辛いのが分かってしまう。
やはり、兄が居ないという寂しさによる孤独と戦わなければならなかった。

「先生、大丈夫ですか?」
「あぁ…大丈夫だ、人見は反抗することが増えたな」
「…はい。後で注意しておくから…良いですよね?」
「すまん…山野、悪いが…。ソファーに連れてって欲しい」

先生の身体を支えながら、職員室の中にあるソファーに寝かせた。
やっぱり、ハルのことが心配なんだろうな…担任の先生は数学の先生だから、後で言いつけることになりそうだ。
溜息をついて、職員室を出る。その前にコウが俺のバッグを持って、待っていた。

「バン、これから帰ろうぜ。ハルのこと、気にしなくていいんじゃね?」
「いや…あいつのことが心配なんだ。コウだって、そう思うだろ?」

サンキューと言いながら、ショルダーバッグをしょって歩く。コウは神妙な顔をして頷いた。
孤独を紛らわせていけば、このままではハルが危ういことになる。そこが複雑としか言いようがない。
昇降口で上履きから靴に変えて帰ろうとした矢先のことだった。外から何か騒ぎが聞こえた。

「…何の騒ぎだ?」
「さぁ…行ってみるか、何だろ?」

靴に変えて、コウと一緒に学校を出た。校庭で何かあったみたいだ。
そこに駆け寄ると、見覚えのある少女が不良グループのターゲットにされていた。

「ハル!」

ハルは不良グループに囲まれて、逃げ切ることができなくなっていた。
この不良グループはスラム街に住んでいるという噂が出ていて、滅多に顔を出さず、授業に出ないことが多い。
体格の良い大柄な少年・楢崎修吾がハルの首に腕を巻きついて、虐めようとしていた。

「楢崎、ハルに手を出すな!」
「おっ…山野じゃねぇか、久しぶりだな」
「ハルに突っかかってくるの止めろ!」
「うるせぇな…だったら、例のアレをお見舞いしてやらぁ」
「…例のアレ?」

それが何なのか分からなかった…いったい、何をしでかす気だ?
首を傾げていたその時、2体のLBXがバケツらしきものを持って、俺の上に合わせるように、ターゲットを定めた。
ターゲットが合ったのを見た楢崎はニヤリと手下を見て、命令を下した。

「やっちまえ!」

ドバァッと派手な音が流れて、上を見上げようとした。その時、バケツから何かが出てきた。

「伏せろ!」

コウが俺の身体を押して、覆い被さるようにして伏せた。身代わりになってくれたコウを見上げて驚く。
びじょ濡れになっていた…まさか、俺に水をかけようとしたのか。だから、コウは庇った。
ヨロヨロと立ち上がり、コウは不良グループに向かってギロリと睨みつける。

「テメェ…よくもハルを虐めてくれたじゃねーかよォ…」

コウがボキボキと指を鳴らして、マジギレモードに入りかけていた。本当にヤバい。
そういえば、ケンカしそうになる時はマジギレしたことを思い出す…ケンカしやすい性格だからか、気が荒い。
不良っぽいけど、いざと言う時は頼りになる。ハルはコウを見て、ビクッと怯えた。

「ハル…怖がるな、俺は楢崎に仕返ししてやるだけだから」

コウはハルを見た後、落ち着くようにしてればいいというしぐさをして励ます。
楢崎はバットを持って、コウに向かって襲い掛かった。その隙を見逃さなかったのと同時に攻撃をかわす。

「…なっ!?」

コウが上にジャンプした時は既に遅し…そろそろ、マジギレモードが最高潮に達している頃だ。
楢崎の顔を見た瞬間、コウは左足で楢崎の顔を蹴る。そのダメージを受けた楢崎は身体が仰け反ったのと同時に倒れこんだ。

「この俺をなめんなよ…ケンカなら、誰にも負けねぇ」

コウの怒りが最高潮に達していることに気付いた手下たちはハルを放して、どこかに逃げ出していった。

「……」

ハルは呆然と口を開けたまま、不良グループの一部が逃げ出した後を見つめていた。
怒りが収まったコウはハルのところに歩み寄って、優しく声をかけた。

「…大丈夫か、ハル」
「うん…ありがと、コウ」

コウに連れられ、俺のところに戻ってきた。ハルは申し訳なさそうに顔を伏せる。
そんな彼女を見た瞬間、溜息をついたのと同時にハルの右手を握って引っ張り出すようにして歩く。

「ちょ、バン!?」
「…話があるから、黙って…俺の後についてこい。良いな?」

俺の言うことに反抗できず、素直に従う。仕方がないので、体育館の裏倉庫に移動した。
裏倉庫は古ぼけた机や椅子が並べられていて、ここで話すことができる。
強く握っていた手を止めて、ハルの方に向いた。落ち着かないというのもあるが、ここで話すべきだと決める。

「ハル…お前、何で透明マントなんか持ってたんだ?」
「…っ、それは…。いや、バンに言えるようなことじゃないよ」
「…何が言えるようなことじゃないって…?」

ハルの目を見る限り、嘘をついているという証拠…どう見ても明らかにもらったものだと言える。
目を逸らそうとするハルの顔を見て、溜息をつく。やっぱり、隠し事するのが難しい。
それは何となく分かるし、言い難いこともあるのだろう。仕方なく、ハルの顔を見て話しかける。

「どう見たって、誰かに貰ったものだよ…お前、何で隠そうとしてるんだ?」
「バンに言ってもわかるわけないじゃない…」
「はい、と言っても黙っていられるわけないよな…やっぱり、嘘をついてるぞ?」
「…なんで分かるのよ、バンに言っても分かるわけ…」

ハルが言いかけて、逃げ出そうとしたところを見逃さなかった。すぐに彼女の右手を強く掴んだ。

「何年、幼馴染をやってると思ってるんだ? 目で誤魔化そうとしたって…無駄さ」
「…バン…」
「目を逸らすようなことしてるってことは…このマント、誰かにもらったってことだな?」

ハルが持っていた透明マントを見て、何かあったということが伺えた。
誰にも言えず、内緒で使っていたのだから…英語の授業中にやっと気付いて、問い質そうと思っていた。
でも、授業中に居眠りしてしまって話せなかったのもあって…やっと時間ができたので、聞き出すことにした。

「…うん、バンの言うとおりだよ。でも…」
「でも?」
「誰にも言うなって…そんなこと言われて。だから、バンたちには黙ってたんだ」

正体不明の人物から譲り受けたということになる。もし、そうだとしたら…なぜ、黙ってたのかも分からない。
このマント、どこかでもらったのだろうか…それとも、誰かに会って聞いたことだけしか考えられない。