二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.472 )
- 日時: 2013/04/07 20:52
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
第60章の続き(バン視点)
どこでもらったのかも分からないままでは問い質すことができない。
ハルのことだから、どこかで誰かに会って貰った物だと思われる…だから、その可能性も否めない。
「だったら、何で学校で使おうとしたんだ?」
「…これさえあれば、授業中に教室を抜け出すことができるって言うから…」
「それで、このマントを使おうとしたのか…。どうりで持っているわけだよ…」
「ごめん…でも、悪気はないよ。だって、先生に怒られるの嫌だったんだからさ」
そんなことで使おうとしたわけだ。どうりで様子がおかしいと思っていたのは、そういうことか。
でも、何でそれを貰ったのだろうか…悩みを抱えていたわけで、ハルは何も言えないで居た。
「…俺がどんなに心配したか分かってんの?」
「ごめん…だって、バンに知られるの嫌だったし…」
「本当のことを話せ…じゃないと許してやらねぇぞ?」
「分かった、話すよ……それで良いよね?」
「…ああ。さっさと話しちまいな」
面倒くさそうに促し、ハルは俺に向かってポツリポツリと話し始めた。
事の発端は、2週間前のこと…たまたま通りかかったミソラタウン駅前で怪しげな男に声をかけられたのがきっかけだという。
そこで透明マントを差し出された…受け取ることを拒否したが、その相手が頑固として受け入れなかったらしい。
相手の男に透明マントを受け取るように言われ、授業中に抜け出せる道具だからと言って押し付けられた。
「それで、透明マントをもらっちゃったの…どうしよう、バン!」
「はぁ…ったく、ハルは人が良すぎなんだよ。お前、そんなので良いのかぁ?」
「だって……コウにも言えないで居たのも確かだもん…。バン、どうすればいいかな?」
「そんなもん、捨てちまえば良いんじゃねーの?」
「それも考えたんだけど…どうする、バン?」
「ミソラタウン駅前に行って、その男について聞いてみるか」
あれこれ考えていても仕方がないので、ハルの右手を引っ張って駅前まで行くことにした。
駅前の交番に行って、その男について聞いてみることにした。お巡りさんが俺たちに気付いて歩み寄った。
「はい、何でしょうか?」
「あの…2週間くらい前に怪しげな男が立ってたらしいんですけど、分かりますか?」
「…ああ、そんな人がいたね。それがどうかしたのかい?」
「こいつ、俺の幼馴染なんですけど…その人に透明マントみたいなものをもらったらしいんですよ」
ハルの背中を押して、前に出るように促す…俺の言葉を聞いて怯える。
少しだけでもいい、俺のことを信用してくれれば大丈夫だ…だから、心配しなくても平気だ。
お巡りさんはハルを見て、優しい眼差しを送りながら問い質す。
「そのマント、透明なんだね?」
「はい…その人に返そうと思ってたんですけど…。どうすれば良いでしょうか?」
「…とりあえず、見せてもらっていいかな?」
ハルから透明マントを受け取り、首を傾げて見つめる。どうやら、他人から貰ったものらしい。
お巡りさんは透明マントを見つめた後、ハルに返した。ふと考え込んだ後、思い当たることがあったのか…もう一度、問い質す。
「もしかしたら、あの男…只者ではないみたいだな」
「只者じゃないって…どういうことですか?」
「うん、只者ではない…あの男は恐らく、どこかで指名手配されていたんだ」
指名手配…それって、どこかで聞いたことがあるような気がしてならない。
ハルがその男の特徴を思い出しながら、首を傾げて呟いていた。
「うーん…猫背だったような気がする…。それにひげを生やしてたし…」
「髭?」
「ああ、その時に見たんだけど…確か、そんな感じだった」
ハルに聞いて思い出す。髭を生やしたて、猫背になっている人物…犯人は1人しか居ない。
アキハバラにいる人物が指名手配されていたのには、何らかの理由がある。
「これから、アキハバラに行ってみよう」
「アキハバラって…何で?」
「まぁ良いから…その透明マント、お前が持ってて」
首を傾げたハルは怪訝そうに見つめる。その隙を突いて、右手を握りながら歩く。
「何でアキハバラ?」
「まぁ、ついて来て…いいから、黙ってろ」
電車に乗ること数分…アキハバラ駅に着いた後、近くの裏通りに入る。
少し経って、裏通りを歩いている途中にあった謎の店…【中野 直紀 発明・研究所】という名前が記されていた。
「ここで良いの?」
「あぁ…とりあえず、入ろうか」
ドアを開けて入ると…真っ暗闇になっていた。その時、フッと電気が着いた。
目の前に現れた背の低い青年…メガネをかけ、髭を生やしている男・中野直紀だった。
「アルテミスのチャンピオンが来るとはね…いったい、何の用だ?」
「こいつに透明マントをあげたの…あなたですよね? 中野直紀さん」
ハルを指差しながら、中野と言う怪しげな男に向かって言い放つ。
中野は躊躇うこともなく、冷静に把握していた。俺が来ると踏んで、分かっていたようだ。
「…クックッ、流石は山野バン…。だが、生かしちゃおけねえぜ」
「やっぱり…思ったとおりだぜ。中野さん、あんたは指名手配されていた…」
「何でその事を…!?」
中野が驚きを隠せないで居たのと同時に動揺を見せる。その隙に推理モードに突入した。
「中野さん、数年前に起きた事件の主犯格だったらしいですね…。その事件は、今もニュースで出ています」
「…だから、何が言いたい…」
「数年前に起きた事件は確か、強盗も兼ねた殺人事件…その時に事件の主導を握っていたと言われる…」
その台詞を聞いた瞬間、ハルが目を丸くして驚く。中野が主犯格だとは想像していなかった。
目の前に殺人犯がいるのだから…数年後、発明家になっていたということで話題が沸騰していたのだ。
「それが中野さん…あんたは数年後に発明家となって、透明マントを作り上げたんですよね?」
「…っ、その通りだ。だから、何に根拠があるというんだ?」
中野は動揺を隠せず、俺を見て睨みつけた。2週間くらい前、ハルに起きた出来事を思い出す。
ミソラタウン駅前で透明マントを受け取ってくれる人を探していた…それで、たまたま通りかかったハルに申し込んだ。
「2週間くらい前、ミソラタウン駅前で透明マントを受け取ってくれそうな人を探していたと思われる男の人が立っていた…」
中野の顔に冷や汗が伝う…それで自分の計画がバレてしまうことになろうとは思わなかったのだから。
ハルから透明マントを受け取り、中野に向かって見せながらも冷静に言い放つ。
「その時に通りかかったハルを見つけて、声をかけた…それで、ハルに無理やり渡したということになるんだ!」
中野に向かって、指差しながら言い放つ…冷静に見つめていたが、中野は悔し紛れに涙を流した。
「フッ…僕の計画が無駄になってしまうとはなぁ…」
「このマントは返すぜ。警察を呼び出すけど、良いよな?」
透明マントを渡し、警察を呼び出す。ようやく、数年前に起きた殺人犯を捕まえることができた。
やがて、連絡を受けた警察が駆けつけて…中野は手錠をつけられ、逮捕された。
その帰り、ミソラタウン駅を経て河川敷に入ったその時…ハルが俺の後をついてきて、ピタリと歩くのを止めた。
「…なんだよ?」
「あの…LBXバトルのこと…いつも断ってごめんね」
「なんだ、そんなことか…。俺は別に気にしてねえよ」
ポリポリと人差し指で頬を掻きながら、溜息をついた。そういえば、何で断ったのか気になった。
ハルの方に振り向いて、すぐに頭を撫でながらも優しく話しかける。
「ハル、LBXバトルしたくないって…何かあったのかぁ?」
「兄さんが死んでから、ちょっとそんな気分に慣れなくて…」
「うん、それもあるよな…。何で断ろうとしたんだ、ヒロもバトルしたがってたぞ」
「…本気の私を甘く見ないで欲しいんだけど、ちょっと複雑かな…」
ハルは少し顔を顰めながら、すぐにうなだれた。無言で何も言わなくていいというしぐさをして気遣う。
「…バン?」
「さぁ、帰ろうか…母さんたちも心配してるしなぁ…」
ハルの右手を握りながら、再び歩き出す…河川敷を経て、住宅街に向かった。
こうして、ハルを巡った透明マントに纏わる事件は無事に解決したのであった。