二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.484 )
日時: 2013/04/14 15:24
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

第60章の続き(バン視点)

こんなことがあったから、今の俺がいる…というのも、カウンターに置かれた酒の入ったグラスを見つめていた。
ハルはその出来事をきっかけに、少しずつ心を開いていった。兄の氷介がいないことを考えれば、孤独を感じるのも頷けた。

「…あいつ、いつも無茶なことばっかりしてさぁ…」

カウンターに置かれたグラスを持ちながら、グイッと飲み干した。酔いが回ってくるのも、夜だからこそ言える楽しみ。
酒を飲んで、寝ちゃうのはいつものこと…ハルが迎えに来るわけがないので、ゆっくり過ごすことができる。

「まぁ、バンはハルちゃんのことが好きじゃないのか?」
「数野さん…今も好きだけどさ、あいつが何をしでかすか分かったもんじゃない」

ハルのことだから、何かあるはず…孤独による寂しさを感じるのは、何度もあった。
幼馴染であることを感じさせない、ハルが明るく振舞う姿を何度も見てきた。
兄が居ないという寂しさを紛らわそうとして、中3の時に起きた事件をきっかけに少しずつ心を閉ざしていく。
いつも無茶して、授業中に何度も問題を起こすハルの荒れた姿を見ていて分かっていたようなものだ。

「…ハルちゃんは良い子じゃないとでも言いたいのかい?」
「ううん、俺は良い子だと思ってる…今でも、あいつのことが好きなんだ」

グラスに入っている酒を飲みながら、呻くように突っ伏して頷く。
彼女のことは幼馴染だと思っているし、大切な存在でありたい。そう思えたのは、いつからだったろうか。
寂しくないって言いたいのも、目の前に居てくれれば言えるはずだと思っていた。

(ハル…お前はいつも無茶しすぎなんだよ…)

幼馴染と言う大切な存在を失いたくない…その理由は中1の時に起きたイノベーター事件で檜山蓮(通称:レックス)とタイニーオービットの社長だった宇崎悠介を亡くしたことだった。

(レックス、俺はいつも諦めかけてんだよ…どうすりゃ良いのか分かんねぇ…)

両腕を枕にして、カウンターに突っ伏す。レックスのことが懐かしく感じたのか、思わず目を閉じる。

***

夢の中では、真っ暗闇の世界に居た…その時、光が現れてきたかと思えば--------------------------

「…あれは?」

レックス?
目の前に現れた青年は俺のところに歩み寄る。頭を撫でながら、笑みを浮かべた。

「しばらく見ないうちに大きくなったな、バン」
「…レックス、何で俺のこと…あの時------------------」

中1の時に言いかけた言葉を思い出して、問いかけようとする。レックスは俺を見て、何かを呟いた。

「いつものお前らしくないぞ、威勢の良いバンが見たいんだよ」
「レックス…」
「いつも威勢の良いバンはいないのか。もし、そうじゃないと根性を叩きなおしてやるぞ」
「……違う、俺が言いたいのは-------------------------------」

レックスに手を差し伸べようとした瞬間、フッと目の前が真っ暗になった。

***

誰かがカウンターに突っ伏して寝ていた俺の肩を優しく揺り起こす。

「…ン、バン起きて。いつまで寝てんの?」
「…んー……?」

口を半開きにして、涎を垂らして寝ていた…眠そうに身じろぎながら、うっすらと目を開ける。
隣の椅子に座っている女性を見て驚く…目の前にハルがいたのだから、どうしてここにいるのかも分からなかった。

「…ハル?」
「とりあえず、私の家に泊まる?」

ハルはズボンのポケットからポケットティッシュを取り出して開ける。
右手で涎を垂らして寝ていた俺の口を拭きながら、上半身を支えるようにして起こした。

「…ったく、こんなになるまで飲むからだよ。おまけに涎を垂らしたまま、寝ちゃうの良くない」

ハルは文句を言いながら、俺の口を拭いて溜息をつく。面倒見がいいところは、今も変わらないことに…。
ボーッとしながら、口を半開きにしたまま見つめた。やっぱり、酔っ払っているせいで眠り込みそうだ。

「…よし、これでOK」

ハルは俺の口から垂らしてしまった涎を拭いた後、ゴミ箱に捨てた。
カウンターに突っ伏したまま、眠り込みそうな俺の顔を覗き込むようにして溜息をついた。

「バン、ここで寝てたら…風邪を引くよ。さっさと起きて」
「…あ?」
「ほら、起きて。私の家で話そうよ」

ハルに上半身を起こされて、グイッと腕を引っ張られる。そういえば、飲み代の金、払ってないことを思い出す。

「あのさぁ…」
「飲み代なら、私が立て替えといた。後でお金返して」

その言葉を聞いて驚く…ハルが代わりに払ってくれたのか?
幼馴染であることを認識するのに、時間はかからなかった。どうやら、車で迎えに来てくれたらしい。
ハルと一緒に店を出ると、近くの駐車場に1台の車が置かれていた。ハルの車だったらしく、ポケットからキーを取り出して開けた。

「ほら、助手席に座って」
「ぅん…」

助手席のドアを開けて入った後、バタンと閉めてシートベルトする。
ハルは運転席に座り、シートベルトをした後に車のキーを入れてエンジンを起動した。
ブロロロ…と車を走らせる音がしたのと同時にハルはハンドルを握ったまま、俺を見て話しづらいことでもあるのか逸らした。

「…ハル?」
「何でもない…バンは寝てていいよ。着いたら、起こすからさ」

ハンドルを握ったまま、俺を見て答えるハルの姿を見て違和感を感じた。
いつもと様子が違うのは、気のせいか…それとも、昼間にレオンが言い出した事と関係しているのではないか。

(ハルのヤツ、冴えない顔してどうしたんだ?)

迎えに来た時と違って、様子がおかしいのは気付いていた。何か言いたいことがあったのは分かる。
車を走らせること数分たって…住宅街に入った頃には、深い眠りについていた。
助手席に座ったまま、窓際に顔を寄せながらも寝息を立てていた。ふと、車がバックする音が聞こえた。

「…んぁ?」

ボンヤリとした視界にガレージの中に入っていたことに気付く。ハルの家に到着したようだ。
車を入れ終えたのと同時にエンジンを切って、車のキーを取り出した。彼女は俺が起きていたことに気付いて、出るように促す。

「バン、起きてたなら…さっさと出なさいよ」
「…あ? あぁ、そうだな…」

先に運転席を出たハルに促され、シートベルトをはずした。助手席のドアを開けて、外に出る。
ドアを閉めた後、ハルが車のキーを使って戸締り確認する。その後、ハルの家の玄関に向けて歩き出す。


ハルの家に着いたのと同時に家の鍵を開けて入る。靴を脱いだ後、2階に通じる階段を上った。
2階について、ハルの部屋に入った。ふらつく身体を支えるのがやっとでハルのベッドになだれ込むようにして倒れ伏す。

「んー…」

ハルのベッドがふかふかしてて、少しずつ睡魔が襲ってくる。いつもなら、ハルに咎められるはずだった。
眠そうに少し目を半開きしたまま、仰向けに倒れている俺の隣に座り込む。

「ねえ、バン…」
「なんだぁ…言いたいことがあるなら、聞いてやるよ」

ハルはうなだれたまま、顔を下に伏せていた。LBXバトルに対する複雑な思いが込められていたのだ。
顔を見れば、一目瞭然…俺には何となく分かった。昼間、ブルーキャッツのLBXバトルと関係しているらしい。
何も言わないハルの様子を見て、眠そうに目を開けたまま話しかける。

「やっぱり、昼間のLBXバトルと関係してんのかぁ?」
「…なんで分かるの、バンには言いたくなかったけどさ…っ!」

上半身を起こして逃げ出そうとするところを見逃さなかった。咄嗟にハルの右手を掴んで、ベッドの上に乗せる。
いきなり何をしでかすのかと目を見張ったハルは逆らうことができないでいた。
いつも無茶をしでかすハルのことだ…LBXバトルに参加することを躊躇っている。

「ちょっ、バン!?」
「俺が気付いてないとでも言いたいわけ?」
「…い、いや…それは…。バンに言っても……」
「…俺に言っても分かるわけがないって?」

ハルが言おうとしていたのは、LBXバトルに関すること…その事で悩んでいたのは分かっていたからだ。
上半身を起こし、だるそうにハルの右腕を掴んだまま押し寄せた。ベッドの上に押し倒されたハルは目を丸くする。

「うわっ、何す…」

彼女は何か言いたいこともあったのか、誰にも言えない悩みを抱えていたようだ。
俺の言うことに逆らうのが気に食わないのか、どうしても許せなかった。