二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.493 )
- 日時: 2013/04/29 13:17
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
第60章の続き(バン視点)
ハルの服の胸倉を掴んで、顔を顰めたまま伏せて呟く。
「ハル、お前…もしかして、LBXバトルするのが嫌なんじゃないのかぁ?」
「…バンに言っても…」
「やっぱり、俺に分かるわけがないって言いたいわけ?」
服の胸倉を掴んでいた俺の左手を振り払うように、ハルはギュッと右手で拳を作った。
LBXバトルに対する複雑な思いを抱いていることは何となく察していた。
「LBXは…俺たちに夢を与えてくれる、大切なものなんだ。俺がLBXを好きになれたのは、親父がいたからさ」
ハルに伝わるかどうか分からない…それでも、彼女は俺の話を聞いてくれた。
父親の淳一郎がいたから、今の俺がいるのはLBXの存在があってこそ。つまり、LBXはホビーにとって欠かせないものだ。
「ハル、お前に何があったのか知らないけどさぁ…。俺はLBXと出会えなかったら、変わらなかったかもしれない」
「…うん、LBXはバンにとっても大切なものだけどさ。でも、何か分からないんだ」
「…分からない?」
ハルが何を言おうとしているのか分からない。LBXに対する想いが複雑だということは察した。
眠そうに倒れ伏したまま、ボンヤリとハルを見つめていたが…ハルは溜息をつきながら、ゆっくり立ち上がる。
「…ハル?」
彼女が立ち上がったのを見て、思わず首を傾げながらも上半身を起こす。
急に机の前まで来たかと思えば、机の引き出しを引いて何か探している。
無言で黙りこくったまま、引き出しの中を漁りながら探しているハルの姿を見るのも久しぶりだ。
ゴソゴソと引き出しの中を漁りながら探していた矢先、ハルは何かを見つけたのと同時に机の上に置く。
「それ、お前の…?」
机の上に置かれたLBXを見て驚く。新型と言っていいほど、フレームはストライダーフレームのようだ。
見た目はアミのパンドラに似ているが、見るからに格闘タイプだ。ハルは日本に帰ってから、LBXバトルはあまり参加していなかった。
「…そうよ。日本に帰ってから、しばらく封印していたの…」
「これ、どこでもらったんだ?」
「…アメリカよ。A国にいた時、ルークから渡されたの。これは同級生だった人のものだけどね…」
ハルはルークのことを思い出しながら、溜息をついた。LBXバトルする時はあまり使用していなかった。
アメリカにいたときはよく使っていたそうで、ある人から譲ってもらったものだという。
「…この子は、ブルーグリーンライト。全体的に見ると、青緑に見えるよね?」
ハルに言われて、よく見てみると…全体的に青緑色になっていた。確か、中3の時は紺のパンドラを使用していたはずだ。
でも、何で新しいLBXのことを言おうとしなかったのか気になった。俺はハルが何を隠していたのか知りたい。
「確かによく見えるな。でも、何で新しいLBXのこと言わなかったんだ?」
「ごめんね、バンにはなかなか言えなくてさ。タイミングが来た時に言おうと思ってたんだけど…」
「けど…何が言いたいんだよ、まぁ隠してたことは許すけどさぁ…」
だるそうに大きく欠伸してから、ハルを見た。彼女は腕を組んだまま、ブルーグリーンライトを見て溜息をつく。
少し落ち着かせてから、左手でLBXを持ちながら向けて言う。
「ねえ、バン…私、LBXを止めようと思ったことが何度もあったんだ。でも、LBXは大切なものだよね?」
「当たり前だ、何を言ってるんだ。LBXは、俺たちにとってもなくてはならない存在なんだよ」
俺の言うことを理解したハルはジッとブルーグリーンライトを見つめた後、息を吸ってから落ち着くように整えた。
気持ちがやっと決まった瞬間、ハルは何かを悟ったらしく決意を固めたようだ。
「…バン、やっぱり参加するわ」
「そう来ると思ったぜ。っていうかさぁ、何で貰ったか聞かされてないけど?」
ハルは顔を顰めた後、複雑な思いを抱いていたが…ようやく、俺を見て改まった態度を示した。
何か過去に隠されていたことが分かった時点で、俺に過去の話を語るしかないのだと決意する。
「このLBXは形見なんだ」
「…形見?」
「うん…実はね----------------------」
ハルはベッドの上に座り、ポツリポツリと話し始めた。その出来事は、5年前に遡る。
GWを利用して、アメリカにやってきたハルは空港で幼馴染のルーク・タイロンと待ち合わせしていた。
「来るの遅いなぁ……」
ルークはちゃんと待ち合わせ時間に来ると言っていたはずだ。あまり遅すぎることに対して、疑問を抱く。
眉をひそめながら、腕を組んで待っていたハルは思わず溜息をついた。
「おーい、ハル!」
その時、到着ロビーの向こうから聞き覚えのある声がして振り返ると、幼馴染のルークが走りながら駆け寄ってくるのが見えた。
肩を上下に揺らしながら、ハァハァと息を吐いたルークはハルを見てから苦笑して謝る。
「ごめん、遅くなって…。寝坊したわけじゃないんだけどね、ケイティに掴まっちゃって」
「ケイティに捕まったー!?」
「そうなんだよ…アイツ、ハルが来ること知ってたみたいでさぁ」
「ハハッ…それで遅くなったというわけか、それより私に渡したいものがあるって言ってたけど…」
ハルの言葉を聞いて反応した瞬間、ルークは顔を顰めながら伏せた。何かあったのということは察した。
中学時代に知り合った同級生と会っていなかったため、あまり英語を喋る機会もない。ルークは重そうに口を開けた。
「ここだと話すのは…まずいかな、僕の家に行こう」
「ルークの家に行ってもいいの?」
「ああ、泊まりに来ていいって話さなかったっけ?」
「そうだったね、じゃあ行こうか」
ルークに促され、空港を出た。数分たって、ダウンタウンにあるルークの家に到着した。
家の中に入り、ルークの部屋に移動した。ソファの上に座るように促されたハルは訝しげに首を傾げる。
オレンジジュースを差し出され、ハルはお礼を言ってから飲んだ。隣にルークが座り、ハルは話したいことがあったのを思い出す。
「ルーク、私に大事な話があるって…何?」
「ハル、あいつと仲が良かったよね?」
ルークの言っている『あいつ』が誰なのか、ハルは何となく察した。
その青年の名前はジョゼフ・カーター。通称ジョーイと呼ばれていた…いつも素直で明るくて優しい性格だったが、運動神経抜群で反射神経にずば抜けていたことを思い出す。
「うん、ジョーイのことでしょ?」
「…ああ。そのジョーイのことなんだけど…」
ルークは重そうに口を開けてから溜息をついた。中学時代の同級生だったジョーイに何かあったということを察する。
ついにルークの口から言い放たれた言葉がハルの心に傷をつけるきっかけになろうとは…。
「ジョーイは…何者かによって、ナイフで刺されて死んだよ」
「…えっ…ジョーイが死んだって…どういうことォー!?」
「分からない…でも、刺される直前まではLBXバトルしていたらしい」
いきなり告げられたことに動揺を隠せないハルの様子を見て、ルークは優しく抱きしめた。
ハルの目から涙が溢れてくる。ジョーイはいつも優しくて、明るく接してくれた。
かつての同級生だったジョーイが死んでしまうなんて…何もかも信じたくない、その現実を受け止められずにいたのも事実。
ルークは死ぬ直前にジョーイから受け取ったLBXを持ってきて、ソファに座りなおした。
「このLBXのこと覚えてるか?」
「…これ--------------------」
ジョーイが死ぬ直前まで愛用していたブルーグリーンライトだった。ルークは彼の思いを何となく受け止めていたのだろう。
ルークはハルを見て思い出しながら、優しく見守りつつもゆっくり話しかける。
「死ぬ直前、僕に渡してくれたんだ。あいつが最後に言った言葉は…」
ジョーイが最後に言い放った言葉はこんな感じだったという。ルークはその言葉を思い出しながら話す。
【これを…ハルに渡してくれ、僕がいると思って…いつでも君の傍にいるから----------】
そのジョーイの思いを受け止めたハルは左手で涙を拭った。その後、右手でルークからブルーグリーンライトを受け取る。
この時、ジョーイの形見となるブルーグリーンライトとの出会いだった。素直に何も言えなかったが、その優しさによって紡いだジョーイの思いを大切にしようと決めた。