二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.508 )
- 日時: 2013/04/29 20:08
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
第60章の続き(バン視点…途中から出ます)
ハルは悲しみに満ちた目をしていたが、ジョーイの優しさを紡いだLBXの思いを感じ取った。
ジョーイはいつも優しく接しながら、明るく話しかけてくれた。明るさを感じさせないオーラを纏っているのが印象に残っている。
その出来事を思い出すたびに辛い時があっても、心の胸に刻むことができた。
「ルーク…」
「ん?」
ルークはハルが何を感じ取っていたようですぐに察する。その時、同級生だったジョーイの思いを大切にしようと決めていた。
彼の形見となったLBXを手に取りながら、ハルは見つめつつも思い出に耽った。
「ジョーイは私を励ましてくれた…家が近所だったのにね、いつも私の傍に居てくれるのも、ジョーイだった」
「…お前、もしかして…ジョーイが好きだったのか?」
ジョーイはもう1人の幼馴染だったこともあり、小学校時代に転校してきた時はルークと一緒にやってきた。
それがきっかけで、ジョーイと知り合って仲良くなった。その思い出は、ハルにとって大切なもの。
今も忘れることができない…ジョーイとたくさん喋って遊んだ記憶が次々と思い出される。
学校で隣の席になったジョーイとはたくさん話したこともあったが、中3になる前にお別れのプレゼントをくれた。
中3になって、日本に戻った後は首にかけている四葉のクローバーを象ったペンダントを身につけて、通うこともあったことを思い出す。
(ジョーイ…何で目の前から行っちゃうの…)
大切な人を失ってしまったショックは拭えない。それでも、大切な人を失いたくないという想いが沸いてくる。
彼氏だったということはバンたちに話した方が良いのか…。彼らに話しても、信じてくれるはずがない。
ハルは首にかけていた四葉のクローバーを象ったペンダントを握り締めた。
「…うん。ジョーイはいつも優しくしてくれたよね。ルークもそうだけど、あいつは私の大好きな彼氏だったもん…」
元気なく答えるハルの悲しみは思ったよりも深く、ジョーイを失ったショックが大きかったのだろう。
ふと、部屋の窓を開けて大きく澄み渡る空を見つめながら溜息をついた。ジョーイのいない生活なんて考えたくない…それが本音だ。
(バンなら…なんて言うんだろうなぁ…)
山野バンは幼馴染であり、日本にいたときはいつも優しく接してくれた。
中3になって、ミソラ二中に転校した時はイケメンになって成長していたことに驚いた。
素直な性格は幼い頃からずっと変わらない…目の前に居る幼馴染の背中を見てきた中で、逞しく成長したと実感する。
ルークも大きく成長していたこともあり、身長もだいぶ伸びていた。アメリカにいたときの幼馴染も前と変わらず、優しく接してくれる。
「…決めた」
「え…?」
「私、LBXバトルしない…」
ハルの言葉を聞いた瞬間、ルークは目を大きく見張った。LBXに対する想いは複雑だったと言える。
ジョーイが死んだことで、目の前に居る大切な仲間を失うのが嫌だった…仲間として受け入れてくれるはずがないと信じるしかない。
「おい、何を言って…」
「目の前に居る…大切な人たちを失いたくない…」
「ハル、もしかして…このLBXを封印するつもりなのか?」
ルークの言葉に頷くハルの決意は憎しみと混乱を混ざり合う感じになっていた。
LBXが原因になるとは限らない…ジョーイを失ったことで、回りの人たちに対する思いは少しずつ複雑になりかけていた。
「……」
無言で黙りこくっているハルの様子を見ていたルークは溜息をつき、歩み寄って抱きしめる。
ハルもルークの胸に顔を伏せて、ジョーイに対する思いを込めて号泣した。この時、ジョーイを失った悲しみはますます深まっていった。
過去にあった出来事を全て聞き終えた瞬間、ハルはベッドの上に座ったまま、左手でブルーグリーンライトを握っていた。
「このLBXはどうしても使う気になれなかったんだ…」
「それで、お前はブルーグリーンライトを封印していたんだな?」
ハルから話を聞いて思ったが、ジョーイを失ったことで複雑な思いに駆られているということは何となく察した。
ブルーグリーンライトを使う気になれずにいたのは、周りに居る仲間たちが次々と消えていくのを恐れていたのだ。
彼女が不安を抱いてもおかしくない状況だったのにも関わらず、孤独を感じてしまうのも時間の問題である。
「…うん…」
「LBXバトルしたいって言う気持ちはあるのかぁ?」
「うん、LBXバトルしたい…でも、目の前に居る大切な人を失いたくないんだよ…」
ハルはギュッと拳を握りながら、怒りを露にしていた。ジョーイを殺した犯人を捕まえて、問い質したいという思いを込める。
無言で黙りこくったまま、彼女を見つめていた眼差しは複雑な気持ちを抱きながらも同情するしかない。
「ハル、俺がいるから大丈夫だよ。何があっても、お前を守るからな」
「…バン…。私…」
「うん。だから、俺も大切な人を失いたくない…その気持ちは分かる。けどな…」
大切な人を失いたくないという気持ちは分かるし、ハルに同情することができた。
中1の時にタイニーオービットの社長だった宇崎悠介、ブルーキャッツで働きながら、師匠としての存在を放っていた人物であるイノベーター事件の黒幕だった檜山蓮(レックス)を失い、生きる希望を見出せなかった。
「周りに居る仲間たちを失うのが怖かった…つまり、お前はそう言いたかったんだろ?」
「えっ…どうして分かったの?」
ハルは俺の話を聞いて、呆然と口を開けていた。中1の時に経験したことがあったから、気持ちが分かる。
彼氏だった同級生を失ったことで不安を抱いていたのは、周りに居る仲間たちを失うかもしれないという恐怖を感じていたから。
「何となくさ…お前、そんなことで不安を抱いてたなら相談しろよ?」
「バンに言っても分かるはずがないと思ってたんだもん…」
「バカだな、俺はいつだって見守ってるさ。幼馴染だから、たまには俺を頼っていいんだよ」
ハルの頭を優しく撫でながら、励ますように笑顔を見せる。不安を抱いていた顔が強張らせるように見えたが、ようやく話したことで落ち着きを取り戻した。
「バン、ありがと…」
「別にいいって…気にすんなよ。俺はいつでも傍に居るから」
そう言うなり、ベッドに横たわったのと同時に眠そうな目でハルを見た。
彼女は両手でブルーグリーンライトを握り締め、ブルブルと震わせている。
「…どうした?」
眠そうに優しく話しかけたその時、いきなり俺の胸に飛びついて顔を伏せた。
ハルの目から涙が溢れて、嗚咽をあげながら泣く様子に目を見張る。そんなに不安だったのか…。
苦笑しながら、ハルを抱きしめて背中を撫でながらあやす。ジョーイを失ったショックは今も拭えずに居る。
その不安と恐怖が再び、蘇ってしまうのも時間の問題だというわけで…。
「…ねぇ、バン」
「なんだぁ、どうしたんだよ…」
「バンが目の前から居なくなるの嫌だ…」
「まーた、それ言ってんのかぁ…だから言ったろ、俺は目の前から居なくなったりしないって」
ハルの背中を優しく叩きながら励ましてやると、コクリと素直に頷く。
いつもと様子が違うのは気のせいかと思っていたが、そうではなかった。
「…そうだよね、バンのこと好きだもん」
「うん…俺もハルのこと好きだよ、彼氏になってやってもいいけど?」
俺の台詞を聞いた瞬間、ハルは目を丸くして驚きを隠せない。やっぱり幼馴染だから、ハルを放っておけない。
それが気になるのもあったが、彼氏で居たほうが落ち着きを取り戻せるのではないかと思っていたのだ。
「えっ…良いの、そんなこと言って?」
「…あぁ、別に良いんだよ。お前はいつも明るく振舞うことが多かったから、こんな無茶なことをするバカな幼馴染を放っておけるかぁ?」
ハルの胸にグサッと突き刺さる。いつも無茶なことをすることや明るく振舞うことは当たっていた。
俺の胸に顔を伏せていたハルはカアーッと頬を赤らめる。その瞬間、久しぶりにLBXバトルしたいという気持ちに駆られた。
「…LBXバトル、久しぶりにやるか?」
「今から? 今日はもう遅いから寝ようよ!」
「あはは、冗談だよ。そうだな…じゃあ、おやすみ」
部屋の電気を消したのと同時に俺たちは深い眠りに落ちていった。