二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去 ☆番外編☆ ( No.567 )
- 日時: 2013/05/11 18:01
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
第1章 誘拐事件から1年後…リンの複雑な思い
チュンチュンと雀の鳴く声が聞こえる。カーテンの隙間から太陽の光が差し込まれていた。
眠そうに上半身を起こし、周りを見回す。リンの隣では、健太と直太が気持ち良さそうに寝ている。
「…朝か…」
だるそうに起き上がり、机の上に置かれた写真立てを手にとって見つめる。
この写真には、諒平・直登・リンの3人で撮ったときのものだ。加藤未来に撮ってもらったことを思い出す。
(あれから6年経つのか…諒平兄さん、どうしてるのかな)
兄の諒平はリンのことを気にかけていたらしく、たまに施設のスタッフから様子を聞かされていた。
時が経つのは早いもので…山野家に入ってから、山野バンという青年との出会いをきっかけに少しずつ心を開いていった。
バンはいつも優しく接してくれたので、誰よりも気にかけてくれる兄として見てきた。バンの幼馴染であるハルもそうだった。
「はぁ、兄さんに言ってないけど…まぁ良いよね」
リンはカーテンを開けたのと同時に窓の外を見る。バンが帰ってこないこともあったのを思い出した。
居酒屋で酒を飲みまくって帰るバンのことを考えれば、容易に想像できた。たまに朝帰りすることもあった。
昨日、飲み会で遅くなるとか言い出したくせに帰ってこない…それが気になりだしていた。
「…ん?」
家の前にやってきた青年を見て、バンだと気付く。フラフラしながら歩いているところを見ると…かなり飲んできたようだ。
仕方がなく、部屋を出る。階段を降り、1階に向かった。玄関のドアを開けると、兄の山野バンだった。
「ただいまぁー…帰ったぞォー」
かなり酔っ払っている…朝までぶっつけ通しで飲んできたらしい。リンはバンを見て溜息をつく。
靴を脱ぐなり、バンは壁に背中を預けて座り込んだ。もう既に眠いのか、今にも目を閉じそうだ。
「兄さん、飲み過ぎだよ…やっと帰ってきたと思ったら、泥酔してるじゃん」
「うるせえ、寝てたんだからしょうがないじゃん…」
「寝てたって…どこで?」
「居酒屋で…っていうか、深夜3時まで飲んで、その後はハルの家に泊まった」
「まさか、ハルさんに迷惑かけてんじゃないでしょうね?」
バンの幼馴染である人見晴香は面倒見がよく、世話をしてくれる。何だかんだで文句を言いながらも、バンのことを気にかけていた。
「迷惑なんてかけてないって…」
「怪しい…っていうか、ここで寝たら風邪を引くよ。居間に行こう」
「んー…そうだな、居間で喋るかぁ…」
遊びまくって、酒を飲むバンの気持ちは分かる。リンは諒平の姿と重ね合わせた。
諒平も朝まで飲んで帰ってくることが何度もあったのを思い出した。何か懐かしく感じる。
いつも飲み慣れたもので、帰ってくると床に倒れ伏して寝てしまうこともあった。居間に向かうと、バンはソファーに座っていた。
「兄さん、水飲む?」
「あー…ぅん、水くれェ…」
だるそうに答えるバンを見て、クスッと笑う。台所に行って、コップに水を汲んで入れる。
水の入ったコップを持って戻ると、バンは気持ち良さそうに寝ていた。リンは苦笑しつつも、バンの肩を優しく揺り起こす。
「兄さん、起きて。水を持ってきたから」
「んー…ぅん……」
眠そうに身じろぎながら、少し目を開ける。ボンヤリとした視界にリンの姿が映った。
水を飲むことを思い出したのか、眠そうに上半身を起こして受け取った。
「サンキュ…」
ゴクゴクと水の入ったコップを飲み干し、リンに渡す。やっぱり、家族でなくてはならない存在だ。
バンは大きく欠伸すると、眠そうに聞き入るタイミングに入った。リンの話を聞きたいというのもあったからだ。
「なぁ、リン…」
「何、兄さん?」
「お前…時々、部屋で写真立てを見てることがあったよな。何か理由があるのかぁ?」
バンに気付かれていたとは想像していなかった。高校3年生になった今、バンに話すつもりはない。
言おうとしても、なかなか言えないことだってある…その事で諒平について話すか躊躇った。
「…兄さんには言えないけどね」
「言わなきゃ分かんないだろォ…俺がどれだけ気付いたか、分かってんのかぁ?」
バンの台詞を聞いて、目を見張る。兄だからこそ分かる、妹の気持ち。
それがリンの過去を知っていたことも容易に想像できた。そういえば、1年前の事件で警察から聞かされたことを思い出す。
(それが関係しているってことは…兄さんも何か気付いてたのかな?)
リンはバンのことを慕って、兄として見てきた。大好きな山野家の一員として生きているわけである。
「まさか、様子がおかしいことに気付いてたとか…?」
「うん、そんな感じかな…。何も言わなくていいぞ、リンが言うまで待ってるからさぁー」
バンはそういうなり、リンの頭を撫でた。リンの心の傷が癒えるまで時間がかかりそうだ。
1年前の事件で暴力を受けていたこともあり、心の傷が癒えるようになるまでには時間がかかることも含めて告げられた。
早間綺羅という幼馴染がいたが、最近は会っていない…高校3年生になったこともあり、大学進学を決めていたのだ。
「兄さん…」
「まぁ、俺はリンのこと…妹だと思ってるからな」
「うん…でも、兄さんって…時々、飲み過ぎて帰ることが多いよね」
「うっせぇ、よく言うぜ。俺だって、好きで付き合ってるわけじゃないからさぁー」
リンのからかい方に躊躇いながらも、素直に答えたバンはだるそうに顔を顰めた。
同級生に誘われ、中学時代のメンバーで飲みに行っていたらしい。1次会もあって、2次会も参加したようだ。
「飲み会は楽しそうだけど、飲み過ぎちゃったみたいだね」
「まぁな…酒を飲んでて、テンションが上がったのは言うまでもないな」
「でも、途中で寝てたの?」
「んー…1次会は起きてたけど、2次会は途中で寝ちまったな。気付いたら、深夜3時になってた」
1次会・2次会には出たが、飲み過ぎて寝てしまったらしい。気付けば、深夜3時ちょうどになっていた。
それで、ハルの家に泊まらせてもらったというわけで…ちょうど、遅いのを見越して迎えに来たらしい。
「ハルさんが車で迎えに来たの?」
「そうだよ。コウのヤツが連絡してくれたみたいでさぁ…飲み代はハルがコウに渡したって言ってた」
「そんなことがあったなんて…ハルさんに迷惑をかけちゃダメでしょ!」
兄のバンを見て呆れていたリンは溜息をつく。酒を飲むのが好きなバンのことだから、爆睡していたのだろう。
流石、空手部のキャプテン…ハルのことはいつも尊敬しているし、近所だったこともあって仲良くしてくれていたのだ。
「まぁ、ハルには申し訳ないことしちまったな…」
「全く…私から言っとくね、兄さんが迷惑かけましたーって」
そう言って話すリンの様子を見て、眠そうに溜息をつく。バンは肩を竦めながら、座り込んだまま顰める。
「そんなこと言うなよ、俺が困るだろォ…」
「だって、本当のことじゃない。でも、時が経つのは早いね」
「ああ、そうだな…お前も高3か、今年は大学受験だな、頑張れよ」
バンはリンの頭を撫でながら、笑顔を見せた。バンがいたから、今の自分が居る。
相変わらず優しく接してくれるバンが大好きだった。諒平のことを思い出してしまうことも度々、バンに言えずに居たのも事実だ。
(いつか言おう…)
リンはギュッと右手で拳を握りながら、その思いを胸に入れて頷く。バンとの会話を楽しみながら、時間が過ぎていく。
この時、バンたちはリンが事件に巻き込まれることになろうとは想像していなかった…。