二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去 ☆番外編☆ ( No.587 )
日時: 2013/05/13 22:53
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

第4章 リンの様子に異変を感じたバン…その違和感とは?

住宅街にあるバンの自宅では…リンの帰りを待つ青年が佇みながら、廊下で待ち構えていた。
その時、玄関のドアが開いて気付くと…リンがいた。そこにはハルも一緒だった。どうやら、その様子だと送ってもらったようだ。

「…遅かったな、リン」

バンは腕を組みながら、左手で缶ビールを持ったまま顰めた。その様子にハルは苦笑しつつも、リンの背中を押す。

「兄さん…」
「お帰り、無事で何よりだ。ハル、こんな時間まで付き合わせちまってごめんな」

バンはハルにお詫びを入れながら、リンを見て溜息をつく。妹のことだ、何かやらかしたのだろう。
黙りこくったまま、何も言えないで居るリンの様子を察したのか…ハルは居間に行って夕飯を食べるように促す。

「バンのことはいいから、先に夕飯を食べてきな」
「あっ…はい、そうします。じゃあ、兄さん…夕飯を食べていくね」

ハルに促され、すぐに頷いたリンは靴を脱いで上がる。そのまま、居間に向かった。
缶ビールを煽るように飲んだバンは顔を顰めたまま、何を話したら良いか分からないで居たのだ。

「バン、飲み過ぎだよ」
「うるせぇ、たまには飲んだって良いだろォ?」
「良くないよ…リンたちに心配されたら、どうすんの?」
「その時は上手く誤魔化すさぁ…っていうか、何でお前がいるんだよ」

ハルが自宅に来るなんて珍しい…こんな時間まで何をしていたのか聞きたいところだ。
ポリポリと頬を掻きながら、何の躊躇いもなく溜息をついた。少し経ってから、ハルはバンを見て思わず苦笑する。

「ヒロたちと飲みに行った帰り、酔いを覚まそうと思って歩いてたら…駅前でリンと優が不良グループに絡まられてるの見つけてさ」

リンが優と一緒にいた…ということは、優に誘われて付き合ってたのか。
何をしでかすか分かったものではないが、優のことだから付き合ってほしいことがあったのだと想像できる。

「ふーん、優と一緒に何してたんだか…それは本人に聞いた方が良さそうだな」
「うん。リンたちは幽霊屋敷を探検しに行ってたらしいけど…そこが分かんないのよね」
「まーた、探検かぁ…そういうの好きだよな、優のヤツ」

その言葉を聞いて、バンは優の性格を思い出して苦笑する。リンは渋々、探検に付き合わされるハメになったのだ。
玄関前で話しこんでいた矢先、やっとの思いで夕飯を食べ終えたリンが戻ってくる。

「お待たせー!」
「おっ、食べ終わったかぁ…っていうか、2階で話そうぜ」
「うん、いいよ。ハルさん、今日は本当にすみませんでした」

リンはハルにお礼を言ってから、スタスタッと2階に通じる階段を駆け上がった。
彼女を見送ったハルは笑顔を見せながら、バンに手を振りながら挨拶する。

「じゃあ、そろそろ帰るね。健太たちによろしくね」
「おー気をつけてな」

ヒラヒラと右手を振りながら、ハルを見送った。その後、玄関のドアを閉めて2階に上がる。
階段を上り終え、部屋に戻ると…リンがベットの上に座りながら待っていた。

「あっ、兄さん…」
「リン、話があるって言ったよな…」
「うん…話って言うのは、何?」

リンは改まった態度を示し、聞き入るタイミングに入った。その様子を見かねたバンは缶ビールを煽る。
彼女に何を話せばいいか分からないが、さっき言っていた幽霊屋敷探検について聞くしかなかった。

「リン、お前…優と一緒に何してたんだ?」
「幽霊屋敷探検…っていうか、優につき合わされたんだけどね…」
「こんな時間に高校生が出歩いていいわけじゃないぞ。夜になると、怖いことが起こるんだ」

やっぱり怖いこと…っていうのは、不審者に付き纏わされたりするといったものだ。
その恐怖を知らないので、稀にこういうことが起こってもおかしくないはず…こんな時間に高校生が出歩いていいわけではない。

「ごめんなさい…」
「ったく、しょうがねぇな…幽霊屋敷を探検するのは良いけどさ」
「うん…でも、久しぶりに楽しめたから良かったよ。優のせいで、とんでもないことに巻き込まれかけたけど…」

『久しぶり』の台詞に何か違和感を感じる…昔の記憶を辿って、何かを思い出しかけたということか。
あるいは、家族の誰かと一緒に来たことのある場所…ただ、それしか考えられない。

「もしかして、前に誰かと一緒に行ったことがあるのかぁ?」
「えっ…何でそうなるの、兄さん…まさか、それはないと思うよ」

リンは目を大きく見開きながら、コクリと頷きかけた…どこかで見たことのある場所なら、すぐに分かるはずだ。

「そっかぁ…」
「でも、あの屋敷…何か気になるんだけどね」
「気になるって…何がぁー?」
「どこかで見たことのある場所だと思うんだよ…でも、思い出せない」

それを思い出せないのは、どうして?
昔の記憶を思い出しかけているのに、どこかで見たことがある場所ということしか認識ができない。
祖父の遺言によるメッセージがあったというのは、間違いなく覚えている。リンは頭を抱えながら、何かを思い出すようなしぐさを見せる。

「ふーん…」
「まぁ、その記憶が戻らないとは限らないけど…何でか、懐かしい感じがする」
「そっかぁ…記憶がないなら、少しずつ思い出していければいいんだよ」

昔の記憶に関する出来事があれば、何かを思いだせる可能性はある。希望を見出すことができればいい。
決して、記憶をなくした…とは言えないが、少しずつ記憶を取り戻すしかないようだ。

「兄さん…」
「うん、俺たちもしっかりサポートするよ。今日はもう遅いから、風呂は明日でいいぞ」
「うん、ありがと…じゃあ、おやすみなさい」

リンはそう言うなり、部屋を出た後にドアを閉める。バンは彼女を見送った後、缶ビールを煽ってから溜息をついた。

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去 ☆番外編☆ ( No.588 )
日時: 2013/06/01 09:04
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

翌朝、チュンチュンと雀の鳴く声が聞こえる。眠くてたまらないが、太陽の光を浴びながら起きた。
眠たげな目を擦り、枕元に置いてあるCCMを取った。リンのことを考えれば、気持ちは分からなくもない。

(…だったら、昨日は何で幽霊屋敷探検してたんだ?)

リンのことだから、優に付き合わされた…と言うわけだが、どうも納得がいかない。
昨日の夜、ハルに会って話を聞いたが…リンは気になっていたことがあると言っていた。
彼女はリンにその事を問い詰めたが、答えようとはしなかった。無理に思い出させなくてもいい。
それで、ハルはリンを気遣って自宅まで送り届けた。帰って来たとき、リンは何も言えずに居たのだと--------------

(だから、リンは何も言えなかった…それにしても、言い難いことがあるんじゃないか?)

容易に考えれば、納得できる…リンにとっては容易いことであり、バンにとっても、家族でなくてはならない存在だ。

「リンのヤツ…何が言いたいんだろ?」

溜息をつき、リンの事を思いやる。何があっても、大切な妹を守る--------
そのつもりでいたが、リンの事を聞くまでもなかった。問い詰めると、ケンカに至ることだってある。
だから、そこまで無理させないほうがいいと思った…それで、記憶を思い出させるわけにもいかない。

「バン兄さん!」

ドアが開いたのと同時に声が聞こえて、振り返るとリンがいた。いつも明るい表情を醸し出している。
元気そうな姿が見れたが、リンはそこまで元気がないわけではない。優のこともあるし、悩みを聞いてやりたい。

「おはよう、リン…」
「おはよ、兄さん。ご飯の前だけど、ちょっと話してもいい?」
「あぁ、いいよ…朝飯前なら構わないし、こっちに来いよ」

ベッドの上に倒れ伏したまま、リンに向かって言い返す。部屋のドアを閉めた後、リンはベッドの前までやってきた。

「隣に座っていい?」
「どーぞ、ゆっくり寛いでな」
「うん…ありがと、兄さん」

隣に座り、リンは眠そうに欠伸してから顰めた。バンはCCMをいじりながら、メールを打っている。
メールの相手は幼馴染のハルかコウのどちらか、それとも船津直紀だろうか。

「メール打ってんの?」
「あぁ、メールしちゃいけねぇ?」
「ううん、そんなこと言ってないよー」

リンは頬を膨らませながら、プウーッと顰める。そういうところは変わっていない。
メールの返信を打ち終えたのと同時にバンは眠そうに大きく欠伸する。リンの事だ、何か話があってきたのだろう。

「リン、俺に話があってきたんだろう?」
「うん…昨日の幽霊屋敷探検の事だけど、連絡できなくてごめんね」
「連絡できてねぇのが悪いんだけど…俺は別に気にしてねぇからいい」

バンはだるそうに寝転がったまま、隣に座っているリンを見た。リンは顔を顰めていた。
何か複雑な思いを抱えているようで、バンに話せないことがある。それを悟るのに、時間はかからなかった。

「なぁ、リン---------------------」

リンを気遣いながら、眠そうに上半身を起こす。妹だからと言って、悩みを聞くのは兄の役目だ。
それがリンのためになるなら、すぐに相談できる…何か言えないことでもあるのか。

「何、兄さん?」
「もしかして、何か言えなかったことでもあったのか?」
「うん…兄さんって、いつも優しいよね。なのに、どうして私のことを気遣ってくれるの?」

その時、バンは気付く。リンが何を言いたいのか…何となく察したが、言うことができない。
悩み事があってもおかしくないはずなのに、久しぶりに何かを感じた。気遣ってくれることが嫌なのか?

「リン、俺が気遣うのが嫌?」
「ううん、私が言いたいのはそれじゃない」

リンは否定しながら、前置きを据えた上で考え込んでから言う。ふと、写真立てを見て思い出す。
確か、リンには兄がいた…しばらく会っていないという兄の話など聞かされていなかった。

「もしかして、お前…兄貴に会いたいのか?」
「うん…諒平兄さんには会ってないし、どうしているか分からないもの」

リンの兄だった小海諒平は加藤未来と幼馴染関係だった。仲が良かったが、今も続いているか分からない。
こちらにやってくる前までいた児童養護施設に行くことが多くなり、諒平の様子を聞いていた。
それが奏したのか、諒平に会うことができるか分からずじまい。兄として、できることをしてやりたい。

「じゃあ、その兄貴に会えばいいんじゃねぇ?」
「でも…連絡先も知らないし、どうしているか分かんない。だって、なかなか会えなくてさ」
「そっか…まぁ、諒平という人はリンの兄貴だったんだろ? だったら、直接行けば会えるんじゃないか?」

一度も諒平のことを忘れることがなかった…つまり、リンは会おうとしても会えないで居る。
それが諒平にとって、大切な家族の事を忘れるはずがない…幼馴染の人にも会えば話すことがあるはずだ。

「そうだね…でも、ホントにどうしてるか分かんないもん」
「分かんなきゃ、気にしなくていいぞ。どうせ、会いにいったって…つまんねぇよ」
「そうだよね…会えたら、その時に何か言いたいもん」
「まぁ、あんなヤツのことなんて忘れちまえばいいんだよ」

バンはリンの頭を撫でながら笑う。リンにとっては、山野家にいた方がいいと思っているから----------------
それをきっかけに、大切な家族としての認識を認めなければならない。辛くても言いたいことがあれば、相談に乗るつもりだ。

「俺もみんなのことが大好きだからな、リンのことは妹だと思ってるから-----------」

バンの言いたいことが分かっていたから、兄の諒平に会わずに済む。その時、母親の声が聞こえた。

「朝御飯できたわよ、冷めないうちに食べちゃいなさい」
「へーい、行くぜ」

だるそうに堪えながら、ゆっくり立ち上がるバン。同時にリンも立ち上がり、バンと一緒に1階に向かった。
階段を降りると、健太と直太が先に起きて食べていた。2人に気付き、健太と直太は素直に挨拶した。

「おはよ、兄貴…それに姉貴」
「おはよう、バン兄ちゃん! リン姉ちゃんもっ!!」

2人の元気な声を聞いたバンとリンは顔を見合わせながら頷く。平和がくるわけではない。
それでも、何か起きようとしていることは何となく察せられる。何があっても言えるはずがなく、話せないこともあった。
しかし、今は何となく分かっていた…自分でリンのために何か役立てることがあれば手伝うつもりだ。

(リン、いつも強がらなくても大丈夫だからな)

食卓につきながら、朝飯を食べていた。その時、玄関のインターホンが鳴った。
こんな時間に誰だと思いながら、眠そうに立ち上がって玄関に向かう。ドアを開けると…目の前に見知らぬ女性がいた。

「あの、リンちゃんはいますか?」

目の前に現れた、謎の女性…いったい、何者なのか---------------?