二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去 ☆番外編☆ ( No.593 )
日時: 2013/06/01 10:08
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

第5章 6年ぶりの再会(前編)…諒平の幼馴染・加藤未来、登場!

目の前に現れた女性はボーイッシュな髪型を醸し出しており、服装はアメカジを好んでいる。
さらに靴はスニーカーを履いており、人懐っこい笑顔を見せていた。どうやら、リンの知り合いらしい。

「あぁ、リンなら…」

いるけど…と言おうとしたバンの背後から現れたリンがその女性を見て驚く。

「未来さん…どうして、ここに------------------------」
「久しぶりだね、リンちゃん…」

『未来』という女性は、リンと知り合いだったということが伺えた。立ち話もなんだから、中に入れることにした。
場所を移し、バンの部屋に移動…ソファに座ったリンと未来は何か複雑な表情を醸し出している。

「なぁ、リン…この人とは知り合いなのか?」

バンが問い詰めると、リンは素直に頷いて紹介する。この女性は、加藤未来。
諒平の幼馴染であり、近所に住んでいた時に知り合って仲良くなったという。

「初めまして、加藤未来です。よろしくね!」
「俺は山野バンです。リンの兄っていうことでいいのかな、よろしくお願いします」

未来がやってきた理由を聞きたいが、リンは再会を果たしたことで複雑な気持ちを抱いていた。
どうしても話すことがたくさんあるのに、悩み事を醸し出してしまうのは良くないはずだ。

「あの…未来さん、私がここにいるって-----------------------」

どうして、ここに住んでいるということが分かったのか知りたい。諒平も気にかけていたのだろうか。
未来はリンを見て、溜息をつきながらも苦笑するしかなかった。リンに言いたいことはたくさんある。

「児童養護施設に行って、その時にミソラタウンに居るって聞いたの。それでバン君の家に居るからって教えてくれたんだ」

ミソラタウンに住んでいるということを聞き出し、バンの家に居るということが分かった。
リンは山野家の人々に対し、心を開いていったようだと気付くまでには時間がかからなかった。

「そうだったんですか…でも、ここに来たってことは----------------」
「うん…諒平のこと覚えてる?」

小海諒平という青年のことは一度も忘れることがなかった…そこまで思い深く考えることができない。
兄とはいえ、言いがたいことだってあるはずだ…そうしてまでバンの家に来た理由が分かれば、大丈夫ではないか。

「うん…兄さんのこと覚えてるけど、それがどうかしたの?」
「諒平があんたに会いたがってたよ…最近、元気がなかったから---------」

諒平がリンに会いたがっていた…元気がなかったのは、妹に会えないで居たからだ。
未来は諒平を気遣って、事情を把握するまでに時間がかかった…酒浸りなって飲んで帰ってきた諒平を叱ることもしばしばだったという。

「あのバカ、いつも酒を飲んで帰ってきて…私の家に来たかと思えば、床に突っ伏して寝ちゃうんだよね」
「諒平兄さん…酒を飲むこと多いの?」
「うん、しょっちゅうだよ…まったく、あいつは私が心配してること分かってんのに-----------」

諒平のだらしなさに呆れる態度を醸し出してしまっているのは、飲んだくれに言いたくないことだってある。
その理由を理解するのは、バンも気付いていた…たまに酒を飲んで帰ってくるだけだった。
バンも酒を飲むことが好きだが、朝帰りしてしまうこともよくあったので、ハルの家に泊まらせてもらうことがあったのを思い出す。

「あのさぁ、2人とも…諒平さんが何か問題を起こしてるわけじゃないんだろ?」

バンがリンと未来に向かって、苦笑しながら質問する。しかし、未来はなんの躊躇いもなく溜息をついた。
そこまで問題を起こしているということだけが気に食わない…諒平のことで話があってきたのは、確かなはずだった。

「…いや、諒平は酒絡みでしょっちゅうケンカしてることが多いの」
「酒絡みで?」

眉を潜めたバンは首を傾げながら、リンと顔を見合わせる。未来は顔を伏せながら、うなだれていた。
未来が言うには、たまに泥酔するまで飲むのが良くない人がいるのだという。

「うん…それで、諒平がキレてしまうことが何度もあって…どうしようもなかったのよ」
「もしかして、諒平さんはリンがいない寂しさを紛らわせようとした…ということか?」

リンがいない寂しさを紛らわせようと思って、酒を飲み始めたのがきっかけだった。
それで酒を飲んで帰ってくるたびに思うこと…自宅に戻っても、つまらない。

「そう…バン君、思ったより鋭いね」
「いや、そんなことないですよ。俺も幼馴染の家に泊まることが何度もあったから分かります」
「…でも、諒平は自宅に居るよりも私の家でゆっくり寛ぎながら寝ていることが多いのね」

諒平は自宅に居るより、未来の家で寛ぎながら寝ていることが多い。今日も未来の家で思いっきり爆睡しているらしい。

「あいつ、酒を飲んで寝ちゃうのもあるけど…ったく、私の苦労も少しは分かれっての!」
「未来さん…その気持ちは分かります。諒平兄さんのことだから、未来さんを頼るしかなかったんじゃないの?」
「私を頼ってくれるのは嬉しいけど…あいつに私の気持ちなんて分かるわけない…」

未来が言いかけたその時、CCMが鳴り出した。それに気付いた未来は慌てて、ズボンのポケットからCCMを取り出して開く。
画面を見ると…小海諒平からだった。どうやら、テレビ電話のようだ…仕方なくテレビ電話を繋いでおく。

『未来、どこにいるんだぁ?』

画面に映った青年の顔を見れば、兄の諒平だった。未来の家に居たらしく、そこにあった酒を飲みだしている。

「ごめん、ミソラタウンにいるの。今、リンちゃんに会って話してるとこだよ」
『リンに会った…だとぉ〜? おい、リンに代われ』

諒平は顔を顰めながら、リンに会いたいというような表情を醸し出していた。
背後から覗いていたバンとリンは顔を見合わせながら、苦笑する。未来から受け取り、リンは右手でCCMを持ったまま溜息をつく。

「久しぶりだね…諒平兄さん」
『リン…元気そうだな、虐待されてないか?』
「うん、元気だよ。大丈夫、山野家の人たちはみんな良い人ばかりだから安心しなよ」

リンは笑顔を見せながら、諒平を気遣って答える。諒平はヒック、と呻きながら頷く。

『そっか…まぁ、大したことじゃなくて良かったな』
「うん…兄さん、私がいなくて寂しいの?」
『…あぁ、お前が行っちまってから寂しい思いしてるぞォ…まぁ、未来には苦労かけたしな』

未来のことも気遣って悩むのも分かる…リンには、諒平という兄の存在があってこそ生きていたのだと----------
バンは未来と語りながら、楽しそうに話しこんでいた…それでも、諒平に会いたいという気持ちに駆られている。

「未来さんに迷惑かけて…まったく、本当に飲み過ぎなんだからっ!」
『うるせぇ…のんだくれだよ、家に帰ってもつまんねぇし…』
「はぁ…しょうがないね、諒平兄さんの家に行ってもいい?」

父親は捕まったから、今はいないはずだと思い込んでいた…諒平は顔を顰めながら、うなだれる。
その様子を見ていたリンは首を傾げていたが、嫌な予感がしそうでならなかった。

「あ、もしかして------------------------」
『あぁ、今もいるぜ…親父がいない間ならいいし、会いに来いよ』
「…分かった。明日か明後日、遊びに行っても平気かな?」
『いいけど、1人で行くつもりか?』

諒平の気遣いは嬉しいが、過去に自分を虐待した父親の存在を思い出してしまうのが辛い。
自分の過去を知っているのは、兄のバンと幼馴染のハルだけだった。虐待された自分の気持ちを分かってくれる兄のバンだけは特別な存在。

「うん…大丈夫、覚悟はできてるから---------------------------」
『そうか、気をつけて来いよ…俺は待ってるから、会えるのを楽しみにしてるぜ』
「うん…ありがと、諒平兄さん。じゃあ、またね」

リンはそう言いながら頷いて、CCMのテレビ電話を切った。彼女が話し終えたのを見て気付く。
未来は諒平に会うつもりでいたのだと察していた…この時、バンに言うか悩んでいたのだ。