二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去 ☆番外編☆ ( No.598 )
- 日時: 2013/06/08 15:05
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
第6章 6年ぶりの再会(中編)…諒平に対するリンの複雑な思いとは?
未来が自宅にやってきた日の夜、リンは不安そうに部屋の窓から見つめていた。
健太と直太は顔を見合わせながら、首を傾げる。昼間に未来が来た事と関係しているのではないか。
どうりで元気がなさそうなのか、リンの事を気遣うわけにはいかない。とりあえず、健太は肩を優しく叩いた。
「姉貴、どうした?」
健太の声を聞いて、ハッと我を振り返る。傍に健太がいたので、何も言えない。
直太も一緒に居るので、何も語ることはない…どうしても話したいことがあるのだろうか。
「健太、なんでもないよ」
「なんでもなくもあるか、ずっと考え込んでるようなしぐさを見せてさ」
健太の一言でグサッと胸に突き刺さる。リンは何も逆らうことができず、動揺を隠せない。
過去の記憶を思い出せば、父親との確執もあったからだ。諒平は頼りにならないが、いつも優しい人だった。
どうにもならないことは分かっていたのに…バンに気遣うわけにはいかないし、健太たちに迷惑をかけるわけにはいかなかった。
「健太…」
「俺たちがどんなに心配したか、本当に分かってんのか?」
怒りを膨らませ、ギュッと右手で拳を握る健太。彼の性格はバンの家にやってきた時から知っている。
それに比べて、直太はバンの優しさに惹かれて心を開いた。健太だって、バンのことが大好きだ。
リンは自分の想いが諒平に傾いているのだということに気付いていた。会いたいという思いに駆られてしまうのは確かだ。
「姉貴が何を言いたいのかは分かってんだよ、諒平さんに会いたいんじゃないのか?」
健太の台詞を聞いて、目を見張る。いつの間にか知らない間に聞かされていたということか。
兄の諒平に会いたいと言う思いは、今も変わらない…その孤独による寂しさを感じたくない。
2人の弟がいたから、ここまで生きてこれたと言うのもあった…健太と直太はいつも明るく接することができた。
家族と言う存在に気付かされたのは言うまでもない。バンは誰よりも優しく接してくれる。
「そうだけど…でも、諒平兄さんに会うとか決まったわけじゃないし…」
「何言ってんだ、姉貴。それを言うなら、考える余裕とかなかったんじゃねーのかよ!?」
健太がキレ出したのを見て、リンはビクッと怯えた。その様子を見かねた直太が健太を止めようとする。
「健太兄さん、リン姉ちゃんにそこまで突っ込むの止めた方がいいよ」
「うるせぇ、直太…姉貴がどんな思いを感じたか分かってんだよ!」
健太のぶち切れた態度を見かねて、リンは溜息をつく。本当に何を話したら良いのか躊躇ってしまう。
バンは帰りに未来と一緒に飲んでから帰る予定だと言っていた。何も言い難いのは間違いない。
スック、と立ち上がるリンを見て、健太と直太は首を傾げる。リンは涙が出るのを堪えながら、黙りこくったまま部屋のドアを開けて出た。
「…っ!」
どうしても我慢できない…いっそのこと、早く飛び出したいという気分になった。
一気に階段を駆け下り、玄関においてある靴を履いてから玄関のドアを開けて駆け出していった。
***
河川敷までやってきたのと同時に階段を駆け下り、ベンチに座る。
やっぱり、何も話したくない…バンには顔を合わさずに済むし、どうしようか悩んでいた。
いつも優しく接してくれる兄のバンは気さくに話しかけてくれるし、酒を飲んで帰ってきた時も気にかけてくれた。
リンはバンの優しさに惹かれ、次第に少しずつ心を開いた。諒平は自分にとっても、大切な家族だと思いたい。
「…リン?」
どこからか、聞きなれた声がして振り返る。階段を駆け下りながら歩いてくる女性を見た。
目の前に現れたのは、バンの幼馴染の人見晴香だった。近所に住んでいて、空手部のキャプテンを務めている。
「こんなところにいたら、風邪を引くよ?」
「ハルさん…っ、どうしたら良いんですかぁ…」
今にも泣き出しそうなリンを見た瞬間、ハルは目を見張った。自宅で何かあったらしい。
どうりで、河川敷のベンチに座っているわけだと納得がいく…しかし、健太と直太がいるはずだ。
だったら、なぜベンチに座っているのか分からない。とりあえず、理由を聞いた方がいいだろう。
「リン、何があったの?」
「健太とケンカしちゃったんです…」
健太とケンカしたって…いったい、何が原因なのか?
リンに優しく問い質せば、健太が諒平のことについて質問されたことがきっかけだという。
そのことで健太の意見に逆らえず、動揺と不安を隠せないくらいに苛立つようになってしまった。
「…なるほどね、それでケンカしちゃったのかぁ…」
「はい…ハルさん、バン兄さんのことはどう思ってるんですか?」
「そうねぇ……酒を飲んで帰るときは私の家に来ることが多いくせに、生意気だなって思うんだよね」
ハルはバンのことを思い出しながら、苦笑する。いつも酒を飲み、帰って来るときは必ず、自宅にやってきた。
迎えに行くまでもなく、自力で帰れるなら自宅に戻れというのが本音だったりする。
それでも、幼馴染なのは変わらない。いつだって、バンは自分の愚痴を聞いてくれるようになったのだから———————
「そうですか…」
「でもね、バンはあなたのことを気にかけてるのよ」
「兄さんがそんなことを言ってたんですか?」
ハルの言いたいことを察したリンはバンの思いを感じ取ることができない。
誰よりも大切な存在…それが自分であると言うことを察するのに時間はかからなかった。
「うん、リンのこと気にかけてるから放っておけない存在だって」
「えっ…そこまで言うほど、放っといていい存在ではない…ということですか?」
「ううん、バンが言いたいのは…あなたが本当のお兄さんに会いたいと言う思いを抱いていたことよ」
ハルはリンのことを見てきているので、空手部の後輩ということもあって放っておけない。
数日前にバンから愚痴を聞かされ、酒を飲みに付き合いだした時…リンのことを気にかけていたのを思い出した。
リンに何を言おうか迷っていたが、本当の事を伝えるべきではないかと思っていたのだ。
「どうして、それを——————」
リンが言おうとしたその時、上の方から声が聞こえて階段を駆け下りる音がした。
「こんなところで何やってんだぁ、ハル?」
振り返れば、兄の山野バンだった。本当に悩むことがあったからなのか、泥酔している。
酒を飲んだ帰りに酔いを覚まそうと思って、河川敷に立ち寄ったのだと推測した。
「バン、また飲んできたのね…」
「うるせーほっとけ、飲み過ぎてもいいだろォ…っていうか、リンが何でここにいるんだよ?」
かぁぁぁ------------------ッと頬を赤らめながら怯えきったようなしぐさを見せて逃げ出そうと試みた。
リンの様子に異変を察したバンは見逃さないように、ガシッと右手を掴んだ。
「リン、さっきから様子がおかしいぞ。急にどうしたんだよ?」
バンに右手を掴まれた瞬間、リンは怯えだしながら泣き出し始めた。
その様子を見て、呆然とするバン…泣かせてしまったかもしれないが、話を聞くしかない。
チラッとハルを見やれば、怒りを膨らませている姿が目に映った。説教されそうだと思い、冷静に捉えた。
「ホントにごめんな、リン…ってあれ?」
バンが謝ろうとした瞬間、目の前に居たはずのリンがいないことに気付く。
不意を突かれて、どこかへ行ってしまったらしい。ハルも予想外の展開だと溜息をつくしかなかった。
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去 ☆番外編☆ ( No.599 )
- 日時: 2013/06/08 19:44
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
その頃、リンはトキオシアデパート近くの公園まで逃げ出していた。
バンに言いたいこともあったのに、何で話す勇気を持つことができないでいるのか。
孤独と寂しさを感じさせるあまり、バンに言いたくなかった。そのせいで逃げ出してしまうハメになったのだから——————
「…リンちゃん、こんなところで何やってんの?」
聞き覚えのある声がして振り返れば、大空ヒロがいた。トキオシアデパートのゲーセンで楽しく遊んできたところだろうか。
あることを悟られまいと必死で冷静を装うが、何も言えずに居た。その様子を見かねたヒロは隣に座って、リンの話を聞く体勢に入る。
「リンちゃん、何かあったの?」
「ヒロさんには分かるわけないですよ…」
「バンさんとケンカしたわけじゃなさそうだけど、健太君とケンカしたのかい?」
勘が鋭いヒロはリンのことだから…健太とケンカして、家を抜け出してきたのだと推測する。
どうしても言い難いことがあるなら、遠慮なく言ってくれれば良いのに…と願うしかなかった。
「どうして分かったんですか?」
「さっき、ハルさんから連絡があってね。もしかしたら、トキオシア公園にいるかもって言うから…」
それで探し出した挙句の果てに、リンがベンチに座り込んでいたというわけである。
ハルから連絡を受けたとき、ヒロはリンに何かあったようだと察していた。それで会話に加わることで聞きだすことにしている。
「バンさんも心配してたよ。君を見つけたら、連絡してくれって言われたから…」
「…すみません。どうしようもないし…兄さんに合わせる顔がないです」
リンは泣きながら、バンに反抗してしまったことを反省していた。その時、真上から聞こえるはずのない声がした。
「リン、こんなところにいたのかぁ…」
顔を上げると、見覚えのあるクセ毛の青年がフラフラと歩きながらやってきた。
ヒロはバンを見て、無言で頷きながら挨拶する。バンはトロンとした目でリンを見る。
何か言いたげな視線を送っていたが、ヒロはバンに席を譲った。リンは何も言えない状態になっていた。
「ハルから聞いた…お前、健太とケンカしたんだってな?」
「…っ、どうして—————」
どうして、それを知っているのかと言いたげな視線を送り、バンを見つめた。
バンはコンビニで買ってきたであろう缶ビールを煽り、顔を顰める。ヒック、と呻いてから右手で口を拭う。
ここに来る直前、自宅に電話して問い詰めると健太が余計なことを言い出したからだと直太が話していたのを聞いていたのだ。
「直太に聞いたぞ…ケンカしたのは、諒平さんのことで揉めたから?」
「うん…諒平兄さんに会いたい…っていう思いはあるのかって聞かれた」
「それで、何も言えないで居たっていうのかぁ?」
バンの言葉を聞いて、無言で頷くリン。その様子を見かねたヒロはバンを見て溜息をつく。
前にバンから聞いていたが、リンの兄のことを聞かされたのは初めてだった。
どうしても言い難いことがあったなら、悩みを打ち明けてくれる仲間がいれば…何とかなるのではないか。
「ったく、しょうがねえな…とりあえず、リンを連れて帰るからな」
「バンさん、リンちゃんを責めないであげてください。本人が悪いわけではないですし…」
「あぁ、帰ったら俺の部屋で休ませるから大丈夫だ。そうすりゃ、健太たちと顔を合わずに済むだろォ…」
バンは溜息をつき、ふらつきながら立ち上がった。酒が入った影響で泥酔しかけている。
彼の泥酔ぶりを見たヒロが見かねて、自宅まで送っていくと気遣った。リンはバンの泥酔ぶりを見て、何も言うことはなかった。
いつも朝帰りして帰ってくることが多いのだから、リンは酔っ払いの扱いには慣れている。
「リンちゃん、僕がバンさんを連れて帰るよ。一緒に送っていくから」
「ヒロさん、ありがとうございます…」
元気なさそうな声を出して、しょんぼりと落ち込むリンを見たヒロは苦笑する。
バンはヒロの肩に左手を乗せ、支えてもらいながら歩いて帰るつもりだ。
「バンさん、飲み過ぎですよ。ほら、しっかり歩いてください」
「んー…サンキュ、ヒロ…」
今にも眠りそうなバンの様子を見かねて、ヒロはしっかり支えながら背負う。
酔っ払いの介抱をするのは、ヒロの役目。いつもバンが酔うと寝てしまうことが多い。
なので、ヒロは仕方がなく背負いながら歩いていると言っても過言ではない。
「ほら、帰るよー」
ヒロに促され、リンは慌てて走り出す。トキオシア公園を後にして帰路についた。
***
自宅に着き、玄関のドアを開けると母親の真理絵が腕を組みながら待っていた。
もちろん、直太も一緒に居た…リンの帰りが遅いので、心配だったのだろう。
「リン姉ちゃん、お帰り!」
「ただいま、直太…」
元気なさそうな声を出し、靴を脱いで上がるリン。真理絵は何も言わなかった。
ヒロに背負われながら歩いて帰ってきたバンは床に突っ伏して寝ている。
「バン兄ちゃん、起きてよ!」
「んー…?」
直太がユサユサと揺り起こすと、バンは眠そうに目を開ける。目の前に直太がいたのだ。
酔っ払って帰ってきたのを見かねて、怒りを膨らませようとしている母親の真理絵がいることに気付く。
このままでは、説教を受けることになりそうだ…仕方がなく、だるそうに上半身を起こして立ち上がった。
「ただいまぁ…」
「お帰り…こんな時間まで何してたの!」
真理絵がキレ出したので、ヒロはまぁまぁと宥めていた。落ち着くようにしろ、と言っても無駄ではないか。
ヒロが代わりに事情を話しておくからと言うので、バンは左手でリンの右手を握りながら、無言で2階に通じる階段を駆け上がった。
「兄さん…?」
首を傾げながら考えあぐねていると、あっという間に2階に辿り着く。
バンの部屋に着いたのと同時に部屋のドアを開けて入る。バンに握られていた手を見つめながら黙りこくった。
ベッドの前までやってくると、バンは握っていた左手を離す。いきなり離したかと思えば、グイッと腕を引っ張り出す。
「どわぁっ!?」
ドサッとベットに倒れこむような音がしたのと同時にバンと顔を見合わせる。
完全に目が据わっていて、今にも眠りそうなバンの眼差しがリンを捉えた。何があったのか、というような視線を送っている。
「リン、お前…何も言いたくないの?」
「兄さん…聞いてもいい?」
ギュッとバンの腕を握りながら言い出したリンを見たバンはヒック、と呻いてから、眠そうに起き出す。
リンの質問に答えるつもりでいたが、何を言いたかったのかは何となく分かったような気がする。
「…あ?」
「兄さんは…ハルさんのこと、どう思ってんの?」
ハルのことが気になりだしていたのか、何も言いたくないというわけではない。
幼馴染であることは全く変わらないのだから…酔っ払って帰ってきた時は文句を言いつつも、部屋に泊めてくれた。
その気持ちは諒平と似たような感覚だろう。それとも未来の家で爆睡している時みたいではないか。
「ハルは俺の幼馴染だし、いつも面倒を見てくれるから助かってる」
「そっか…兄さんは、ハルさんの家に泊めてもらうことが多かったんでしょ?」
「いきなり唐突な質問するなぁ…っていうか、ハルは俺が帰ってくると不満そうな顔を見せてたな」
「それで、文句を言われても泊めてもらったってことだよね?」
「うん、ハルは俺のことを気にかけてくれてるし…本当に姉がいるという感覚に近いかな」
ハルはいつも姉のような存在で、バンだけではなくリンたちのことも気遣うことが多い。
その存在をもたらしたものこそが、リンたちの心を開くきっかけになったからだ。
悩みを打ち明けられるような存在でありたいと思っていたので、リンを気遣うことが多かった。
バン自身も兄として、リンたちを可愛がっているつもりでいた。少しだけでも心を癒しておきたい。
「そっか…」
「なぁ、リン…俺はお前に辛い思いさせたくないんだ」
「兄さん…気遣ってくれるのは嬉しいけど—————」
「俺が言いたいのは、それじゃない。お前がいつも無茶なことをしでかすから放っておけないんだ」
リンは妹だから可愛がってあげているつもりだが、心に傷を負った子供たちは悩みを打ち明けられずに居たのだ。