二次創作小説(紙ほか)
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機・3 ( No.5 )
- 日時: 2012/12/25 19:45
- 名前: 桜花火 ◆snFB/WSLME (ID: /HyWNmZ0)
プロローグ 戦いの前兆
「郁斗様が、正気に戻られたようです」
「そう、報告ありがとう」
窓から眺めるのは、暗闇に溶け込んでしまいそうな花園。ちょうど中央にあるのは神秘的な雰囲気を漂わせる噴水だ。風の国、という名前だけであって、そよ風がいつでも吹くここは、とても居心地がいい。
しかし、こんな場所でも、今の自分の不安を振り払ってはくれないらしい。
スーツを着ている紳士的な男性が、一例をすると、音もなく消え去っていった。
そして、部屋で一人きりになると、女性はカーテンを閉めて、ソファに座った。
「郁斗もね……。全員そろって反抗期かな?」
フフフッと小さく笑いながら、写真立てを見つめる。そこには、自分以外に、三人の少年と四人の少女が写っている。七人ともまだとても幼い。全員幸せそうで、あんなに悲惨な過去があったとは思えないほどだ。
この写真は片時も離したときはなかった。あの国を黙ったまま離れてから、残されたあの子達は、必死に自分の姿を探したと聞いている。
郁斗をあと少しで助けることができなかった自分のことが、とても許せなかった。そして、その直後、別の“噂”を耳にした。
まだ幼く、そして、兄弟とも呼べる親友をなくしてしまい、ひどく傷ついていた彼らを置いていってしまった。それが心残りだった。
「ごめんね……。でも、やらなくちゃいけないことがあったから」
ギュッと写真立てをつかむ手に少しだけ力が入った。
郁斗が生きている、それを聞いたとき、心の奥にあった氷が、溶けてしまったかのように、とても暖かくなった。けれども、それだけでは済まされることではない。郁斗を操り、彼の心さえも壊してしまった奴を、叩き潰すまで、自分の戦いは終わらない。
そのとき、ぱぁっと淡く光る一匹の鳥が、目の前に現れた。突然のことにも動じずに、女性はその鳥に触れた。すると、それは一枚の紙となって、手の中に舞い降りた。
伝達の魔法だ。それもかなり高等なものである。よほど自分以外の誰かには知られたくないものなのであろう。
紙には黒い字でびっしりとその内容が書かれていた。
「……まぁ、そろそろかしらね。このまま身を隠すわけにもいかないし」
一通り目を通すと、女性は立ち上がり、もう一度カーテンを開けた。
————「この私(瞳子)の子供たちに手を出しといて、ただで済むとは思わないでよ。アルティス」
一瞬だけ、吹き続けるそよ風が、怯えたかのように吹きやんでいた。