二次創作小説(紙ほか)

Re: イナズマイレブン 異世界の危機・3 ( No.11 )
日時: 2013/01/02 20:02
名前: 桜花火 ◆snFB/WSLME (ID: /HyWNmZ0)

5 覚めない眠り



————「守は絶対に目を覚まさない…」



「……どういうことだ?」

冷静を装っていたが、やはり声は震えていた。驚愕だけではない、そこには恐怖も混ざっている。仲間を失う怖さだ。
郁斗もそれは感じ取っていて、今更、この話をしてしまったことに対して、少しだけ後悔していたが、ここまで話してしまったのだ。引き返すことなどできるはずがない。

「守を攻撃したとき、俺は自身の魔力だけではなく、闇の魔光石の力も使った。それが大きく影響している。けれども、一番関係あるのは、守の体質だ」
「…人造人間の、か?」

郁斗は小さく頷いた。

「人造人間は、かすかだが普通の人間よりも、魔力の回復が遅いんだ。だから、守が眠ったままなのはしょうがない。けれども、これは時期があまりにも長すぎる……」
「それがお前の魔力と、魔光石の力と何の関係が?」
「俺の攻撃は守の体を傷つけ、そして、魔光石はこいつの魔力を吸い取る。それが合わさって、なおかつ、守の体質が重なれば……」
「かなりの重症になるわけか……」

今度は頷かなかった。ただ黙って郁斗は守の方を見つめ、悔しそうに手を握りしめていた。

「……でも、ひとつだけ方法がある」
「!?」
「それをやるには、姉さんと俺の魔力が必要なんだ。うまく出来るかどうかはわからないけど……」
「そうか……。でも、瞳子さんのことなら、問題ない」
「えっ?」

次は郁斗が驚かされる番だった。一郎太は落ち着いた口調で、続きを話した。


「瞳子さんは、明日ぐらいには、ここに来てくれる」





                     ☆





「ほら、本当は疲れてたくせに……」

目の前でスゥスゥと小さな寝息をたてて、眠っている冬花の髪を、そっとの撫でながら、明日香は言った。
そのあと、部屋に連れ戻し、ベッドに寝かせておくと、すぐに冬花は眠ってしまった。よほど疲れていたのだろう、悪戯として、少しだけ頬をつついたりしているのだが、目を覚ますどころか、動いたりもしない。

「ふふっ、おやすみ。冬ちゃん」

小さく微笑んで、毛布をかけ直すと、明日香はそのまま部屋を出ていった。




                    ☆





「うおっ、すっげぇ!!」
「…夏未が全部作ってくれた」

昼の練習が終わった直後だった。河川敷に秋が両手に大きなカゴをぶら下げて、やってきたのだ。全員分のサンドイッチを夏未が、作ってくれていたらしい。

「食べていいか!?」

と秋が返事をする前に、すでに円堂は手を伸ばすが、雷門がその泥だらけで汚い手をパシッと叩いて、振り払った。

「円堂くん、先に手を洗ってきなさい!!貴方以外は全員洗い終わったわ」
「えっ、嘘!?じゃあ、残しとけよ!!絶対に!!」
「……慌てなくても、全部あるのに」

ビュッと風の如く走っていく円堂の背後を、全員が笑いながら見つめていた。





「「「いただきます!!」」」

全員が揃い、一斉に声を上げると同時に、腹を空かせた男子たちは、サンドイッチを頬張り始めた。

「やっぱり、美味しいな!夏未の料理」
「…言っておく、多分喜ぶ」

淡々と言いながら、秋はせっせと全員にサンドイッチが行き渡るように、一人ずつ丁寧に配っていた。
籠の中が空っぽになると、秋は慣れた手つきで片付けを始め、音無の隣に座った。

「…それと、みんなにもう一つ言いたいことが」
「「「?」」」
「あと、もう少ししたら……」

その時だった。シュッと風を切るような音が聞こえ、咄嗟に反応した円堂は、自分たちに向かってきたサッカーボールを両手で受け止めた。ボールは止められてもなお回転し続け、その威力を見せつけていた。止めたあとに確認した両手のグローブは、黒く焦げたかのように微かに破れている。


「へぇ…、結構やるんだな。まぁ、FFIだっけ?それに参加してるから、当然か」


河川敷の階段からゆっくりと下りてきたのは、一人の少年。円堂以外の人たちは、両目を丸くして驚いている。

「俺、郁斗って言うんだ。俺もサッカーが好きだから、練習に入れてくれないか?」
「……練習じゃなくて、試合するって言ってた」

ボソッと小さく秋が呟くと、郁斗は少しだけ顔をしかめた。

「ま、まぁ、そういう細かいことは気にするな…」
「郁斗すげぇな!!こんなシュート打てるなんて!!」

目を輝かせて、飛びかかるように円堂は郁斗に近寄った。しかし、郁斗は困惑な表情を浮かべていた。

「…怒ってないのか?」
「ん?なんで?」
「いろいろと迷惑かけただろ?一方的に攻撃したし、傷つけたりして…」

言うたびに声が段々小さくなっていく、その背後を見て、ため息をつく秋。申し訳なさそうに視線を逸らす郁斗は、それに全く気が付いていない。

「まぁ、そうだけどさ…。こうやって、変わったんだし、それに、郁斗もサッカー好きだろ?」
「あぁ」
「サッカーが好きな人に、悪い奴はいないよ!だからさ、一緒に練習しようぜ!」

眉を寄せたかに見えたが、それは一瞬の出来事であり、すぐに笑顔に戻ると、円堂から軽く投げられたボールを受け取り、その場で蹴り始めた。

「俺さ、お前たち全員の実力も見てみたいんだよ。だからさ、俺1人対11人っていうのはどうだ?守もやったみたいだし」
「おう、当然だ!なぁ、みんなもいいよな?」

円堂が声をかけると、豪炎寺たちはちっとも嫌がることなく、頷いた。

「よし、じゃあ、決まりだな!!俺たちの力、見せてやろうぜ!」