二次創作小説(紙ほか)
- 第九話「課外授業」 ( No.21 )
- 日時: 2013/01/06 10:19
- 名前: 時橋 翔也 (ID: 21getbfq)
次の日
二人が来たのは校舎の入り口だった
「どんな人だろうね」
「さあな…」
剣城は素っ気ない
片手をポケットに突っ込み、辺りを見る
そろそろ時間だが…
剣城が思ったその時だった
「待たせたな」
校舎から人影が三人こちらにやって来た
一人は黒髪に白い三本線が入った少年
後の二人は同じ服に同じ色の髪と目の短髪のあどけない少女と長髪の大人びた少女 恐らくは姉妹だ
「剣城だったか…パートナー見つかったのか」
「ああ」
剣城は頷く
少年は海音に思いきり近づく
そしてじろじろと海音を見た
「えっ…と?」
「………」
少年は口を開く
「…美しい…」
「………………………………………………はい?」
海音は思わず言った
美しい?ボクが?
「君は髪に服に全てにおいてシンメトリー! すばらしい!美しい!」
「……え?」
「キッドまたそれかよ」
すると長髪の少女は言った
少女は海音を見た
「悪いな、こいつは根っからの神経質でさ、全てが完璧じゃないと気がすまないんだ」
「特にシンメトリーが好きなんだよ〜」
あどけない少女は言った
…シンメトリー?
左右対称?
キッドと呼ばれた少年は剣城を見た
「ふむ…剣城もなかなか良いが…後ろのポニーテールが少々右寄りだ…」
「はあ?」
「剣城、こいつは無視して良いぞ」
長髪の少女は言った
「紹介が遅れた 俺はデス・ザ・キッド 職人だ」
「私はエリザベス・トンプソン 武器だ リズって呼んでくれ」
長髪の少女は言った
「パトリシア・トンプソンだよ〜 パティって呼んでね!」
あどけない少女は言った
「ボクは雪雨海音 職人だよ こっちは剣城…ってもう知ってるか」
海音は言った
「職人か…非常にもったいない 武器なら是非とも組みたいくらい美しいのに…」
キッドは言った
「またかよ!ったく…それよりも課外授業に行こうぜ」
リズは言った
「そういえば課外授業ってどこでするの?」
「デスシティーの外れだ… そこに住み着く悪人の魂を奪う それが授業」
キッドは言った
「初めのうちは俺が手本を見せてやる…海音 戦ったことは?」
「ソウルと二回…」
「へぇ…ソウルを扱ったのか」
リズは言った
「次の相手はどんな人かな〜 強いかな?」
「さあな…」
——————
五人がやって来たのは、デスシティーの外れにある洞穴だった
中には照明機器も無いので、キッドが懐中電灯を照らす
「うう…なんか出そうだな〜」
リズは言った
「ひょっとしたら、首がもげた幽霊とか出るかもね」
「パティ、エグい…」
海音は言った
「ねぇ剣城……剣城?」
見ると、剣城は俯いてイヤホンを耳にかけて音楽を聞いていた
剣城はいつも音楽プレイヤーを持ち歩いている
優一さんからの誕生日プレゼントらしいから…当然か
「剣城〜」
海音が剣城の腕を揺すると剣城はハッと海音に気が付き、イヤホンを少しだけ外した
「何だよ」
「あのさ、剣城ってどんな武器なの?」
海音は訊ねる
「…さあな、変身したことない」
剣城が答えたその時
低い不気味な音が聞こえた
洞窟内で反響するので、よけい不気味さに拍車をかけている
「あわわわわっ…ななな何かいるぜ…」
リズはパティの腕を掴んだ
「案外近いかもな」
キッドは言った
「近いかもなってさ…って剣城?」
海音が見ると剣城がイヤホンを着けて音楽プレイヤーの音量を最大にしているのが見えた
手つきからして少し焦っている
「…剣城」
再び腕を揺すると、剣城はしぶしぶイヤホンを離した
「何だよ…」
「君さ…怖がりでしょ」
海音が言うと、ギクリと言う感じに剣城は表情をこわばらせた
「な…そんなわけ無いだろ!たかが幽霊ごときに…」
だがその時
再びあの不気味な音がして剣城は一瞬ビクッとした
急いでイヤホンを着ける
「………」
以外だ
剣城が怖がりなんて…神童先輩ならお約束だけど
「そろそろ警戒しよう…リズ、パティ、変身するんだ」
「わかった」
リズが言うと、二人はキッドの両手に収まる
二人は拳銃に変身していた
「まずは俺が手本を見せる…海音はそれを見ていてくれ」
洞窟を右に曲がってキッドが言ったその時
洞窟の向こうから小さなコウモリがたくさん飛んできた
それらは海音達に襲い掛かろうとしている
「……!」
剣城はさすがにイヤホンを外した
キッドは拳銃を構え、次々とコウモリを打ち付けた
「ふっ…雑魚か」
キッドは言った
コウモリは打ち付けられると次々と消えていく
以外とグロくない
一通りコウモリの数が減ると、キッドは海音を見た
「さあ、お前も剣城を使ってみろ」
「うん… じゃあ剣城、武器になって」
海音は言った
「…わかった」
剣城は頷き、海音の手に収まる
それは黒と紫の大剣だった
「これが剣城か…」
魂の波長が合っているのか、大剣は軽い
今日習ったが、職人と武器はお互いの魂の波長が合わないと例え友人でも扱えないらしい
マカも一度、ソウルと魂の波長がどんどんずれて持てなくなったと言っていた
「いくよ剣城」
海音は大剣を構え、コウモリの大群に向かっていった
一振りすると、一気に何匹ものコウモリが消えた
「やるな」
キッドは言った
二人は次々とコウモリを倒していき、ついには一匹残らず消し去った
「お前…中々筋がいい」
キッドは海音を見た
「案外すぐにデスサイズになれるかもな」
「………」
その時だった
再び不気味な声がした
海音とキッドは向こうを見る
『なんなんだよこの声!』
リズは言った
「…親玉のお出ましだ」
キッドは言った
洞穴の向こうから何かがやって来た
それは、猫背になって歩く二本足の怪物だった
茶色い毛に覆われ、その毛には血液がこびりついている
「…今回のターゲット ウルフマンと呼ばれる男だ」
キッドは言った
「様々な善人の魂を食い、さらには禁断の術にまで手を出した挙げ句、このような人間とは言えない、狼のような姿になった…完全に鬼神の卵だ」
かつて人々を恐怖に陥れた鬼神
この男も、その鬼神になりかけている
「お前らも…俺に食われに来たのか?」
ウルフマンは言った
「お前らのようなガキの魂を食ったところで腹の足しにもならねぇだろうが…まあいい」
「死武専をなめるな」
キッドは言った
初心者の初めての課外授業…
このウルフマンのレベルも高くないはずだと父上も言っていた
「いくよ!」
海音は大剣でウルフマンに斬りかかる
だがウルフマンは腕をソウルのような鎌に変え、受け止める
『あいつ魔鎌か!』
リズは言った
『でもソウルのより大きいね〜 大魔鎌かな?』
パティは言った
海音は一度飛び退いた
『あいつ…レベル高いな』
剣城は言った
キッドも拳銃で打ち付ける
少しずつウルフマンが圧されていた
「俺はサポートに入る 海音は剣城でウルフマンを仕留めろ」
「わかった」
海音は大剣を構えた
ウルフマンは図体がでかい分動きが鈍い
そこを狙えば…
キッドが援護射撃に入る
海音は弾に当たらないように気を付けながら、ウルフマンの懐に飛び込んで思いきり切りつける
ウルフマンは一度海音から離れた
仕留めるには…やはり急所か
『魂の共鳴!』
すると海音は神童の言葉を思い出す
「…剣城、ボクらも魂の共鳴出来ないかな?」
『魂の共鳴…』
大剣の刃に写っている剣城は少し考え事をする
『…今のところ俺達は波長も合っている …いけるかもしれない』
「じゃあやってみよう」
海音は大剣を構えた
「いくよ剣城…魂の共鳴!」
魂の波長を剣城に送り、それを剣城は増幅させて返す
そして高まった波長を大技に変えるんだ
「…ライトニングソード!」
海音が言ったその時
海音の姿が消えた
「なっ…どこに…」
「ここだよ」
いつの間にかウルフマンの背後に回り込んだ海音はそう言うと黒と金に輝く大剣をウルフマンの身体に突き刺した
ウルフマンは声を上げる間もなく姿を青い人魂に姿を変えた
「…終わった」
海音が地面に座り込むと、剣城は人の姿に戻る
剣城は目の前の魂を拾い上げた
「ライトニングソードか…」
キッドは言った
リズとパティも人の姿に戻った
「お前らすげーな!こんなに早くも魂の共鳴出来るなんて」
「ライトニングソードカッコよかったよ!」
リズとパティは言った
「…で、これを食えば良いのか?」
剣城は言った
「ああ」
キッドは頷く
「………」
剣城は少しためらいながらも、恐る恐る一口食べてみた
狩屋の言う通り、味はなく最低限食べられるレベルだ
「剣城おいしい?」
「…おいしくはない」
剣城はそう言ってとっとと全部食べてしまった
「さあて…とっとと帰ろうぜ」
リズは言った
「………」
キッドはじっと剣城を見た
「…なんだよ」
「やはりポニーテールが右寄りだ… おい剣城、一度髪をおろせ、俺が縛る」
「なっ…別にいい!」
「剣城縛ってもらったら?キッド案外うまいかもよ」
「そういう問題じゃねええええええ!!!」