二次創作小説(紙ほか)

Re: 【カゲプロ】人影アルカディア【質問コーナー企画やってます】 ( No.182 )
日時: 2013/04/01 22:09
名前: 南倉 和 (ID: L11BZFL.)
プロフ: シンタロー君に惚れた。

—人影アルカディアⅧ



「しんたろー」

自分を呼ぶ声がする。パチリと目を覚ます。
——俺を呼んだのは誰だ?

「すごいね。ひゃくてん」

どこか懐かしい声。赤い青年は体を起こす。
——普通だろ。

「わたしなんか、ぜんぜんだよ」

そう言って照れながら笑う。風がカーテンを揺らす。
——だろうな。

「ねえ、しんたろー。」

少女は、シンタローの方を向いた。目が赤い。
——お前は・・・。

「わたし、ね            なんだ   ごめんね。」


そこで夢は終わった。「良く寝ていたね。シンタロー君。」
目を覚ますとそこには見知らぬ青年とモモ達が居た。
「お兄ちゃんってば帰ってきて玄関で倒れたと思ったら寝るってなんなの!?」
モモが腰に手を当て頬を膨らませた。シンタローは体力がないため帰ってすぐに疲れと睡魔に襲われてしまったらしい。
「それはどうしようもないやろ。」
シンタローの足がある方に青年は座る。シンタローは踏まれないように足を少し前へ寄せた。
「少しは体力付けてね!あ、お水持ってくるよ!」
モモはそう言ってからバタバタと走って行った。モモはこういうところは気が利くのだ。
「・・・。で、お前誰だよ。」
シンタローがさっきから気になっていたこと。青年は誰なのか?
サラリと赤みを帯びた茶色の髪。白い七分袖シャツ。とても気になる目の下の隈。そして、綺麗に整った顔立ち。可愛らしい女顔。と言えばいいだろうか。
「え?あ、やっぱり気がつかない?さっき『ご主人様』にも言われたんですけどぉ。」
その『ご主人様』と言う単語を聞いた瞬間、シンタローはビクッと肩を震わせてソファーから転げ落ちた。
「お、おま、おま・・・!?」
「そーですよ。せっきー☆です」
青年・・・斑は、いつものようにきゅるんと声を裏返して見せる。シンタローは口をパクパクさせながら斑を指さす。
「そんなに驚くん?僕ってそんなに変わるんですかね〜ご主人様?」
「え、せっきー君。喋らなければ格好いいと思う。」
そこへモモと共にクッキーなどのお菓子を入れた皿を持ったスズミがモモと共に現れた。斑の質問にスズミはサラリと答えた。
「え、なんか、痛い。心が・・・痛い。」
左胸を押さえながら今にも泣きそうな声でスズミを見つめる斑を無視してモモはシンタローに水を差しだす。
「お、おお。サンキュ。」
「シンタロー君。うなされてたけど大丈夫?」
スズミは少し前のあの出来事から随分と落ち着つきを取り戻し、今は正常だ。
「え?俺、うなされてたの?」
シンタローは、夢を思い出した。嫌な夢。シンタローは顔を隠すように右手で頭を押さえた。
「って、うわ!?自分、いつからいたん!?」
斑が突然驚きの声をあげた。シンタローも顔をあげた。
「煩いよ。斑君。最初からいたよ。」
そこにはマグカップを片手に持ったレイが居た。
「それにしても、嫌な予感がする。」
「嫌な予感?」
シンタローが問うとレイは「あ、いや。気にしないで」と言った。


——某町某ビル前 交差点

「ねえー、キド暑いよぉー。」
「カノ。見つけられるまでの辛抱ッス!」
キドを中心としたメンバーは、とある交差点にいた。
「ここに、居たはずなんだが。」
「本当に彼、ここに居るの?」
どうやら人探しをしているようで、なんだかんだ2時間滞在していた。
カノはもう探すことに飽きていた。
「にしても、人が居ないッスね。なんだか怖いッス。」
「確かにね。異常すぎる。」
セトがそう呟くとカノも同意する。いつも人であふれかえっているはずの交差点に人が自分たちを覗いて一人も見当たらないのだ。
「車は通っているのにね。」

「少年を探す。見えない少女と騙す少年と盗む少年。」

それは、とてもきれいな声だった。
3人は危険を察知したかのようにいつでも、逃げ・攻撃ができる姿勢になる。
「お前は誰だ?」
「私は、忘れられた人。」
不思議なことを言う少女は、キドを見つめる。
「だから、貴方も忘れる。」
そう言って少女は目を赤く染め上げる。
「っ!?」
「キド!」
咄嗟に、キドの前にカノが立ちふさがる。刹那、カノがガクンと膝から崩れる様に倒れる。
「カノっ!?」
「君!何したッスか・・・あれ?」
キドはしゃがみ込んでカノの上半身を抱きあげた。セトは怒りをあらわにするように少女の居た方向に顔を向けるが、少女は見当たらなかった。


—メカクシ団アジト

ガシャンとコップの割れる音がした。
「レイさん!?大丈夫ですか?」
レイがぼうっとしながら立ち尽くしていた。手から持っていたマグカップが地面へと放たれ粉々になった。
「悪い予感が、当たってしまった。」
レイは悲しそうな怒っているような歪んだ表情をした。
「悪い・・・」「予感?」
斑の言った言葉を紡ぐようにシンタローが口を開けた。


始まってしまった無限の時間————