二次創作小説(紙ほか)

第33話 ( No.105 )
日時: 2013/03/15 22:04
名前: 時橋 翔也 (ID: ozdpvABs)


この日も雷門は二つに別れて練習していた

一つはフィフス反乱派 海音を始めとしたフィフスセクターに反抗を決意した少数グループだ
もう一つはフィフス派 サッカーを失わないためにフィフスに従うグループ サッカー部員の大半がこちらに属している
フィフス反乱派はこの日、第二グラウンドで練習していた 特に理由もないが、自分達ばかり屋内グラウンドを使うのは悪いと神童が言ったのがきっかけだ
「今日も先輩達は練習しないんだね…」
天馬はボールでリフティングしながら言った 入部したばかりの頃は全く出来なかったリフティングも、ぎこちなさが残るが出来るようになってきていた
「それでも…やろうよ、フィフスセクターに反抗するんだ」
海音は言った もう後戻りはできない道を自分達は進んでいる 進むしかないのだ

『今日俺は用事があるから練習はお前たちに任せる!by円堂』

このようなメモが部室に残されていた為、どうやら今日は円堂は来られないらしい
その為練習は実質的神童が仕切っていた いつも神童が仕切っている気がするのだが
「よし、次はシュート練習だ 三国先輩お願いします」
「ああ、任せろ」
三国は笑顔で頷き、ゴールへと歩いていった 今まではどうだったのか定かでは無いが、神童と三国はサッカーをするとき笑顔を取り戻しつつある気がした 海音のお陰だな…と天馬は海音を見た

だが海音は校門がある方角を見て固まっている 天馬は心配そうに海音を見た
「海音どうしたの?」
「……直矢…」
海音は小さく言った 天馬も海音と同じ方角に目を向けてみる
第二グラウンドの近くに一人の人影が見えた 黒いパーカーにジーンズ、パーカーのフードを被っているが、長めの銀髪のポニーテールに赤と黒のオッドアイを確認するとそれが直矢だと天馬も気がついた
それと同時に海音はすごい早さで直矢の元へと走り出した
「ちょっ…海音!?」
信助は驚いて声をあげるが、もはやその声は海音に届いてはいなかった

海音は直矢の目の前にやって来る すると直矢もフードを外し、にっこりと笑った
「久しぶりだな海音」
「直矢どうしたの!?てか…身体は?!」
海音は直矢を見て始めにそう言った
すると後ろで足音がした 振り返らなくても、そこに四人がいるのは明白だった
「直矢さん!だ、大丈夫なんですか…?」
天馬は直矢を見て心配そうに言った 直矢も天馬を見た
「ああ…外出許可が出たから来たんだ」
「外出許可…」
「天馬、海音…この人は?」
信助は二人に訊ねた 海音と天馬は信助や神童を見た
「紹介するよ…この人は直矢、ボクの兄だ」
「初めまして、雪雨直矢だよ」
直矢は微笑んで言った この前の車イス少年のような温厚な性格だった

兄…?神童はそんな疑問を抱いて海音と直矢を交互に見た

海音は薄い青い髪で、病気のせいかもしれないが直矢は白に近い銀髪 海音は蒼い目をしているが、直矢は赤と黒のオッドアイだ 肌の白さこそ似てはいるが、兄弟にしては髪や瞳、さらにどちらとも整っているものの顔立ちは似ていない

そして神童は理解する この二人は実の兄弟では無いのだと 

だが見るからに二人はその事をよくわかっているようだ
神童は文脈から考えて一つだけ訊ねた
「…もしかして入院しているんですか?」
「ああ」
直矢は頷いた 時だった

「あ、あなたはもしかして…」
神童の背後で三国がそんな声を上げた 四人は驚いて三国を見つめる
「え、三国先輩…?」
「知り合いですか?」
神童が訪ねると、三国は首を横に振った
「日本代表バスケチーム『VFジャパン』のキャプテンにして日本を世界二位にまで勝利へと導いた…天才PGにして無類のSGでもある… あなたがあの伝説の?」
「ぽいんとがーどに…しゅーてぃんぐがーど?」
バスケに乏しい天馬は聞き慣れない単語を発音する 意味が伝わらないのは信助と神童も同じのようで、見かねた海音は説明する

「PG(ポイントガード)はボールを運んでパスをしたり指示を出したりするチームの指令塔…サッカーで言えばゲームメーカーだね」
「ゲームメーカー…」
神童は自らのポジションでもあるその単語を発音する
「SG(シューティングガード)は長距離からのシュートで得点を稼ぐんだ サッカーで言えばFWでロングシュートが得意な…南沢先輩みたいな人かな」
「へー…そういえば海音もバスケするんでしょ?海音はポジション何なの?」
「ボクはSF(スモールフォワード)って言って、シュートしたり守ったり柔軟なプレイを求められる万能的ポジションなんだ」
海音は天馬に説明する なるほどと天馬と信助が声をあげたのを見ると、どうやら理解はしてくれたようだ

神童は三国を驚いて見詰めた
「…でもなんで三国先輩がそれを?」
「友達が熱意に語っていたんだ」
三国は苦笑する すると直矢はあははと笑った
「そんなにすごくないよ…実際あのチームは俺が居ないとすぐに負けてた」
「居ないと?」
「…準決勝で病気が悪化して、決勝戦には出られなかったんです」
悲しげに海音は説明した 直矢は何よりも決勝戦で戦うのを楽しみにしていたのだ、それなのに…

「…久しぶりだなー雷門」
すると直矢は向こうに見えるバスケ部が現在使っている体育館の方を見た
「俺も昔はあそこでバスケしてた…」
「直矢…」
バスケの有名校に進学できたものの、未だにバスケが出来ていない直矢を見て海音は心が痛んだ 病気が治ったら思いきりバスケしたいといつも直矢は話している
「…練習の邪魔して悪かったな、俺はもう行くよ」
すると直矢は再びフードを深く被った
「バスケ部は見ていかないの?」
「見ていったらきっとバスケをせずにはいられなくなる…俺はバスケを止められているからな」
直矢は海音に言った
「…それに、見に行かなくてももうあいつらは俺が居なくても大丈夫だ」

そして直矢は天馬を見た
「海音はがんばり屋だから無茶な事や無理なこともしょっちゅうするから…天馬君、海音の事よろしくな」
「はい!」
「な、直矢…」
赤くなる海音を見て天馬や直矢はクスクス笑った
「じゃあな、練習頑張れよ」
直矢は五人に背を向け、病院に戻るべく歩き出した

どこか悲しさを秘めたまま