二次創作小説(紙ほか)

第5話 ( No.12 )
日時: 2013/01/18 18:04
名前: 時橋 翔也 (ID: j.vAWp8a)
プロフ: 私立推薦当日!


『…あれで良かったのか?初めから俺の力を使えば、あの少年を苦もなく負かすことが出来たと言うのに…』

…いいんだよ、…ボクの力だけでも十分勝てると思ったし

『傲慢だな… そこまでして俺を使いたくないか?』

…うん、ごめん
ボクはむやみに周りを傷つけたくない

『ふっ… やはりお前は俺の相棒にふさわしい…』

…それ、誉めてる?

『さあな… そろそろ目を覚ませ、外ではお前の『仲間』が心配しているぞ』

仲間…?

——————

長いように感じた入学式が終わった
そう思うと天馬はひどく疲れているのを実感した
黒の騎士団と戦ったばかりのせいか、ずっと立っていたせいかはわからない

…そうだ、海音とキャプテン、大丈夫かな

天馬は二人が保健室に運ばれたのを思い出す
教室に貼り出されたクラス表を見る前に、天馬は近くの先生に保健室はどこにあるのか訊ね、教えられた道を進んで保健室へと向かった

——————

始めに感じたのは、柔らかくて暖かい何かが上に乗っかっている感触だった
次にお決まりの薬品の香りがすると、海音はここが保健室だと理解する
…ああそうだ、ボクは気を失って…

「海音!良かった…!」
目を覚ますと、ベッドの横の椅子には天馬がいた
海音は天馬を見る
「天馬…」
「心配したんだ!海音身体冷たいし…俺…」
人の身体が冷たくなるのは、身体が正常では無いことを意味する
天馬は本気で自分を心配してくれたのだろう 海音に天馬の優しさが身に染みた

すると海音はすぐに隣のベッドで寝ている神童の存在に気がついた
「…キャプテン、まだ目覚めないの?」
「うん…ダメージが深刻らしいよ」
天馬は暗い声で言った
海音はゆっくりとベッドから起き上がる 天馬は目の色を変えた
「ダメだよ海音!まだ寝てないと!!」
「大丈夫…平気だから」
海音は天馬に言った そして時計を見た
あともう少しで学活が始まる

海音はベッドから降りた
「海音…大丈夫?」
「うん、ホラ天馬も行こうよクラスに」
海音は言った
もし具合が悪そうだったら、すぐに保健室に連れてこよう… 天馬は思いながら海音と保健室を出た

——————

先ほどよりは生徒は少ないが、それでも十数人の生徒が教室の前に貼り出されたクラス表を見ていた
海音はジャージなので少々訝しい目で見られたりもしたが、気にせず天馬と一緒にクラス表を見た

「えーと…ボクは…二組だ」
「俺は三組みたい、…離れちゃったね」
残念そうに天馬は言った
そして海音はあることを思い出す
「…剣城も一年生だよね、何組かな?」
「さあ…」
二人して剣城のクラスを探してみる
海音は同じ二組のメンバーを見てみた
『剣城京介』
二組のメンバーの中にはその名前がしっかりと書き込まれていた
「三組にはいないねー…二組は?」
「…いたよ」
海音が言うと、天馬は思いきり青ざめた 真っ青に
「え…海音と同じクラス!?」
「そうみたい…」
「…ヤバくない?」

天馬の言いたいことはよくわかった
さっき一対一で戦い、試合までしたのだ 同じクラスになったらどんな事になるか…
「……大丈夫だよ」
海音は天馬を見た 笑顔で
「ボクね、ちょうど剣城と話して見たかったし」
「でも… ひどいことされない?」
酷く天馬は海音が心配だった
剣城にボールを当てられたからかもしれない
「平気平気!」
一点の曇りもないその笑顔を見ると、何だか天馬は安心できる気がした
海音って…不思議だな
「…じゃあまた会おうね、頑張って」
「後でね!」

学活の時間が迫り、海音は教室に入った
皆はそれぞれ仲がいい者と話してばかりで、まったくジャージの海音に視線が向けられない かなり好都合だ
「ボクの席は…っと」
黒板に貼り出された座席表を見る
今年は男子が多く、男子同士くっついている席も多い中、海音は一番後ろの窓際、生徒から絶大な人気を誇る席だった
そしてその隣は、剣城だった

「………」
海音は絶句した
隣が、剣城? いやいや…大丈夫、ってさっき天馬に笑顔で言ったじゃないか
それでもさっき敵対した剣城が隣と言うのは、運が良いのか悪いのか、もう神様のイタズラにしか思えない 神様がいたらの話だが
取り合えず突っ立ってても仕方ない
そう思い席に向かうと、すでに剣城は席についていた 携帯をいじっていて無表情

剣城も入学式出たのかな?この変わった制服で いや…カッコいいとは思うが…
そう考えると笑いが込み上げるが、笑ったら剣城に殺されかねないのでだまって海音は剣城の隣に座った
「………」
周りとは違い、人を寄せ付けずに一人でいる姿は、とても寂しげに見えた
目付きはかなり悪いが、間違いなくイケメンに入る整った顔立ちをしていた、しかし改造された制服に柄の悪い態度のせいで、この上なく不良に見える
海音の兄もイケメンに分類される顔立ちの持ち主だが、剣城とはまた違ったタイプなのだろう
…まあ、イケメンなんて特に気にしたことも無いけど

すると剣城は自分が見られていることに気づき、携帯から目線をそらすと見ていた海音を思いきり睨んだ
「何だよ… 人の顔ジロジロ見るんじゃねぇよ」
「あ、ゴメン…」
海音は剣城から目線をそらす
剣城の目付きが悪いなどと思っているが、所詮自分も同じだ
『力』を使っていた時、親しかった幼馴染み現在中2に、『海音って…力使うとき目付き変わるな』と言われ、力を使いながら鏡を見たところ、これが自分?と自問自答してしまった
蒼い目と打って変わり真っ赤な目につり目、普通にしていても睨んでいると勘違いされそうだった 人前で力を使うときはこっそりとするので見られる心配は殆ど無いが口調も変わってしまうのであまり好きではない

『俺はサッカーしたいんだ!この雷門サッカー部で!!』

…思いきり口調が変わってる
どうしても力を使うとあいつと同じ口調になるのだ 俺って…ボクのキャラじゃない
「…おい」
そんな事を考えていると、突然剣城が声を掛けてきた
海音はこちらを見ている剣城を見た
「…なに?」
「…………いや、別に」
少しだけ海音を見たあと、剣城は再び携帯に視線を戻す 何だったんだ今のは…

ただこのとき剣城は、よりいっそう寂しげに見えた