二次創作小説(紙ほか)

第40話 ( No.129 )
日時: 2013/03/24 18:54
名前: 時橋 翔也 (ID: oMcZVhE7)


そもそも何故こうなったのか、俺には理解が出来ていなかった

辺りには事故現場を見物に来たやじ馬がたかり始め、サイレンの次に騒音を引き起こしていた
そのサイレンがパトカーなのか救急車なのか、俺には判別が出来ない もしかしたら認めたくないだけかもしれない

雪が積もる大通り チラチラと雪が舞うこの日 道路には急ブレーキを想像させるスリップしたタイヤの跡と赤い血の海が広がっていた
白い雪は鮮血に染まり、今もなおそれはじわじわと広がりつつある

阿鼻叫喚の事故現場
俺が抱いているこれは何だ?血まみれで冷たい とても大切な人だったのに涙でよく見えない
何度揺すっても起きない さっきまで普通に話していたのに
笑っていたのに…何で

『ごめん、俺死んじゃったよ』

目の前のアイツによく似た幻は言った
 いや幻なんかじゃない…アイツの、霊

俺は救えなかった 大切な人を…初恋の人を

だから………俺は…… … … …

——————


ボールは万能坂側に渡り、海音と天馬も急いで追いかける ボールをキープしていた磯崎の視線の前には、勝敗指示に従う浜野
「………」
磯崎は不適に笑い、まるでシュートのような強烈なパスでわざと浜野を痛め付けた
「うわあっ!」
浜野は地面に倒れ込み、すかさず別の敵選手にボールが渡る

今のは明らかにラフプレーだ
それから察した事を神童は思いきり叫ぶ
「みんな気を付けろ!こいつらは俺達を潰す気だ!!」

勝敗指示に従う従わない関係なしにラフプレーをする これが万能坂のサッカー
海音は悲しさを押さえられない中ボールを奪取するべく走り出す
ゴールはもう近い まずい、シュートされる…!
だがその時、余裕綽々だった敵選手の周りに白い霧が発生した
「…ザ・ミスト」
その霧は霧野が発生させたものだったらしく、霧野は視界が遮られた選手から難なくボールを奪う

海音は混乱を隠せない 何故霧野がボールを?勝敗指示に従う筈なのに、あれほど反抗を拒否していたのに
その疑いを晴らすかのように、霧野は海音と、それから神童を見た
「…あんなこと言った俺の頭がイカれてた」
霧野は苦笑する そしてはっきりと告げた

「神童、それから…海音、天馬 俺はもう逃げない お前達が成し遂げたいなら力を貸すよ、この腐敗したサッカーを変えるためにも」

海音!と最後に言うと霧野は海音にロングパス 海音はそれを受けとると嬉しくなる
またサッカーを変えたいという仲間が増えたのだから
だがその思いを粉々にするかの如く敵選手は強烈なスライディングを繰り出した
「うわあっ!」
ボールを奪われ、海音は足を抑えて地面に倒れこむ 前に怪我した足の傷が抉られたように痛む 

海音は起き上がり、選手達の足元に注目した 万能坂のスパイクには鋭利なトゲがつけられ、どう見てもそれはラフプレー専用のものだった
「うわあっ!」
夜桜までもが天馬を吹き飛ばすようなラフプレーを仕掛ける だがよく見ると選手達は審判に死角をつくり、ラフプレーを見せないようにしている
「………」
決意したかのように、海音は地面を思いきり蹴りつけた

「うわああ!」
強引なラフプレーで神童を突破した磯崎はゴールを決めるべく走り出す
だがその時 すごい早さで何かが迫り、ボールを奪われてしまった
「何っ?!」
ボールを奪ったのが海音だと気づき、磯崎は慌てて振り返る

海音はどんどんと単独でゴールへと上がっていく そこに剣城が走ってくるのが見えた
剣城は再び化身を出すべくオーラを出そうとした だが、オーラが出せない
「!?」
化身が出せず戸惑う剣城を簡単に抜き、海音の視線の先に天馬が見えた
「天馬!」
海音のロングパスを天馬はしっかり受け取り、天馬は思いきり駆け出す

困惑を隠せない なぜ化身が使えないんだ?
剣城はふと海音を見た まさかわざわざ怪我をしてまでアイツは俺の化身を封じたと言うのか?

天馬の周りに優しい風が吹く それは立ちはだかる選手を避けるようにして吹いていた
「そよかぜステップ!」
天馬は敵選手をかわし、走り出そうとした時だった
「遅い」
ただ一言磯崎は吐き捨て、天馬を思いきり吹き飛ばしボールを奪った
「うわああ!」
だがそれだけでは終わらなかった 磯崎は何を考えたかDFの霧野に向かっていき、

霧野の足をあのスパイクで蹴りつけるようにスライディングした

「うわああああっ!!」
「霧野!!」
神童は叫び、急いで倒れた霧野に駆け寄る
痛々しく霧野が押さえる足は真っ赤に腫れ上がり、試合続行の厳しさを物語っていた
「…へへ、サッカーが出来ないのに比べたら、こんなの平気さ」
霧野は痛々しく笑いながら立ち上がる 見かねた円堂はベンチから手を挙げた
「選手交代!霧野に代わり西園!」
それを聞き、霧野はよろよろとベンチへと歩いていった 代わりに信助が初の出場を果たす

そんな様子や、指示に従う雷門メンバーを見下しながら
「…手応えのないやつらだ」
磯崎は挑発した 神童はうつむくだけだった
「海音!これでも戦うか?」
夜桜は海音に向かって叫んだ その瞳から心境は読み取れない
「ボクはまだ戦える!」
海音はフィールド全体に言うように叫んだ
「絶対に諦めない!…この腐り果てたサッカーなど、俺がこの手で叩き潰す!!」
海音とレインの叫びがフィールドの選手達に響いたかはわからない

それでも復讐の灯火が、絶えることはなかった