二次創作小説(紙ほか)
- 第6話 ( No.13 )
- 日時: 2013/01/19 10:40
- 名前: 時橋 翔也 (ID: j.vAWp8a)
下校時間になり、用事がない生徒達は次々と教室から出ていく 海音もその一人だ
剣城は学活が終わるとすぐに教室から出ていってしまった もう少し話しておけばよかったかな…と海音は思った
教室の前の廊下に立ち、待っていると案外早く待っていた人物はやって来た
「海音おまたせ!」
人混みを掻き分け、天馬が海音に駆け寄ってくる 海音は天馬を見た
「ううん、大丈夫だよ… ところでさどうする?サッカー部に入る?」
恐らくさっきの黒の騎士団戦を見ていたやじうま達の中には、サッカー部に入部しようとしていた人も多く居ただろう
だが海音の活躍により勝てたとはいえ、あれだけボロボロにされた雷門イレブンを見れば、入部を諦めてしまう者達も多くいる筈だ
天馬もその内の一人になったのか否か
答えはすぐに帰ってきた
「もちろんさ!憧れのサッカー部だもの!」
聞いたとたん海音はホッとした
天馬は…心強い味方な気がした
「よかった…ボクも入るよ?一緒に入ろうね!」
「あ、でも俺同じクラスの人に聞いたんだけど…サッカー部って毎年必ず入部テストをするんだって」
天馬は言った 入部テストか…懐かしい
「だいたい毎年サッカー部の入部テストを受けるのは四十人くらいだけど…受かるのは半分以下なんだってさ」
「半分以下…」
それほど難しいということだろう
さすがは名門なだけはある
すると天馬は気になることを聞いてみた
「…海音、剣城どうだった?」
剣城の事を聞かれ、海音は剣城が寂しそうにしている姿を思い浮かべた
「特に…何も無かったよ」
「そう?」
天馬の表情からして本気で海音を心配したらしい
海音も、思ったことを言ってみた
「…剣城ってさ、なんか…寂しそうなんだよね」
「寂しそう?」
「うん、…何て言うか心を鎖で縛られた感じみたいに…」
少々表現はおかしいかもと海音は思ったが、天馬にその意味は伝わったようだ
「実はさ、俺も思ったんだ… 剣城のサッカーって暴力的で痛いけど…なんだかサッカーが悲しそうなんだ」
天馬は剣城からボールを受けたことを思い出して言った
サッカーを友達みたいに言う… 本当に天馬はサッカー大好きなんだね
——————
黒の騎士団戦があった今日に入部テストをやっている筈もなく、テストは明日となった 二人は雷門の校舎を出る
「天馬!」
すると後ろから声がした もしかしてという顔をして天馬が振り返ると、そこには蒼い髪の少女がいた
「葵!」
天馬が声をあげたのを見ると、どうやら二人は知り合いのようだ
「天馬知り合い?」
「うん、幼馴染みの空野葵だよ」
天馬は言った
幼馴染み…か
「あなた今日すごい活躍してたよね!」
葵は海音を見た
「先輩達も歯が立たなかった黒の騎士団に一人で挑んで…スゴかったよ!」
「そうかな…」
海音は言った 正直あれはまぐれな気がするが…言わないでおこう
「じゃあ私用事あるから…またね」
「バイバイ!」
走り去っていく葵を天馬と海音は見つめた
空野葵…か、いい友達になれそうだ
「そうだ海音…今日暇?」
「うん …どうして?」
「せっかく友達になれたしさ…俺の宝物見せてあげる!」
天馬は楽しそうに言った 宝物?
海音にはすぐにわかった
「もしかして…サッカーボール?」
「え…なんで分かったの?」
「天馬の宝物っていったらサッカーの何かかなって思って…」
「あはは…バレた?」
天馬は笑った こういう純粋にサッカーが好きな人はいわゆるサッカーバカとでも言うのだろう 兄みたいだなと海音は笑いが込み上げた
「くくっ…天馬って単純だね」
「な…そんなことないよ!」
顔を赤くして言う天馬だが実際に説得力はない …にしても宝物のサッカーボールか、どんなものなのかな?
——————
海音のアパートは天馬の家とは正反対の方角にあったが、どうせ遅くに帰っても誰も居ないと思い、海音はついていった
やって来たのは一軒家ではなく、少々ボロい小さなアパートだった 天馬も一人暮らしなのだろうか
「サスケただいま!」
天馬はアパートの前の犬小屋から出てきた大きな犬を撫でた
かなり歳をとっているようでとても大人しい
「サスケっていうの?」
「うん!俺の親友さ!」
天馬は言った サッカーどころか犬まで親友なのか… 海音は思いながらサスケを撫でてみた
「犬かあ…ボク動物飼ったことないからあんまりさわったこと無いんだよ」
「そうなの?」
「うん、…でも可愛いね」
動物は好きな方だ、飼ったことが無いだけで
今も住んでいるのはアパートなので飼うことはできないが
するとアパートの入り口から若い女性が出てきた 二十代前半辺りのきれいな女性だった
「天馬おかえり…お友達?」
「うん!今日友達になったんだ!」
天馬は女性を見た
「天馬のお母さん?」
「違うよ、この木枯らし荘の管理人で俺の親戚の秋姉だよ」
天馬は海音に言った まあ親子にしては年が近いしな…
「始めまして、雪雨海音です」
「こんにちは…私は木野秋、天馬の親戚なの」
秋は言った
「そうだ海音、俺の宝物を見せてあげる」
天馬は言った
天馬と秋と共にアパートの中に入ると、中はきれいで色んな人と一緒に暮らしているのが見てわかる
海音は天馬に腕を引かれ、天馬の自室に入る 以外と整頓されていて様々なサッカーグッズが置かれていた
「はい!これが俺の宝物!」
天馬が海音に渡したのは、ボロボロでイナズママークが入ったサッカーボール
傷だらけで、よほど使い込んだんだろう
「これ凄い使い込んでるね…」
「だよね、きっとサッカーが大好きなんだよ」
天馬は海音とベッドの上に座った
「俺はね、三歳の時沖縄で住んでたんだ」
「へぇー…ボクはつい最近まで北海道 真逆だね」
海音は天馬を見た
「まだ仔犬だったサスケが木材に挟まれていてさ…助けようとしたら木材が倒れてきたんだ、その時に…このボールがまるで炎のようなシュートになって木材を粉々にしたんだ」
「シュートで…?」
「俺はどうしても助けてくれたお礼がしたくて…母さんに頼んで沖縄中を探してくれたんだ、でも見つからなかった」
天馬は言うと、ボールのイナズママークを指差した
「ほら…ここにイナズマが描かれてるでしょ?もしかしたら雷門の人かもしれないって思って…雷門に入学したんだ」
なるほど…海音は思った
サッカーに助けてもらった天馬にとって、サッカーとはかけがえの無いものなのだろう
海音にも、天馬の気持ちがわかる気がした
「天馬、そろそろ夕飯できるよ」
すると部屋に秋がやって来た
秋は海音を見る
「海音くんもどう?夕飯」
「いいんですか?」
「食べていきなよ海音!秋姉料理とっても上手いんだ!」
天馬に進められ、海音は秋にお願いした
人の家で夕飯を食べるなんて初めてだ
こうして、いろいろあった一日が終わろうとしていた