二次創作小説(紙ほか)
- 第41話 ( No.130 )
- 日時: 2013/03/24 18:56
- 名前: 時橋 翔也 (ID: 7uqXWVar)
この日の事を思い出すたび、酷く自分の無力さを思い知らされる
血に染まるフィールド 鮮血を吸った赤い地面 倒れているお前のチーム
お前の足はサッカーでこうなったと思えないくらいぐちゃぐちゃで、目を覆いたくなる
不適に笑い、見下すアイツらを、俺は絶対に許さない
お前の仇は取るから…俺から消えようとしないでほしい サッカーが無くても、まだできることはあるはずだ
だからこの日の悪夢を、俺は忘れない
——————
「…磯崎」
すると万能坂のGKは磯崎に呼びかけ、磯崎はGKを振り返った
「どうした?」
「監督からの伝言だ、…九番の足を狙え」
九番 の言葉に磯崎はすぐさま海音を見た 九番とは剣城も潰す命令を受けた海音の事だろう
「わあったよ…」
磯崎は頷く あの監督の命令を聞くのは正直嫌だが、シードである以上逆らうわけにもいかない
…それに見せしめになるかもしれない
「…海音…!」
幼馴染みの足が狙われているのに気づいた夜桜は表情を変え海音を見る そこまでするのかフィフスセクターは
ボールは海音に渡る 渡されたといった方が正しいかもしれない
周りの選手達の動きが変わった とたんに剣城は嫌な予感がした
「まさか…」
誘い込んでる 海音の足を狙っているのだ 恐らくとどめは万能坂で一番キック力が高い磯崎…
足に怪我を負う辛さをよく知る剣城はどうすべきかわからなくなる だって俺は…!
『フィフスセクターから雪雨を再起不能にしろと命令を受けたから』
剣城の横でそんな声がした 姿は見えない それでも誰だかは分かっていた
『さあどうする京介?君は雪雨を、海音を潰すためフィールドにいる まあフィフスに従うなら見ているのが最善だね』
「………」
わかっているさ、それくらい
心の奥底で剣城は呟き、決意したように海音の方を見た
「俺は…二度と足を破壊されるのを、見たくないんだ」
そう言うとソイツはクスッと苦笑したのがわかった
『…それでこそ、君らしいね…京介』
それだけ言うと、ソイツはそれきり何も言わなくなった 剣城は
「ありがとう…華音」
そう呟き、地面を蹴りつけ駆け出した
守備力が薄くなった万能坂の陣地を海音は駆け上がっていく まるで誘い込んでいるみたいに
すると周りの気配に気づいた それはレインも同じだった
『気を付けろ海音、…やつらは海音の足を狙っている』
レインからの警告 それは海音も分かっていた
「………」
だが海音はその警告を無視して走り続ける レインは驚きを隠せなかった
『聞いているのか海音!サッカー出来ない身体にしようとしているのだぞ!』
「……ごめん」
海音はそれだけをレイン、それに他の雷門イレブンに伝えるように言った 海音の意図を察するには十分な三文字だった
海音の足を狙うべく磯崎がこちらへ走り出す レインだけでなく夜桜からも血の気が引いていく
「磯崎やめ…」
そう叫びかけて、止まった
今ここでそう言えば、今までの苦労や犠牲が全て水の泡になる それだけはあってはならない
「…終わりだ!」
磯崎は海音に強烈なスライディングをかける だが海音はかわそうとしない
『やめろおッ!!』
レインが叫んだ その時
剣城は海音に思いきり体当たりし、磯崎のスライディングから海音の足を守った
「うわあっ!」
横へ倒れかけながらも海音は空中で体勢を立て直し、何とか足からの着地に成功する
「海音!」
天馬は叫んだ 今のプレーは…剣城が海音の足を…守った?
海音は剣城を見上げた 逆に剣城は睨むように海音を見下ろした
「…あのスライディング、お前ならかわせたはずだ、…何故かわさなかった?」
「………」
海音は悲しげに視線を反らして立ち上がっり
「…昨日はごめん」
それだけ言った
まさかこいつ…そう思いかけた剣城に怒りの声が飛んでくる
「どういうつもりだ剣城」
磯崎は思いきり剣城を睨み付けた
剣城も真っ直ぐ磯崎を見つめ返す 怒りを押さえたまま
「…これがお前達の潰し方か?やりすぎじゃないのか?」
そう言われると、磯崎は手を握りしめ叫んだ
「二度とサッカー出来なくなればいいんだよ!」
「磯崎…」
悲しげに夜桜は磯崎を見ていた やはりアイツの事を引きずって…
すると剣城の中で何かが音を立てて切れた 無言で剣城は近くのボールをすくいあげ、そのまま万能坂のゴールに向かって思いきりシュートする
ホイッスルが鳴り響き、あっさりと同点になる
海音や磯崎、反応が出来なかったGKを始め、誰もが剣城の行動が理解できなかった
剣城がシュートしたのだ
本来仲間のはずの万能坂のゴールへと
『…それで良いんだ 京介』
確かにそう聞こえた気がした
「…お前は俺達を潰すつもりでは無かったのか?」
レインは訊ねる 海音も聞きたかった事でもある
すると剣城は強い眼差しで海音を見た
「ああ潰すさ…こんな腐ったサッカー、俺がぶっ潰す!」
「…イオはもしかして、この事を予想して…」
神童の言葉に、ハッと天馬は剣城を見た イオはこの事まで見越して剣城を試合に出すよう指示を出したのだ
一体…イオとは何者なんだ?
「…そうか、わかったよ」
すると磯崎は不適に笑い肩をすくめた
「じゃあお前も…潰してやるよ、ぐちゃぐちゃにな」