二次創作小説(紙ほか)

第8話 ( No.15 )
日時: 2013/01/20 15:00
名前: 時橋 翔也 (ID: cFLcjEJH)


「…あ!海音!」

サッカー棟の屋内グラウンドに行くと、サッカー部員と久遠、音無
それから入部テストを受けるであろう五人が来ていた その中には天馬も含まれている天馬は海音が来ると駆け寄った
「来ないから心配したんだ…」
「あはは…ごめんね」

「君確か昨日戦ってたよね!窓ガラス壊してたけど」
すると天馬の隣にいる小さな新入生は言った バンダナをつけていて身長はとても小さく、小動物を連想させた
窓ガラス…それは黒歴史だ…
「僕は西園信助!君もサッカー部に入るの?」
「うん、ボクは雪雨海音 よろしく!」
海音は笑顔で言った

すると久遠に呼ばれ、海音達新入生は久遠の前に集まる その背後にはこれからテストをするであろう六人が立っていた
「ではルールを説明する… 制限時間五分の中でお前達のプレーを見させてもらう、その時の動き、テクニック等から合否を決める」
「はいッ!」
入部テストか… 特に緊張はしていないが、不安だ それは信助も同じようだった
「ああ〜!ドキドキしてきた!」
「大丈夫だよ信助!絶対合格しよう!」
天馬は信助の背中を軽く叩いた だが天馬も緊張はしているようで、雰囲気から感じ取れる
軽い話し合いの結果、FWは海音だけ、天馬はMFで信助はDFとなった

「………」
神童は海音を遠目で見ていた
何故だろう…海音と居ると自分を否定されている気がしてならない
……海音だけは入部させたく無かった
新入生とは思えない実力…、もしかしたら剣城と対立しているのは演技で、実は剣城と共にフィフスセクターから送り込まれたシードかもしれない… そんな考えが神童の中に芽生える

二チームはそれぞれのポジションの位置に立つ 久遠は勝ち負けは関係ないと言っていた…けど、勝ちたい
「…では、始め!」
久遠の合図と共に神童からのキックオフ
海音が目の前に立ちはだかると、神童は素早く倉間にバックパスした
だが昨日ほど気迫がない… 本気で戦えば勝つのは分かっていると言うことか

「……ほらよ」
倉間は近くにいた海音と同じチームの新入生にボールをパスした 能力を見るつもりなのだろう、その人は案外ちゃんとボールを受け取った
少しドリブルし、目の前に霧野が立ち塞がると違う新入生にパスした
だが上手く取れず、ボールがこぼれた
「おい!何処に向かって蹴っている!」
「なんだと!」
早速仲間割れだ

海音は仕方なくこぼれたボールを拾い、ゆっくりと駆け上がる このままシュートで得点を決めることも出来るだろう
…けどこれはあくまでテストだ、六人全体の能力が分からないと意味がない
海音は試合ではあり得ないが、DFの信助にパスすることにした
「信助!」
後ろをちらりと見ながら海音はバックパスをする 大きな弧を描き、選手達の上をボールが飛んでいく
「あわわわっ!ま、待ってよ!」
信助はボールを取ろうとするが、ボールが何処に落ちてくるのか予測できずに失敗した
「まだまだこれからさ!頑張ろう!」
海音は周りの皆に聞こえるように言った

ボールは天馬に渡る 試合の時も思ったが、天馬は決してサッカーが上手いとは言い難いもののドリブルがとても卓逸していた
やはり天馬のような選手は中盤のMFが合っているかもしれない
するとそこに浜野が走ってきた
フェイントを駆使し、何とかギリギリながらも天馬は突破した
「へぇ〜…なかなかやるじゃん」
浜野は呟いた

「海音!」
天馬は向こうにいる海音にロングパス 海音は黒の騎士団を一人で打ち負かしただけあり、六人の中ではずば抜けたサッカーセンスを持っている それはサッカー部員の皆が思っていることだった
するとそこに神童が立ちはだかる
「…本気でサッカー部に入るつもりなのか?」
海音は神童の前で足を止めた
「はい!…サッカーしたいんです!この雷門で!」
海音は答えた
神童は海音を睨む

「…雷門に…サッカーなんて無いんだッ!!」

叫び、神童は海音に思いきりタックルを仕掛ける
「くっ…!」
ボールを奪われたものの、バランスを崩すこともなく海音は後ろに下がる 神童がラフプレーギリギリでボールを奪うなど誰も想像出来ない 周りの皆は急に熱くなった神童に視線を向けた
「…やっぱりキャプテンは凄いな…」
海音は神童を見た その笑顔が神童は気にくわない
「でもボクは入部します!サッカーしたいから!」
「……やれるものならな」
神童は冷たくいい放ち、ゴールへと上がり始めた …サッカーしたいならサッカー部に入るべきでは無いのだから

簡単に新入生達を抜いていき、神童はゴールに上がっていく キャプテンなだけあり、かなりサッカーは上手かった
…だが、神童のサッカーは縛られている
まるで奴隷の足枷のように、何か鎖で繋がれているせいで本来の実力が発揮仕切れていない
海音はそう感じていた 天馬もきっと同じ事を思っているだろう
「うわあーっ!!」
雄叫びを上げ、天馬は神童に突進していく
だがかわされ、天馬はバランスを崩して地面に転がった
「……大丈夫?」
海音は倒れてしまった天馬に手を差し伸べる 天馬は海音の手を掴んで立ち上がった
「ありがとう海音…」
「これでもサッカー部に入る気か?」
神童は海音に言った 海音はためらうことなく頷いた
「もちろん!」
「………」
すると突然、神童は海音にボールを渡した
「え?」
海音が声を上げた時だった

神童は足を狙って強烈なスライディングを海音に食らわせた

「うわあっ!!」
海音は背中から倒れそうになるが、足を思いきり上げ、宙返りする形で地面に着々する
霧野は目を見開いた あの体制で宙返りしてバランスを取るなんて… だがそんなことはすぐに考えるのを止め、霧野は神童を見た
「神童!テストだからといって危険なプレーをしてどうする!」
「わかっただろう?…雷門に来てもまともなサッカーなんて何処にもない、ただ虚しさが残るだけだ」
神童は霧野を無視して海音に言った
霧野は神童とは幼馴染みと言っていた…なのに無視するなんてよほどの理由があるのだろう
けど海音はそれよりも、真っ直ぐ、揺るぎない目で神童を見詰めた

「…でも…ボクは… サッカー部に入りたいんです!!」

強く固い意思
それが今の海音からは見てとれる 神童にも分かっていた
海音は神童に向かって走っていく
凄い早さで一気に迫り、神童からボールを奪い返した
「なに…!?」
「ダイヤモンドショット!!」
ここからゴールまではかなり離れていた
しかし海音はためらわず、ダイヤモンドのような威力のシュートを思いきり放つ
GKの三国の拳から炎がほとばしる
「バーニングキャッチ!」
炎の拳をシュートに思いきり地面に打ち付け、海音のシュートをキャッチした
やはり上手くいかないか…

「……そこまで!」

屋内グラウンドに久遠の声が響き渡る
海音達は一気に久遠の方に目を向けた テストが終わったのだ
海音達新入生は久遠の前に集合した すでに合否は決めてあるようで、久遠は持っていたボードの紙を見る
「これから合否を発表する」
心臓が高鳴る 冷や汗が出てくるが、それは天馬も信助も同じだと自分に言い聞かせ、海音は久遠の言葉に耳を傾けた

「…松風、西園……雪雨 以上だ」

名前を呼ばれ、海音は頭が真っ白になった 合格した…?ボクが?
「やったあーッ!!」
すると隣で天馬と信助が声を上げる 天馬は海音の手を握った
「やったんだよ海音!俺達合格したんだ!!」
「…うん!」
海音も頷いた サッカー部に入れるんだ!そう思うと先程の緊張感が嘘のように感じた

「久遠監督!なぜ雪雨が合格してるんですか!?」
海音達が喜んでいるなか、神童は久遠に訊ねる 未だに信じられなかった 海音が合格したなんて…
「雪雨は…もしかしたらシードかもしれないんですよ!?」

「…神童、お前も気づいている筈だ…雪雨が今までとは違う何かを秘めていることに」
久遠は神童を見つめた まるで神童の心の奥底を見透かすような目で
「それを認められず、雪雨を受け入れたくないんだろう?」
「……監督にはわかりません、俺の気持ちなんて…」
神童は目線をそらした

雪雨海音… アイツといると、何でだろう
今まで信じてきたものが壊れていく気がした