二次創作小説(紙ほか)

第59話 ( No.177 )
日時: 2013/05/03 21:35
名前: 時橋 翔也 (ID: 21getbfq)


「…皆、鬼道が話があるらしい」

 海音がやって来ると円堂は皆に告げた。話?メンバー達の中に疑問が沸き起こる。
 鬼道を始め、帝国はフィフスセクターの支配下にあると聞いていたのに、何故…。

「………」
 海音はそんなことなど気にせず、円堂の横に立っている鬼道を見つめた。
 会うのは本当に数年ぶりの筈なのに、全く変わっていない。髪を下ろしている事以外は。

「ここでは話せない…ついてきてくれ」

 鬼道はそう言うとグラウンドを出ていき薄暗い通路を歩いていってしまった。不信感を抱きながらも、雷門メンバーは次々と鬼道や円堂についていった。

「海音、行こうよ」
「あ…うん」

 天馬に手を引かれ、海音も皆についていった。



 * * *



 来るときも歩いた薄暗い通路を、メンバーは鬼道について歩いていく。このままフィフスセクターに連合されないかと不安そうに話すメンバーもいた。

 幸いその心配は無いようだった。鬼道に連れられてやって来たのは、薄暗い通路に目立たないように設置されている扉の前だった。
 扉の前には、佐久間とそれからさっき話していた雅野が立っている。

「雅野!」
「…雪雨、君達雷門イレブンに伝えなくてはいけないことがあるんだ」
 雅野は言った。まだ龍崎の事が気がかりなのか、表情は曇っている。

「実は、俺達はレジスタンスなんだ」

 佐久間が口を開く。レジスタンス?天馬と信助は顔を見合わせた。
 レジスタンスの意味は『抵抗』や『障害』だが、反乱軍のような意味を込めて使われる場合が多い。以前に本で読んだことがあった海音に意味は何となく伝わった。
 つまり鬼道達も、フィフスセクターを倒そうとしているのか。

「じゃあ…帝国がフィフスセクターの支配下と言うのは…」
「ああ、やつらを深く探るための芝居に過ぎない」
 鬼道は円堂に言った。その言葉を聞いて円堂と音無は安心した表情になる。
 やはり鬼道は鬼道のままだった。
 サッカーを愛する心は変わってない。

「…アールみたいなものか」
 神童はふと呟く。確かにその通りかもしれないと、海音は神童を見た。

「この試合は、帝国に紛れ込んだシードを見つける為でもあったんだ」
 すると佐久間は言った
「すべては反乱軍としての帝国サッカー部を作り上げるためだ…まぁフィフスセクターが準決勝の組合わせを変えたのは偶然だがな」
 鬼道は続けて言った。
 
 雷門は本気のサッカーをしている。そのためフィフスセクターでない帝国の者は、管理サッカーではないサッカーを久しぶりに楽しんだはず。だがシードは雷門を潰す指示を受けているから余裕のない動きになる。
 そこを利用して、鬼道はシードを見抜き、帝国から追放するつもりなのだ。

「………」
 すると、雅野が辛そうに俯いたのが見えた。龍崎の事だろうと海音には一瞬で分かった。
「…そんな狙いが…」
 天馬は呟いた。夜桜からアールについて話を聞いたときのように驚いている。


「…これから会ってもらうのは、レジスタンスの中心人物だ…俺達はこの人と共に革命を起こそうとしている」
 佐久間は言った。中心人物?誰なのか検討もつかないまま、メンバー達は重たい扉の中へと足を踏み入れた。

 中はまるで秘密基地を具現化したような部屋で、様々な機械やら大きな丸テーブルやらが設置されている。
 どうやらレジスタンスの作戦本部的な場所らしい、よく見ると壁には防音機能がついているようで、話し声が外に漏れるのを防いでいた。

 だがそんなことなど、誰一人として微塵も意識しなかった。この部屋で待ち構えていた人物が、とても意外な人物だったからだ。

 「久遠監督!!」

 海音はその名を呼んだ。栄都戦、自分のせいで監督を解任されてしまった久遠は、あの日以来姿を見せていなかった。
 だが今その久遠は、腕を組みながらこちらを見ている。
「…頑張ってるな、雷門の力を見せてもらった」
 久遠は言った。相変わらず物々しい雰囲気を漂わせていた。

 思わぬ再会に、話したいことが山程出てくるが、今はそんな暇はないだろう。
「もしかして久遠監督がレジスタンスの中心人物ですか?」
 天馬は訪ねる。確かに久遠が佐久間の言うレジスタンスの中心人物ならば理解できる。

 だが、久遠は静かに首を横に振った。
「いや、私ではない…」
 え?と言う声がメンバーの中から聞こえてくる。じゃあ一体誰が———?

 そう思っていると、部屋に設置されたドアから三人の人物が出てきた。
 三人ともかなり年配のようだった。だが海音はこの三人に見覚えがある。…この人たち写真で…。

「久しぶりだな、円堂」
「響木さん!」
 恐らく三人の中で最年長であろう、赤い帽子に白いスーツの老人を見て円堂は声をあげる。
 他にも二人を見た。
「それに…火来校長に雷門理事長まで…」

 十年前の校長と理事長、それに監督を前に雷門メンバーも驚きを隠せなかった。恐らくは響木が中心人物だと言うのはこの場の皆が察している事だろう。

「すまないな、…帝国からシードをあぶり出すまでうかつに動けなかった…革命を起こすためにな」
 雷門は言った。革命?確かに反乱と革命はセットのようなものだが、どうやって革命を起こすのか雷門メンバー達にはさっぱりわからない。
「…革命って?」
 海音は思いきって訪ねてみる。

第59話 ( No.178 )
日時: 2013/05/03 21:57
名前: 時橋 翔也 (ID: oMcZVhE7)


「我々はフィフスセクターの聖帝イシドシュウジから聖帝の座を奪い取る」
「え?!」
 火来の言葉に、雷門の皆は声を上げる。
「そうすれば以前のようなサッカーを取り戻せる…ホーリーロードの全国大会は聖帝の選挙でもあるからな」
 雷門は続けて言った。

 全国大会からは試合の勝ち点を投票し、次の聖帝を選挙できるようになっている。
 今までは現聖帝のイシド以外に立候補する者も居なかったので、フィフスセクター始まって以来初めてのまともな選挙だと言えるだろう。

 つまりレジスタンスは響木を次の聖帝にし、フィフスセクターおよび管理サッカーを無くすことで革命を起こそうとしているのだ。サッカーの革命を。

「響木さんを聖帝にするには、勝ち続け味方を増やすしかない…我々に敗北は許されない」
 久遠は言った。例え負けてしまい大会から姿を消した学校でも、一票だけ投票出来るようになっている。
 万能坂には夜桜がいるからきっと味方をしてくれるだろうし、天河原には神童の知り合いの喜多がいるから天河原も大丈夫だろう。

「革命は君たちの手に掛かっている…頑張ってくれ」
「はい!」

 難しい事はよくわからない。
 でも皆は…サッカーが大好きなんだ。

 心の底からそう感じた瞬間だった。



 * * *



 次の試合についての話やこれからのレジスタンス活動について円堂達が話をしている間、周りでは次の試合についての話で盛り上がっていた。天馬や信助等は楽しみらしく、楽しそうに会話が弾んでいた。

 海音はそんな様子を一人、皆から離れて見ていた。すると海音はあることを思い出し、振り向かず後ろへ言った。


 「そうだ…君にもお礼を言わないとね。そこに居るんでしょ?—一—ランスロット」


 後ろに気配を感じた。振り返る先には剣城の化身『剣聖ランスロット』が立っているのが見えた。
 剣城が形成するときよりも細身で、ちゃんと足もあるがランスロットだと一目でわかった。

『…気づいていたか』

 ランスロットは言った。いつの間にか暗い真っ青な海のようなところに立っていて、そこには海音とランスロット以外何もない。

「ありがとうランスロット。…君のおかげで剣城は…」
『礼には及ばない。私は私の主に尽くしただけ…。言うなら…』
 そう言うとランスロットは、角が生えたような銀色のかぶとを脱いだ。予想もしていなかったランスロットの素顔が露になる。

 真っ黒な瞳と髪を持った端正な顔立ちの青年だった。髪は短く所々はねている。
『私の方が礼を言いたい。…我が主を救ってくれたこと、心より感謝する』
「ランスロット…」
 海音は呟いた。化身とはこれほどに礼儀正しいのか、と少し思った。レインは別だが。

     —一—海音は、どうして人が化身を持つようになるのかわかる?

 途端に海音はシュウの言葉を思い出す。人が化身を持つのは強くなりたいと願うから…そう思っていたが、それは二番目だとシュウは言っていた。
 …化身を持つ為の絶対条件。一体それが何なのか、海音には検討もつかなかった。

 すると海音は以前ランスロットにした事を思い出し、ランスロットを申し訳なさそうに見つめた。
「ランスロット、万能坂の時はごめんね…化身封じ」
『ああ、あれか…。気にするな、主があれ以上間違いを犯すならば出てくる気は無かったのだからな』
 ランスロットは笑顔になる。その笑顔を見て、海音は少しだけ安心した。

『…海音、これからも主をよろしく頼む』
「わかったよ、任せてランスロット!」

 右手の拳を合わせ合うと、いつの間にか海音はレジスタンス本部に戻っていた。

 海音は剣城を見てみる。天馬や神童と話をしているが、どこか気まずそうに見える。ランスロットが言いたかったのはこの事だろうか。

「…久しいな、海音」

 突然そんな声がした。鬼道がいつの間にか海音に近づいていた。
「鬼道さん…。覚えてたんだ」
「サッカーを教えたのに、忘れるわけないだろう?」
 鬼道は言った。サッカー仲間を大切にするのは昔から変わらない。

 それとは対照的に、海音は向こうで話している円堂を悲しげに見つめた。
「…でも、監督は…」
「…やはり記憶は戻らないのか」
 沈んだ声で鬼道はそう言う。円堂の昔の出来事をよく知るからこそ言えるのだった。

「けど、監督がボクを忘れたのはボクのせいだから…」
「………」
 俯いた海音に鬼道は何も言えなかった。変わりに鬼道は別のことを海音に言ってみる。

「海音…(-_-)」
「何ですか?(・_・?)」
「髪、切ったな(¬_¬)」
「遅ッ!?( ; ゜Д゜)」