二次創作小説(紙ほか)
- 第67話 ( No.205 )
- 日時: 2013/06/26 20:58
- 名前: 時橋 翔也 (ID: EggErFJR)
大急ぎで倉間を加えた五人は階段を高速で降りていく。フィフスセクターが来た?今更一体何のために…?
海音はそんな疑問を胸に、玄関がある一階まで来ると全速力で走り出した。足には自信がある剣城や倉間を簡単に追い越して。
「はやっ!?」
後輩に簡単に抜かれたことにショックを受けながら神童は言った。
玄関を飛び出し、第二グラウンドへ走っていく海音は次第に今の第二グラウンドの現状が見えてきた。
「あれは…」
海音は声を上げた。
第二グラウンドにはジャージを着た五人以外のサッカー部員が集まり、対するように見慣れぬユニフォームを着たチームがサッカー部員達の前に立っていた。赤いラインと腰巻きのようなものが特徴的だ。
「海音…!」
隣に海音が走ってくると天馬は言った。それに遅れて後の四人もやって来る。
神童は円堂とチームを交互に見た。
「円堂監督!これは?」
「…海王学園だ」
苦々しげに円堂はチームの方を見た。海王学園はシードで構成されたチームだ、恐らくフィフスセクターが送り込んだのだろう。
すると続いて剣城も向こうを向いた。海王学園がやって来た理由は大体見当がつく。
「…やはり来たか…」
「よお、また会ったな」
海王学園の中から見慣れた少年が出てくる。海音と速水、それから浜野が表情を変えた。
「…湾田さん…」
「え、海音知り合い?」
驚いて天馬は声を上げ海音を見た。
すると倉間がトゲを剥き出しにして叫ぶ。
「俺らはお前らなんかと会ったことなんてねぇよ!!」
「違う違う、浜野達に言ってんの」
湾田はさらりとそう言い、浜野、速水、海音が並んだ方を指差した。部員達は驚愕の顔で三人を見た。湾田は気にせず続けた。
「もう一回浜野を海王学園に連れ戻そうとしたけどダメでさ〜、変わりに雪雨ちゃん入れようとしても失敗したし」
「湾田ッ!!」
思わず浜野は叫んだ。だがその時にはもう遅かった。
信じられないという目で、部員達は三人を見ていた。
「え…浜野どういうこと…なんだ?」
「………」
倉間の問いに浜野は何も言えなかった。すると別の少年が前に出てきた。
黒髪だが前髪の一部が赤く、中性的な容姿だった。
「俺達が来たのは、剣城に用があるからさ」
少年が言うと、続いて部員達は剣城の方を見た。剣城は分かりきっていると言いたげな顔だ。
「ファーストランクの剣城、殺されたくなければ大人し痛ッ!!」
少年の言葉は後ろにいた少年が少年の頭をはたいた事で強制終了した。その少年を見て海音と天馬は更に表情を変える。
「殺すって…いつから俺達悪役になったんだよ!」
「元々悪役じゃないですかキャプテン!」
「ホラを吹きすぎだ!てかまだ連れてくと決まった訳じゃねぇ!」
「いや、そっちの方が雰囲気が…」
「ダマレ!アニメオタク!」
「………」
先程のシリアスな雰囲気はどこかへ消え去り、あまりのアホさ加減に部員一同は沈黙するしかなかった。
そんな中、天馬はちらりと海音を見る。
「海音…、浪川さんいるよ…」
まさに今怒濤のツッコミを放った少年だ。さらに浪川の左腕につけられたものを見て青ざめる。
「か、海音…浪川さんキャプテンだったの?」
「…………うん」
海音は呆れながら頷く。さらに天馬は青ざめていく、別の意味で。
その様子を見ていた湾田は面白そうに天馬の方を向いた。
「あ、そこの天パくん、もしかして君?うちのキャプテンにコーラぶちまけ痛い痛い!!」
湾田が言い終わる前に、浪川が湾田の横腹を思いきり蹴り飛ばした。さらにさらに天馬は青ざめていく。
あちゃ〜…と海音は周りを見た。部員達の呆れ返り冷めきった目が天馬に集中する。
「天馬…」
「え、コーラぶちまけたって…キャプテンに?敵チームに??」
「宣戦布告…?」
茜の一言が決定打だった。神童の雰囲気がみるみる黒いものに変わっていく。
「天馬…お前という奴は…」
「((((;゜Д゜)))」
天馬は恐怖のあまりフリーズした。
「………」
すると浪川は浜野を見つめた。悲しげに。
「久しぶりだな、カイジ」
「…レン…」
浜野も悲しそうに応えた。二人は知り合いか?海音は思った。
「…単刀直入に言う!俺達海王学園は聖帝の命により剣城京介を連行に来た!!」
浪川の言葉により、周りの雰囲気が変わった。部員達は本能的に身構える。
「裏切り者には処罰を、イシド様の言葉だ」
「剣城どういう…?」
「…フィフスセクターは裏切り者を許さない。そして連行されるとしたら…」
真剣な表情で剣城は海音に言う。そして海音はとある施設の名前を思い出す。
「…エンドレス・プリズン…」
「正式名は『管理組織フィフスセクター直属第三少年院再教育所』って言うんだ、怖いよな〜」
湾田は気楽そうに言った。内容はだいぶ危険だと思うが。すると浪川に叩かれた少年は湾田を見る。
「…再教育ってなんだ?」
「…お前はもう黙れ…」
呆れ、頭を押さえながら浪川は言った。
そして向き直り、剣城を見た。怒りと悲しみが混じったような目で。
「…お前は例え雷門に寝返らなくても、エンドレス・プリズンに行く要素はあるんだがな…、まあいい、これからお前らには五対五のサッカーバトルをしてもらう」
浪川は言った。サッカーバトル?周りの部員達は顔を見合せ始める。
「サッカーバトルで、俺達が勝てば剣城をエンドレス・プリズンへ連れていく。てめぇらが勝てば大人しく退散してやる」
『…随分人がいいんだな』
レインは言った。確かに…と海音も思っていた。フィフスセクターなら、無理矢理にでも連れていきそうなのに…。
「その必要はない」
すると剣城は声を上げ、前へ進み出ていく。
「…俺は雷門に寝返ると決めた時から覚悟はしていた。これは俺のけじめでもあるんだ、再教育でも何なりと受けてやる」
雷門や海王から驚きの声が上がり始める。まさかこんなことを言うとは、誰もが予想していなかったのだろう。
だが剣城が海王学園の方へ行こうとしたとき、海音は剣城の腕をがしっと掴んだ。
驚いて剣城は海音を振り返る。
「海音…!?」
「ダメだよ剣城!せっかく楽しくサッカー出来るのに!」
海音は剣城に必死に訴える。だが剣城はそれでも海音の手を振りほどこうとした。
「これはけじめなんだ!お前らには関係ない!俺自身の問題だ!!」
「違う!!」
必死になって海音は叫んだ。自分の思いをぶつけるように。
「君だけ犠牲になればそれでいいと思ってるの!?そんなの自己満足だよ!!」
「そうだよ剣城!俺達は仲間を見捨てない!」
続いて天馬も海音をフォローするように言った。剣城の表情が変わる、焦っているようだ。
「…お前らはフィフスの恐ろしさを知らないからそんなことが言えるんだ!」
剣城は叫んだ。悲しみが混じったような顔をして。どうやら剣城は守られる気は無いようで、海音は少し考え呼吸を整える。
「ごめんね」
そう言うと、海音は一度剣城から手を離し人がいない方へ思いきり蹴飛ばした。
「がっ…!!」
そこまでダメージを与える場所を蹴りつけた訳では無いので、恐らくこちらへ移動させるのが目的だろう。
剣城はそんなことを考えながら地面に叩きつけられ素早く立ち上がる。だが、もう遅かった。
冷気を感じた瞬間、剣城の周りに柵が造り出され、それは瞬く間に巨大な鳥籠のようになり、中にいた剣城を幽閉した。
「なっ…!?」
剣城は急いで両手で二本の柵を掴む。氷で出来ていながら触れても全く溶けず、細いのに頑丈だった。
海音はこちらを見ながら右手をこちらへ向け、血のような赤い目をしている。『力』を使ったのだ。
「…バトルが終わるまで、そこで大人しくしてろ」
冷たい目をしながら海音は言った。
その様子を見ていた海王学園の方からざわめきが沸き起こる。当たり前だ、目の前で『力』を使ったのだから。
「へ〜、君が能力者って本当だったんだ」
湾田は言った。どうやらフィフスセクターの方からあらかじめ聞いていたらしい。
「時間をやる、…五人を決めな」
腕を組みながら浪川は言った。海王の方はもう決めてあるようだ。
神童は部員達を見渡し、数秒を要したのちチームをすぐに決めた。
「じゃあ…天馬、海音、霧野、俺、三国先輩だ」
呼ばれた四人は顔を見合せ頷いた。
サッカーバトルだが、剣城を懸けた戦いでもある。負けるわけにはいかない。氷の鳥籠に閉じ込めた剣城を見ながら海音は思った。
「ルールは簡単。先に点を取ったら勝ち。…野郎共!いくぞ!」
浪川の号令で、残りの四人が前に出てくる。その中の湾田は海音の方ばかり見ていた。
「能力者か〜…やっぱり君海王に痛っ!」
すかさず浪川の蹴りが入り湾田は言い切れなかった。海王って楽しいのかな?様子を見ていた海音はそんなことを考える。
「悪い、湾田は無視しろ…それから」
「なんだ?」
「このグラウンド、使っていいか?あとボールも」
「今頃かよ!!」