二次創作小説(紙ほか)

第70話 ( No.216 )
日時: 2013/07/17 22:05
名前: 時橋 翔也 (ID: EggErFJR)


 決勝戦は以前に開会式をしたホーリーロードスタジアムで行われるため、雷門サッカー部はキャラバンで移動していた。
「………」
 この試合の結果で、全国に行けるかが決まる。革命を終わらせない為にも、負けることは許されない。

『…結局、天馬は化身を出せなかったな』

 するとレインは言った。うん…と海音は頷く。
「でもきっと、天馬なら試合の中で出せると思うよ」
 サッカー部に入ったときから、天馬には限りない可能性があると海音は思っていた。自分とは違った可能性を。
「…ボクは、レインが居ないと何もできない。『力』も使えないし、幽体離脱も多分出来ない。ゴッド・アイだって、元々ボクの力じゃない」
『技をコピー出来るだろう』
 レインは指摘する。

 技をコピー、これは普通の人から見れば神のような力なのかもしれない。
 だが海音はこれが好きじゃないし、短所もある。
「…コピーして使っても、威力や完成度は本人には到底及ばない。このまえ剣城のデスソード使ってみたけど、ダイヤモンドショットの方がずっと威力あったよ」
 唯一、完璧に取得出来たのはエターナルブリザードのみだった。技との相性も良かったし、この技を気に入っていたのが理由だ。

 あと…と海音は付け足した。
「ボクは…コピーはあまり好きじゃない」
『…何故?』
「だってコピーしても、それはただ他の人の真似をしてるだけ。サッカーって努力して手に入れた自分自身の技で戦った方が楽しいから」
 海音は答えた。償いの為にしているはずのサッカーだが、楽しめているようだとレインは安心する。

「幽体離脱はわかるけど…何でゴッド・アイはリンク無しで出来るのかな?」
『…ゴッド・アイは本来サッカーの為の能力ではないからじゃないか?』
「え?じゃあ一体…?」
 海音が訪ねるも、レインはまた話すのを止めてしまった。いつもの『拒否権』とでも言うべきものかもしれない。はあ…と海音はため息をついた。

 長年一緒にいるレインだが、実際まだレインについて詳しくない。今までレインは自分を『化身』と名乗るだけでそれ以外は話してくれなかったのだ。
 しかしレインはある意味姉のような感じなので、特に問いただしたりはしない。昔親しかった姉のような少女の面影を、何となく映しているのかもと海音は思った。



 * * *



 ホーリーロードスタジアムに着くと、遠くからでも歓声がよく聞こえ、ギャラリーは満員のようだった。
 すでにユニフォームを来ていた雷門はベンチに集まり、試合が始まるまで話をしていたりした。向こうのベンチには海王学園も見える。

「…レン」
 浜野は向こうにいる親友を見つめて呟いた。必ず、思いを伝えないと。


 海王のベンチで一人、喜峰は携帯をいじっていた。青い携帯で、タッチパネルを巧みに操作していく。
「喜峰…何してんだ?」
 するとその事に気付いた浪川が喜峰に近づいてくる。喜峰は顔を見上げた。
「まあちょっと…ね?」
「…またアニメか」
「あたりです♪」
 このあと試合前なのに何してんだと浪川に蹴り飛ばされたのは言うまでもなく。


 相手は全員シードだ。今まで以上の強敵となるだろう。円堂は周りにメンバーを集めて真剣な顔つきでそう話した。
「だが、お前たちなら勝てる。…サッカーを取り戻す為にも、革命カゼを起こすぞ!」
「はい!!」
 メンバー達の返事がハモる。海音と天馬は顔を見合わせた。
「頑張ろうね天馬!」
「もちろん!」

 だが一体、最後のアールは誰なのだろうか。海音はそう思いながら海王学園の方に目を向けた、その時だった。
 ユニフォームのポケットに入れっぱなしだった携帯が振動した。メール?そう思い海音は携帯を取りだし開いて見てみる。
 メールだったが、差出人は以外な人物だった。

「…喜…峰?」
 確か海王の人だったな、と海音は思った。だが何故メールを?なんで自分のメアドを知っている?
 内容を見たとたんに、それは明らかとなった。

『最後のアールとして責務は果す。
 化身を完成させろ』

 喜峰がアール?だが疑う理由はないし、それなら夜桜からメアドを聞いた可能性がある。つじつまは合っていた。
「………」
 でも、そうしたらあの人は…———。

 悲しくなるが、海音は堪えた。必ず、助けるから…。
 化身と言うのは天馬の事だろう。そう考え海音は天馬を見つめた。
「天馬」
「どうしたの?」
 天馬は何も知らず尋ねる。どう説明したらいいか初めは戸惑ったが、海音は取り合えず事実を伝えることにした。



 * * *



「…サッカーに革命カゼが吹き始めた」


 森の中、一人で樹の近くのお地蔵様の隣に座り、空を見上げながらシュウは呟いた。
 すると小鳥がお地蔵様の上に止まり、シュウを見つめ話しかけるように鳴いていた。
「うん、…ちょっと友達の事を思い浮かべてた。女の子なんだけど、頑張りやでサッカーが上手いんだよ」
 小鳥と会話するようにシュウは言った。それに反応したのか、嬉しそうに小鳥も鳴いた。
 まるで言葉が通じているように。

 だが途端に、シュウの表情が険しくなった。どこか暗く、悲しげな目をしながら。


「……でも、サッカーは自由だとか管理だとか関係ない。


  ———サッカーは、強くないと意味が無いんだから」