二次創作小説(紙ほか)
- 第10話 ( No.22 )
- 日時: 2013/01/22 19:35
- 名前: 時橋 翔也 (ID: Y4EbjjKp)
海音の予想していた通り、雷門での特訓は厳しいものだった
ランニンググラウンド二週、スクワット三十回、ダッシュ五十本など、ハードな物が多い
「シュート…最後!」
海音がシュートをしたのと同時に課せられたメニューが終了した
すでに五時を過ぎていて、外は薄暗かった
「疲れた〜!」
天馬と信助は同時に地面に寝転がって空を見上げる 月がうっすらと見えた
「お疲れ… ミーティングあるからミーティング室に行こうよ」
練習メニューを持っていた葵は言った
海音は二人に手を差し出す
「これからはこんな練習が続くと思う…頑張ろうね」
「うん、そうだね」
二人は海音の手を握った 海音はそのまま後ろに倒れこむ勢いで二人を引っ張り立たせる
「…さあ、行こっか」
葵に言われ、三人も共にサッカー棟に向かった
——————
「……二日後に、栄都学園との練習試合が決まった」
四人が来る前、二三年のみでミーティングが先に行われていた 部員達は席に座り、久遠と音無は前に出てきて話している
練習試合ならば普通は喜ばしい事であったが、部員達は違った
久遠は封筒を取りだし、中から紙を取り出した 3対0と記載されている
「3対0で…雷門の敗北だ」
久遠は言った 相変わらず無表情に
「栄都学園…?あんな弱小チームに負けるのか」
苛立たしげに三年の車田は言った
「栄都学園のやつらは内申点目当てでサッカーするやつらばかりだド!」
同じ三年の天城も声を上げる
この時代、サッカーをしているか否かで内申点が大きく左右される 退部した者や入部しようとしていた者の中にも内申点目当てでサッカーしていた人は少なからずいたのだ
「…フィフスセクターからの指示だ、仕方ない」
神童は言った 逆らえばどうなるのかわからないのだ 従うしかない
「もうすぐホーリーロードが始まる…それぞれ体調管理をきちんとするように… 以上、解散だ」
久遠が言うと、重い空気は変わらないが部員達は立ち上がって話を始めたり部室に向かって帰っていく者もいる
「…あれ、ミーティング終わったんですか?」
そこに一年生がやって来る 三国は四人を見た
「二日後に栄都学園と練習試合が行われる事になった…それだけだ」
「栄都学園…」
天馬は呟く
「確か最近サッカーで勝ち進んでいて評判が上がっている学校だよ」
信助は詳しいのか説明する と言うことはそれなりに実力はあるのか…
「試合か…頑張ろうね」
何も知らない海音は言った 天馬と信助も頷いた
「気楽でいいよな…何も知らない一年生は」
倉間は小さく皆が思っていることを呟いた
——————
皆は制服に着替え、次々と部室から出ていく 信助も先に帰ってしまった 用事があるらしい
「…そうだ天馬、一緒に病院行かない?」
海音はジャージに着替えると言った
天馬は海音を見る
「え、病院?」
「ボクの兄が入院してるんだ」
海音は説明する 天馬はなるほどと理解した
「うん行くよ!海音のお兄さんに会ってみたい」
「じゃあ…帰りにいこうか」
海音は言った
——————
病院に来るのは久しぶりだった
雷門に入学してから色々と忙しかったので、病院にいく暇があまり無かった
病院は商店街を抜けた先にあり、今日もたくさんの人が行き交っていた
二人は病院の中にはいる 保健室と似たような薬品の匂いがした
「なんか久しぶりだな病院…」
天馬は呟いた
「天馬も病院に行くの?」
「昔怪我して診てもらったのが最後だったな」
天馬にもそんなことあったんだ…海音は思った
二階に上がり、少し歩くと二人は一つの病室の前で止まる 表札には『雪雨 直矢』と書いてあった
「直矢、来たよ」
海音はドアを開けた 中にはベッドと椅子、TVがある
「海音…久しぶりだな」
ベッドの上には一人の少年が座っていた
年は海音と天馬よりも少し上に見える 病弱なのか肌は白く、長めの銀髪をポニーテールにしていて右は黒、左は赤のオッドアイ 男子とは思えないほど華奢だが、かなり端正な顔立ちをしていた
天馬は直矢と呼ばれた少年を見た
「こんにちは!海音の友達の松風天馬です!」
「始めまして、俺は雪雨直矢…君が天馬くんか」
直矢は言った かなり温厚な性格のようだ
「海音が前に話していたんだ、サッカーが大好きな友達ってね」
「直矢…!」
少し海音は赤くなる 天馬は苦笑した
二人は直矢のベッドの前の椅子に座る
海音はバッグから雑誌を取り出した
「はいこれ…世界特集号」
「本当か?!」
直矢は海音から受けとるとすぐさま雑誌を読み始めた
天馬は気になる事を尋ねた
「直矢さんも…サッカーしますか?」
「サッカー?…いや、俺はバスケなんだ」
直矢は答える よく見ると読んでいるのはバスケの雑誌だった
「TVではサッカーばかりであまりバスケとか無いからな…こういった雑誌が俺にとって唯一の救いなんだ」
「バスケ…」
天馬は呟いた この時代、スポーツといえばサッカーなので、あまりバスケなどはTVでは放送されなくなってきていた
「サッカーは好きですか?」
「まあな…あまりしたことないけど」
直矢は言った
天馬は海音を見た
「海音もバスケするの?」
「うん、するよ…雷門でサッカー部に入れなかったらバスケ部入ろうって思ってたし」
海音は言った
サッカー一筋の天馬にとって、バスケのようなスポーツは全く別次元のものに思えた
それはきっとサッカー少年の誰もが思っているに違いない
「…そろそろ行こうよ海音」
「そうだね、じゃあ行くよ直矢」
海音と天馬は立ち上がる
「また来てくれよ」
「もちろんさ!」
直矢と海音はそんな言葉を交わし、二人は病室をあとにした