二次創作小説(紙ほか)

第13話 ( No.32 )
日時: 2013/01/25 07:22
名前: 時橋 翔也 (ID: Y4EbjjKp)


すると前半戦が終了した 二チームはそれぞれベンチに戻っていく
雷門のベンチに行くと、補欠の信助に久遠、ドリンクを用意していた音無がいた
「みんなおつかれ、ドリンクよ」
音無は選手たちにドリンクを渡していく

だが海音は全く目もくれず、神童に詰め寄った
「キャプテン!どうして本気で戦わないんですか!?」
海音が言うと、視線が一気に海音に集まる
するとそこに天馬も来た
「俺も同感です…どうしてですか!!」
天馬も海音と同じ思いだった せっかくの試合なのに…

「負けてもいいんですか!?」
「元々負ける試合なんだよ!!」
倉間は海音に言った
海音にはその意味がよく理解出来なかった 負ける…試合?
「新入生にはまだ言って無かったが、この試合はフィフスセクターからの指示で3対0で負けると決まっていたんだ」
三国は説明した 周りの雰囲気を見ると本当なのだろう

「フィフスセクターってなんなんですか?」
天馬は訪ねた 本気で戦わない先輩たちへの怒りを噛み締めながら
「十年前、イナズマジャパンが世界一になったことで、サッカーの人気が上がり始めたの」
音無は説明を始めた
「でも 上がりすぎたせいで、サッカーの強さが社会的な地位まで決めるようになった サッカーが強いと栄え、弱いと生徒が集まらず潰れる…その事態を改善するために創られたのが管理組織フィフスセクターよ」
「フィフスセクターはサッカーの全てを管理している…学校が潰れないように勝ちを公平に回すため、勝敗指示を各学校に送るんだ」
久遠監督も言った
「…でも、その事を知っているのはサッカーに携わる一部の人だけ、…コレが今のサッカー界の現状よ」
音無は言った
「円堂さんや兄さんがやってきたサッカーは…一体どこに行ったんでしょう」
「…そしてフィフスセクターの専属強化選手…監視役がシードと呼ばれる選手、雷門では剣城だ」
三国は言った 剣城も…フィフスセクター…

海音は天馬を見た 恐らく同じ気持ちだろう
「なんだよそれ…」
天馬は呟いた 海音も言った
「戦う前から勝負が決まってる…?…そんなのサッカーじゃない!!」

「お前に何がわかるッ!!!」

神童は声を上げた 海音に向かって続ける
「一体俺達がどんな思いでシュートを決められているのか…どんな思いで試合しているのか、お前にわかるのかッ!!」
それは雷門イレブン全員が思っている事でもある それを神童はぶつけずにはいられなかった 何も知らない新入生へと

「サッカーが泣いてるよ!!」
天馬もまるでサッカーを友達のようにして叫んだ 心の奥底から

「…俺達だって、本当は本気でサッカーしたい…でもフィフスセクターに逆らえば、サッカー自体が出来なくなる」
三国は言った それほどまでにフィフスセクターの存在は大きい
「でも、たまには指示が出ていない試合もある…その時は思いきりサッカーできる、だから俺達は…」
酷く悲しげに霧野は言った

「せっかく試合出来るのに…」
海音は呟いた
「俺、知らなかった…今サッカーはそんなことになっていたなんて」
天馬は言った ショックは二人とも同じだった
でも…

「勝てるのに負けるなんて…絶対嫌だ」

「…海音、俺も協力する…負けるなんて嫌だから」
「ありがとう…」
海音は天馬に言った

後半戦が始まる キックオフは南沢からだ
雪雨にボールを渡すわけにはいかない…そう思い倉間にパスを出した その時
「すいません先輩!」
海音は二人の間に割り込み、パスカットしてボールを奪った 味方同士ならあり得ないプレーだ
「な…」

まずは先輩達の考えを変えないと…
「キャプテン!!」
海音はゴールの近くの神童にパスをした
「………」
だが神童はパスをミスしてこぼれたボールを奪われる
わざとミスした…海音にはわかった
「行かせない!!」
天馬はスライディングをかけてボールを奪う 海音は…キャプテンにシュートさせる気だ
俺だって…
「おい!いい加減シュート入れさせろ!」
そう言いながら栄都の一人が走ってくる
もとからそんなことさせるつもりなど無かった
「…そよかぜステップ!」
天馬の周りに優しい風が吹き、栄都をかわした
「天馬…」
あれは…ドリブル技か、海音は思った

「キャプテン!」
今度は天馬が神童にパスを出す
「……くっ」
それでも神童は受け取らない
「いい加減にしろ!」
倉間は叫ぶ
「神童は…シュートする気なんて無いんだ!」

「キャプテン!」
倉間を無視して、海音は神童にパスをした
「…くっそおお!!」
神童にボールが届いた

そして神童はそのままシュートした

「あ……」
一点入るとスコアボードに本来0でなければ行けないところに無情にも1が刻まれた
神童はそのスコアボードをただただ見ていた
「神童…お前…」
三国は呟いた
周りの選手は仰天していた だがさらに驚くのは次だった

試合再開 南沢からのキックオフでボールは海音へ
海音は立ち止まり、栄都に囲まれる だが微動だにせず、海音は目を閉じた

使ってやるよ…本気で戦わない皆に見せつけないと

「雪雨こっちだ!」
倉間が向こうで叫ぶ だが海音は無視した
すると海音の背後から化身のオーラが出てくる
「…これがボクの…俺の化身だ」
目を開き、赤いつり目となった次の瞬間

海音の背後に化身が出現した
蒼いツインテールに独眼の女性剣士だ

「氷界の覇者レイン!!」

「なんだと!?」
もうチームなど関係なく、誰もが海音とその化身を驚愕の表情で見つめていた
すると天馬は海音がいつもと違うことに気づく 瞳は赤く、穏やかな性格からは想像も出来ないくらい冷酷な雰囲気へと変わり果てていた
「…俺とお前の力を持って、サッカーを名声を獲るだけの道具へと成り下げた者共に制裁を加えようじゃないか…レイン」
海音は言った いつもと明らかに違う口調で
そして不適に笑った


「………さあ、血祭り(パーティー)の始まりだ」