二次創作小説(紙ほか)

第16話 ( No.48 )
日時: 2013/02/04 15:51
名前: 時橋 翔也 (ID: LCLSAOTe)
プロフ: パソコン版復活!!\^o^/


「…来たか」
最後に海音と剣城が来るのを見て円堂は呟いた
海音と天馬、信助は円堂の前にやって来た
周りでは影で他のサッカー部員達がこちらを見ている 練習する気は無いらしい 今のところは
剣城も海音に言われた言葉を噛み締めながら少し離れたところで見ていた さすがに他のサッカー部員達と同じ輪には入れない

「天馬と信助と…海音だっけ」

円堂は目の前に並んだ三人の名前を呼んでみる 記憶力はある方ではないが、仲間の名前は忘れない
はい、と天馬は元気よく頷いた
「…あれ?」
すると円堂は海音をじっと見た 海音は平然とする
「海音って…どこかで会わなかったか?」
「………」
少し考え、海音は

「いいえ」
と首を横に振った
「初対面です…」
「そうか?」
まあいいや、と円堂は三人を見た
「よし特訓だ!天馬はドリブル練、信助はヘディング練、海音はシュート練だ!」
「はい!」
円堂に指示され、三人は散らばってそれぞれ特訓を始めた

海音は円堂とゴール前にやって来る
「栄都戦見てたぜ…お前化身使えるんだな」
円堂は海音を見た 海音は悲しそうに視線をそらす
「…あまり使わないんですが、あの時はわざと試合に負けるのが嫌で…」
「それでこそサッカープレイヤーだ!」
円堂は海音の背中をぽんと叩いた


部活をサボってから数日が経つ

神童は家に帰ってもすることもなくただ歩いていた 珍しく髪を縛り、白をモチーフにした気品のある服を着ている

…なぜ俺はシュートしてしまったのだろう

シュートしたらサッカー出来なくなるのは分かりきっていたはずだ なのに…
海音と天馬を見ると、サッカーと向き合えと迫られている気がしてならない 何度もパスをされ、気がついたら身体が勝手にシュートしてしまっていた

そして栄都戦、海音は化身を出した

恐らく隠していたつもりは無いのだろう ただ化身を使った時の海音の変わりようは異常に見えた 同じ人物の筈なのに全くの別人になったような…
いわゆるあれが俗に言う『多重人格』なのだろうか

考えればよけいにわからなくなっていく
そもそも海音は何者なのか、素性も一切わからない 化身を使いサッカーセンスがずば抜けた新入生…ただ者ではないのだろうが栄都戦を見る限りシードではなさそうだ

まさか、どこかから送り込まれてきたスパイ…?

「…考えすぎだな、新入生相手に」

自分でもおかしくなり、神童は苦笑しながら呟いた
確かに神童は勘が鋭く、物事を的確に判断する能力を備えているが、余りにも考えすぎだと珍しく思った
雷門にスパイ?何故そんなことをする必要があるのか… 考えたら馬鹿馬鹿しい

シードの剣城が来たから、余計に警戒心が増したのかもしれない

「ダイヤモンドショット!!」

海音の声が突然飛んできて、神童はふと横に見えた河川敷に目を向ける
海音や天馬、信助が河川敷グラウンドで特訓をしていた 周りにはその様子を見ている部員達がいる ゴールの横に立ち、海音を指導しているのは、神童も知っている人物だった
「あれは…円堂守?」
サッカー少年で知らないものはいない プロリーグで活躍していた円堂が何故ここに…?

「海音はテクニック型のFWだな、もちろんキック力もあるが…テクニックを駆使して確実に攻めるタイプだ」
円堂は海音のシュートを見て言った
「お前の武器はスタミナとテクニックの高さだ、そこを生かせば化身を使わなくてもいいくらい強力なストライカーになる」

シュートを何回か見ただけでそんなことまで分かるのか… 海音は思った

「テクニックタイプ…って倉間くんと同じですね」
「はあ?あんな奴と一緒にするなよ」
隣の速水に倉間は言った そして海音を見る サッカーが上手いのは認めるが、いけ好かない
「あいつら…上手くは無いけど楽しそうじゃん」
浜野は天馬と信助を見て呟いた
円堂は向こうでドリブルやヘディングをしている天馬、信助を見た
「よし!お前らもシュート練習しようぜ!」
「はい!」
二人は練習を止め、こちらに駆け寄ってくる するとさらに円堂は向こうにいるサッカー部員達を見た
「お前らもそんなとこで見てないで、サッカーやろうぜ!」

「…ちっ」
すると倉間は舌打ちをして円堂の方に歩き出した
「あっ…待ってください倉間くん」
それに合わせるようにして速水も倉間についていった まるでそれが起爆剤のように、次々と他のサッカー部員も円堂の元に集まっていった

「…円堂守に引き寄せられたのか…」

その様子を見ていて神童は呟く
十年前、廃部寸前だった雷門サッカー部を全国優勝に導き、さらにイナズマジャパンを世界一にした伝説のキャプテン…
円堂のその純粋なサッカー愛と、誰にでも気さくにできる心の広さが多くの者たちを引き寄せるのだろう

…まるで、俺とは大違いだな

そう思いながら神童はその場から去っていった

ポジションは関係なく、一人ずつゴールにシュートしていく 円堂はそれを一つ一つ受け止めていた
「ダイヤモンドショット!」
海音は円堂に向かってシュートを放つ
円堂はダイヤモンドのような威力を持つそのシュートを軽々と片手で止めてしまった
「いいシュートだ海音!」
円堂は清々しい笑顔で言った
「ありがとうございます!」
さすが円堂さんだ… 簡単には勝てそうにもない

これで全員シュートした 一人を除いて
円堂はその一人をもちろん忘れる事もなく、声をかけた
「よし!次は剣城の番だ!」
「…なに?」
向こうで見ているだけだった剣城は円堂を睨んだ まさか自分もやれと言われるとは思いもしなかったのだろう
「サッカーやろうぜ!」
円堂は言った
剣城はその言葉が大嫌いだった
「いいぜ…やってやるよ」

空気が澱むのを察したのか、信助は天馬と海音に声をかける
「二人とも…先輩達も向こうで見るみたいだし、僕たちも少し離れようよ」
「そうだね…」
天馬は頷いた
剣城が向こうから歩いてきた 潰してやる…そんな殺気が目に見えるくらい滲み出ている
「………」
苛立ちに満ちた剣城の背後にうっすらと感じる悲しそうな雰囲気 海音はそれに見入っていた
そして海音も天馬と一緒に少し移動した


周りからの視線を痛いほど感じていた

剣城はボールを構える 目の前にはゴールとGKである円堂が立っていた
十年前、イナズマジャパンを世界一にした伝説のGK… その名は伊達ではないのだろう
今さら怖じ気づいたか?自分がひどく情けなくなる

周りの視線は冷たい 当たり前だ、俺はフィフスセクターの一人、シードなんだから

「剣城頑張れ〜!」

すると声が飛んできた 振り返るまでもなく、それが海音だとわかった
なぜか、海音だけ周りとは雰囲気が違うように感じる まるでアイツみたいに…
「………」
何を期待している?あるはず無いだろ
俺は雷門の敵なんだ、打ち解け合うなどできるはずがない

…まあ、初めから打ち解け合う気も無いがな

円堂は必殺技で止めるのだろうか 天馬や信助は円堂の必殺技を見てみたいようだ
「…剣城…」
海音は悲しげに呟いた
剣城はボールをすくいあげる そして剣を突くような威力を持つシュートを思いきり放った
「デスソード!」
円堂に止めることなど、容易い事なのだろう

だが円堂はシュートを止めずに、軽々と避けてしまった

「やるじゃないか剣城!」
後ろでボールがネットに突き刺さる音を聞くと、円堂は笑顔で言った
「…ちっ」
悔しそうな顔をすると、剣城は歩き去っていってしまった
「必殺技で止めると思ったのに…」
天馬は残念そうに呟いた


——————


あっという間に日が暮れ、夕方になった

「よし!今日の特訓はここまで!」
円堂は周りで練習していた部員達に言った
部員達は練習を止め、円堂の方を向いた
「皆いい調子だ!これからも頑張ろう!」
「…結局、グラウンドじゃ見えないものってなんだろ」
信助は汗を拭いながら呟く そういえば…と天馬は信助を見た
わざわざ河川敷で特訓したのには何か理由があるのだ 恐らく大切な

「…それは、本気でサッカーしようとする仲間の顔だ 」

まるで信助の問いに答えるかのように、円堂は言った
本気でサッカーしようとする仲間の顔?
海音と天馬は顔を見合わせた
「皆 ここに集まったって事は、サッカーがしたいからだろ?」
円堂が言うと、海音はその意味を理解した
栄都戦の惨状を引きずり、練習が上手くいってなかった自分達に河川敷での自由練習という形で訪ねたのだ
サッカーをしたいのか否かを
河川敷に来た部員達はそれに応えた サッカーが好きでやりたいと

「皆がここに居ること…それが今日の特訓だったんだ!」
海音の隣で天馬は言った
「………」
海音は円堂の方を見た 昔から変わってないなと心の奥底で感じる

ただ一つ、疑問が残っていた なぜ円堂が雷門に来たのか 円堂や剣城の様子を見る限り、おそらく円堂はフィフスセクターが送り込んだ監督では無いのだろう

一体…どうやってフィフスセクターの監督と入れ替わったんだ?