二次創作小説(紙ほか)
- 第18話 ( No.50 )
- 日時: 2013/02/06 18:19
- 名前: 時橋 翔也 (ID: cSy8Cn7x)
海音と霧野は本校舎の階段を上がり、三階にある理事長室に入った
すでに中には雷門サッカー部員全員が揃い、最近顔を出していなかった神童や剣城もいる 皆の雰囲気は暗い 二人は顔を見合わせ、お互い近くに集合した
「…これで全員です」
円堂は理事長に言った 理事長はその事を確認すると、封が切られた封筒の中から一枚の紙を取り出した 勝敗が記された『勝敗指示書』 雷門のサッカー部員達の鎖でもある
「ホーリーロードの指示が決まりました 雷門の相手は天河原中です」
理事長は落ち着いて言った
天河原中は割と最近できた学校で、サッカーの実力はそこそこだが、関東地区では全国を狙えるレベルらしい
「結果は2対0、今年雷門は…初戦敗退です」
雰囲気がさらによどんだのが海音にはわかった 皆顔には出ていないものの、ショックなのが手に取るように分かる
「……失礼します」
円堂はそれだけを言うと理事長室から出ていった それに続いて雷門イレブンも次々と連なるように出ていった
——————
「俺達三年最後のホーリーロードが初戦敗退なんて…」
海音が理事長室の前の廊下に出た時、始めに聞いたのは絶望的な三国の声だった
続いて俯いていた天城も声を上げる
「今まで我慢してフィフスセクターに従っていたのに…あんまりだド」
確かに三年にとって、初戦敗退は残酷すぎる指示かもしれない 自分のせいだとわかりながら海音は思った
すると倉間は海音を思いきり睨んだ
「雪雨、お前があんな事したせいで…」
「まあシュートしたのはこいつだけじゃねーけど」
南沢は俯き、責任を感じて真っ青になっている神童を見た 神童はわかりきっているのか何も言わない
すると黙っていた三国が二人を庇うようにして声を上げる
「二人ともよせ!」
「事実だろ、久遠監督もそのせいで辞めさせられた…神童は家柄が良いしな、内申書がどうなろうと問題ないんだろ?」
淡々と南沢は反論した
「……っ!」
「キャプテン!」
海音の制止も聞かず、神童は何処かに走り去ってしまった
その様子を唖然と見ていた三国は南沢を見る
「南沢!」
「よせ!争ってどうする!」
黙って見ていた円堂もとうとう声を上げた
「……監督は今のルールをわかってない」
倉間は円堂を見た
円堂も倉間を見つめ返す
「…言ったはずだ 勝つためのサッカーをやると!俺は指示には従わない 優勝を目指すぞ!」
「……ほう 指示を無視するんですか」
海音の後ろの剣城は言った
まるでバカにするかのような口調だ
「いい加減に夢みたいなこと言うなよ!」
そう言って倉間は歩いていった 本当は自由なサッカーをしたいが、サッカーが出来なくなるのは嫌だ
「…俺はサッカーが出来なくなるのはいやだ …監督にはついていけません」
海音を庇ってくれた三国も去っていく
「あ…先輩方…!」
信助はおどおどしながら先輩についていった
次々とフィフスセクター側が立ち去り、残るは海音、天馬、円堂の三人だけになった
「海音、円堂監督…俺は勝ちたいです」
天馬は言った その瞳は揺るぎない意思の固さを表している
「もちろんボクもさ!わざと負けるなんて嫌だ!ボクはホーリーロード、全力で戦う」
海音も両手を握りしめ言った
だが海音はでも、と付け足した
「ボクは…化身は使いません」
「え…!?」
天馬と円堂は海音を見つめた
「確かに化身を、レインを使えばボク一人でも勝てると思います でも…それじゃ意味が無いんです」
「意味?」
天馬は呟く
「サッカーは個人戦じゃない、団体戦だ 一人の力で勝ったって、先輩達は何も変わらないしそれが長く続くとは思えない サッカーは…チームで一つだから」
「海音…」
円堂は海音を見つめた 確か昔、同じようなことを言っていた人が居た気がした
海音のように水色の髪を長く二つ縛りにした自分よりかなり年下の少女だった
——————
『…俺を使わないだと?』
うん ボクの力だけでなんとかする
『まあ決めるのはお前自身だ… しかしサッカーがあんな事になっているとはな、フィフスセクターか…』
やっぱり許せないの?
『当たり前だ、サッカーを奪う組織など、お前の制止さえなければ叩き潰す』
勇ましいね…
『俺を使わないと言ったが……もしもお前が危機に瀕したとき、俺は全力をもってお前を守らねばならない』
でもラフプレーはやめたら?ボクあれ好きじゃないし…
『それは出来ない 氷界の覇者レインは元々そういう風につくられたからな』
つくられたって?
『……とにかく、もし俺を出すときラフプレーをしたくないなら、強くなり理性を保つ他ない』
…わかった、ボク強くなるよ
二度と、失わない為にも
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「…話ってなんだ?神童」
すでにサッカー部では練習を始めた頃、円堂は神童に呼び出されて廊下に立っていた
目の前には真剣で悲しげな顔をした神童が立っている
「監督、…俺は退部します」
神童は言った 俯きながら
「退部…?本気か神童」
円堂は少し驚いた表情を浮かべる
神童は顔を上げた
「本気です、それでは」
それだけを告げると、神童は円堂に背を向けて去っていった
「認めないぞ、サッカーが大好きなお前が退部なんて、俺は認めないからな!」
円堂の叫びは届かず、消えた