二次創作小説(紙ほか)
- 第23話 ( No.72 )
- 日時: 2013/02/14 19:30
- 名前: 時橋 翔也 (ID: 8keOW9sU)
ホーリーロードが開催されるスタジアム『ホーリーロードスタジアム』は、かつては『フットボールフロンティアスタジアム』と呼ばれていたと昔聞いたことがある
だがフィフスセクターが設立され、多少の改装を得て現在のスタジアムとなった
『さあ始まりました!中学サッカー日本一を決める大会 ホーリーロード!』
そんな声がスタジアム中に響き渡る
空では飛行機による色がついた煙の演出がある中、雷門を始めとした中学サッカー部はユニフォームを着て、ホーリーロードスタジアムのフィールドを規律通りに行進していた ホーリーロードが開幕するための開会式だ
雷門の他にこれから戦う天河原、名門校帝国学園など、様々な学校が行進している
「………」
海音は辺りの学校を見てみた だが探している人は他の学校の影になって見えそうにない あきらめて海音は再び前を見た
雷門の先頭はキャプテンである神童だ
昨日神童はサボっていたことを部員達に謝罪し、再びキャプテンの座についたのだ
海音はこれからは頼れるであろう司令塔の背中を見ながら、黙って行進した
「………」
神童を見つめていたのは、海音の他に霧野も同じだった
昨日、まるで別人のような雰囲気で戻ってきた、幼馴染みにして親友
なんであんなに雰囲気が変わったのかはわからないが、きっと海音と円堂が何か吹き込んだのだろう 言い方は良くないが
「…神童…」
なんだか距離が遠くなったような気がした親友の名を呟くが、それは周りの歓声に掻き消されて 消えた
「……!」
円堂はホーリーロードスタジアムが見渡せる来賓席とでも呼ばれそうな高いところにいる青年を強い眼差しで見つめた
青年とはフィフスセクターの聖帝、イシドシュウジだ
強化ガラスの窓が、まるで二人を隔てるようにそびえていた それでも円堂は、イシドの方を見つめていた
どこか悲しげな表情をして
——————
「あー緊張したー!」
「だよねー…」
開会式が終わり、雷門イレブンはキャラバンで天河原中に向かっていた
信助と天馬は同じ席に座り、そんな会話を交わしている
海音は皆と孤立した一番後ろの席に座っていた 一番後ろの席は大きいが、海音は窓際に座っている ちなみにもう片方の窓際には開会式に出なかった剣城が座っていた
ああして海音が開会式に出られたと言うことは、剣城はフィフスセクターに海音が女子だと報告していないのだろう それはそれで海音には都合がいい
本当は海音は一人寂しげな剣城の隣に座ったのだが、隣に来るなとはっきり言われ、仕方なく剣城と反対側の窓際に移動したのだ
剣城はそうして頑なに人を避けたがるが、それにはなにか理由がある気がした
『…あの少年… 人と接したがらないな』
すると海音の頭の中にそんな声が鳴り響く 自分自身の声だが、その声の主は化身であるレインだとわかった
「…珍しいね、君が出てくるなんて…いつもは夢の中でしか話さないのに」
『気まぐれだ気にするな』
レインは言った 海音の中に住んでいるのに、おかしなことに心で会話が出来ない だから相手が何を考えているのかわからないのだ
そのため会話は、こうして声に出さないといけない 周りには一人で話す変人に見えるだろうが
「… レインありがとう」
『何がだ?』
「キャプテンを説得してくれて」
『……』
あの時、神童を軽く叱ったのはレインだった 急に意識が身体の奥に持っていかれる感覚と共に、気がついたら身体の主導権はレインにあったのだ
そもそも神童に下郎と言えるのはレイン位だろう
『…特に意味があるわけではない 俺の気まぐれだ気にするな』
「気まぐれ多いね…」
海音は突っ込む そしてそれきりレインは出てこなかった
「…戻ってきてくれて良かったよ、神童」
神童の隣に座っていた三国は言った 神童は三国を見つめ返した
「先輩… 勝敗指示に従いますか?」
そしてかつての雷門キャプテンに問いかける 答えなど決まっていた
「ああ…俺達三年には雷門を守る義務がある それに… サッカーを失いたくない」
「………」
すると神童は悲しげに視線をそらした
「…俺達は今まで逃げていただけなのかもしれません… サッカーとも向き合えず、サッカーが嫌いな訳をサッカーのせいにしていた」
「神童…」
ここまでサッカーと向き合おうとする神童は三国は初めてだった よく考えたら自分だって、楽しいサッカーをしたのはいつ以来だろうか
「三国先輩、俺は天河原に勝ちます」
神童はハッキリと言った 真剣な目で
三国は目を見開き神童を見つめた
「…本気なのか神童」
「はい もうこれ以上、サッカーを裏切りたく無いんです」
サッカーを裏切りたく無い その言葉に三国は少しだけ自分を照らし合わせる 昔はサッカーが大好きで、うまくなりたくてがむしゃらにボールを追いかけていた
今ではボールを追いかける事も無くなってしまった GKになったから、という理由だけではないだろう
だが後輩の思いを踏みにじる気は無いので三国はそれ以上何も言わなかった
そんなことをよそに、キャラバンは天河原中学校のすぐ前までやって来ていた