二次創作小説(紙ほか)

第30話 ( No.93 )
日時: 2013/03/11 20:56
名前: 時橋 翔也 (ID: xhJ6l4BS)
プロフ: 入試終わったああああああ!!


放課後になり、海音は部活へと向かう
すると三国や神童が言っていた言葉を思い出す …本当に先輩達は別れて練習するのだろうか フィフスセクターと戦うことを強制する気は無いが、何だか悲しかった

「あ、海音」
サッカー棟に入ると、部室には先程話した四人が揃っていた 天馬は海音を見た
「そうだ、海音も来るかな…」
「? 何か話してたの?」
「今度このメンバーで遊びにいこうって話をしていたんだ」
三国は言った 遊びに行く…海音にはあまり経験のない事だった
海音はテーブルにバッグとビニールの袋を置くと四人を見た
「遊び…ですか?」
「ああ 息抜きと言うかサッカー復活組として」
神童は言った 案外楽しみのようだ
だが海音にはとある問題があった
「でもボク今お小遣いギリギリで…」
「海音何か買ったの?」
信助に訪ねられ、海音がぎくりと顔を強張らせた
「あはは… ち、ちょっとね…」

「…なんだこの袋」
すると三国と神童が海音のバッグの横に置かれていたビニールの袋に近づいた ボールの存在を意識させるその膨らみに、恐らくサッカーボールを想像したのだろう
「何だろ…」
天馬と信助も駆け寄る 海音は驚いて身体を硬直させ、制止がかかる前に袋の口が開かれ中にあった物が放たれた

中に入っていたのはボールだった
だがサッカーボールではなく、バスケットボール

「…バスケットボール?」
持ち上げて神童は呟いた 真っ黒で白い線が描かれた物で、新品であろうそのボールには高級品なのか普通のサッカーボールとは桁違いの値段がシールで貼られていた その値段を見て天馬と信助は固まった
まさか…と天馬は海音の方を見た 海音は目をそらし、今日は涼しい日の筈なのに練習が終わったあとのようにおびただしい量の冷や汗を掻いているのがわかった
「海音…」
「な…に?」
「これだね?お小遣い使ったの」
特に怒っていた訳ではないが、サッカー部員がバスケットボールに小遣いの九割を注ぎ込んだ話など聞いたことない
「…この子が…この子がああああぁ…」
謎過ぎる声を発したあと、海音は珍しく言い訳を始めた
「世界大会決勝戦で使われた伝説のその子が…!半額でしかもすぐ売り切れるのにボクの目の前に一個だけ売ってて…!」
「…普通のサッカー部員ならサッカーボールじゃ…」
神童は半分呆れながら言った まあボールを買うのは自由だし、特に怒る理由も無いので神童はため息をつくだけだった にしても海音が小遣いを費やしてまで手に入れたかった物なのか理解がいまいち出来ない

「なんだ、お前らもう来てたのか」
すると部室に水鳥と葵が入ってきた 二人はバスケットボールの存在に気づくと流石に表情を変えた
「な…それバスケットボールじゃんか、バスケ部に借りたのか?」
「違う借りてない、てか借りない…海音の私物だよ」
神童が言うと、水鳥は再び目線をそらして冷や汗を掻いている海音をまじまじと見つめた
「…お前バスケするのか?」
「…………………はい」
海音は頷いた てっきりサッカー一筋だと思っていた葵は驚いて海音を見た
「へー海音君が…以外」
「あははは…」
海音は思いきり作り笑いをしてごまかした

「あ、そうだ…さっき剣城君見かけたの」
すると葵は言った
天馬は葵を見た
「剣城起きたの?」
「そうみたい…それでさっき校舎出ていってどこか行っちゃった」
葵は言った 海音に一つ思い当たる物があった
「…病院、だったりして」
「病院?」
「うん 倒れたから看てもらうんじゃ無いかな」
「なるほどな」
水鳥は腕を組み納得した すると何か思い付いたのか表情を変えた
「じゃあ剣城を付けてみようぜ」
「…へ?」
「あいつ以前からよく商店街の方を歩いてるんだ もしかしたらフィフスセクターについて何かわかるかもしれないしな」
「でも病院でわかるかな…」
考えるとこそこかよ と海音は天馬を見た これは俗に言うストーカーに入る気がするのだが

「…でも丁度いいかな、直矢に会いたいし」
「よし、じゃあ行くぜ!」
「あ、待ってください!」
出ていった水鳥を葵は追いかける さらに天馬と信助もついていったので、海音もバスケットボールを袋に入れないまま持って部室を出ていった

「…仲良いなあいつら」
「はい…」
感心するやら呆れるやらで、三国と神童はそんなことを話していた


——————


「…あ、剣城だ」

校舎を出て商店街を歩いていると、水鳥は向こうに剣城を見つけた いつも通り改造された制服で何ら変わりなく歩いていた
「大丈夫なのかな…」
海音は呟く
「…本当に病院に行くみたいだね」
その隣で天馬は言った 向こうにはもう病院しかない

五人は剣城に気づかれないよう距離を取って後を付ける どう見てもストーカーにしか見えないのだが、海音は口に出さない
『…ストーカーだな』
変わりにレインは言った 海音は少し呆れながらレインに語りかける
「言わないでよそれ… ボクだって思ってるし」
『なら言えば良いじゃないか』
「いや、いいよ…」
海音はため息をつくだけだった

剣城は迷わず病院に入っていき、五人は剣城よりかなり遅く病院に入っていった
病院にはいつもにまして人が多く、そのせいか病院に入っても誰一人として剣城の存在を確認することはできなかった
「…やばい、見失った」
水鳥は今の現状をそのまま口に出した
仕方なく海音は『力』を使うべく身構えるがすぐに止めた 『力』を使えばすぐに剣城にバレてしまうだろう
その時だった

「きゃっ!」
「うわっ!」
隣で葵が何かにぶつかり海音は葵を支えた ぶつかったのは十代後半くらいに見える少年で、藍色の髪に茶色いつり目 顔立ちもかなり良く、車イスに入院用のパジャマを着ているのを見るとどうやらここの患者のようだ
「大丈夫?」
「うん、…あ、すいません」
葵は少年に謝ると、少年は穏やかに笑った
「よそ見していたら危ないぞ」
それだけを言い残し、少年は車イスをこいでどこかへと去っていってしまった
雰囲気が直矢に似ている気がした
海音がそんなことを考えていると、信助が何かに気づいた

「あれ…これ」
信助が拾い上げたのは、恐らく少年が落としていったであろうサッカー雑誌だった 読み込んだのかボロボロで、少年がいかにサッカーが大好きなのかを連想させる でも車イスだったな…そんな疑問が海音の中に芽生えた
「サッカー雑誌だね…俺も持ってるよこれ」
天馬は雑誌の表紙を覗き込みながら言った
「さっきの人のだな」
水鳥は言った 周りの皆も納得した
「じゃあ剣城を探しながらついでにこれも届けようぜ」
「そうですね」
海音も頷いた