二次創作小説(紙ほか)

Re: 暗黒の世紀を切裂く—— 第1話執筆中! ( No.5 )
日時: 2013/02/02 11:20
名前: 風死(元:風猫  ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)
プロフ: ・大陸名の設定はオリジナルです(汗

 冒険王ビィト 暗黒の世紀を切裂く——
 第1話「戦士達の世界へ Part1」

 世界は6つの大陸に区分されていた。
 それぞれヒルガンテ、ソイフーリャ、サラミラ、ハングアクス、ドロトス、アゴラスタという。
 人々はそれを総称し六大大陸(リーゼフォリア)と呼称している。
 
 物語の始まりは、ハングアクス大陸の辺境にある、アンクルスという山里。
 城壁のような塀(へい)の内側に家々が並ぶ。
 村の外郭(がいかく)を、ぐるりと頑丈そうな壁が囲んでいるのは、当然のことながら魔人達の攻撃から身を守るためである。
 暗黒の世紀に存在する全ての人が集まる場所は、門の中に集住区を設(もう)けているのだ。
 建てられている家々は、石造りの簡素(かんそ)な作り。
 基本的に、すぐ横には畑がある。
 鍬(くわ)や鋤(すき)を持って、一生懸命農業にいそしむ夫婦の姿が目につく。
 山村らしい長閑(のどか)な風景。
 後に始まりの地と称(しょう)される場所だ。

 そんな閑散(かんさん)とした村にも、魔人と戦う戦士バスター達は存在し、当然ながらバスター専用の施設もある。
 ハウスと呼ばれるその小屋には、昔バスターとして活躍した者が鑑定士という役職名で常駐(じょうちゅう)しているのが常だ。
 彼等は、世界最大の都市グランシスタに居を構えるバスター協会本部から指名された、一流の者達で俗(ぞく)に監視官とも呼ばれる。
 バスター達の実力(レべル)管理や装備や道具の売買。
 任務(クエスト)の発注(はっちゅう)など、ありとあらゆるバックアップを一手に担(にな)う多忙な者達だ。
 
 そんなハウスの中に、このハウスの鑑定士である老婆と一人の少年がいた。
 フードを被った老婆は、老いてなお鋭い眼光で、目の前にいるはねた癖毛の少年を睨(にら)む。
 少年はその眼光に臆(おく)することなく言う。

 「俺、バスターになりてぇんだ! 何がなんでも……」
 
 何度説得をしても一向に引き下がらない少年にあきれ、老婆はため息をつく。
 そして、最後の警告をする。

 「本当に、ほんっとーぅに良いんだねビィト。まだ、考える時間はある。死に急ぐ必要はないさ。バスターなんてのはね。仇打ちなんてできるかも知れないこと望んでる馬鹿か、一攫千金とか夢想してるアホのなる仕事さ。あんた、人生棒に振っちまうかも知れない選択なんだよ?」

 老婆の説得はビィトと呼ばれた少年には、届きはしなかったようだ。
 少年は老いた鑑定士がもうすぐ折れそうだと悟(さと)り、目を爛々(らんらん)と輝かせる。

 バスターになるのは簡単だ。ハウスの門戸(もんこ)を叩き、申請すれば良い。
 ただそれだけ。そうすれば、常駐する鑑定士が、バスターの証たる胸の烙印(ブランディング)を特殊な焼き鏝(ごて)でつける。
 すると、体内にあった天力の流れが活性化しバスタートしての最低限必要な力を有することとなるのだ。

 だが、バスターは危険きわまる仕事である。
 魔人の討伐数に比べ、死亡率はあまりに高い。
 バスターになる者の大半は、魔人につけられた高額な賞金を目当てとする武芸者やを復讐(ふくしゅう)を望む者のどちらかだ。
 しかし、老婆はビィトがそのどれにも該当(がいとう)しない存在であることを知っている。

 バスター発足(ほっそく)当初は多数いたが、今や数少ない平和を目指し魔人を狩ろうとする者達の同類。
 バスターという職業が世間に認識されはじめた頃から、その職についていた鑑定士は、過去を懐かしむような目で少年を見た。
 その一方で、魔人の圧倒的戦力を知る者として、魔人を滅ぼして平和をなどというのは幻想だという思いも強い。
 しかし、来る者は拒まずが、協会の方針だ。
 説得はできるが、それで引き下がらなかったら、その相手をバスターとして迎え入れるしかない。 
 
 老婆は嘆息し、焼き鏝を取り出す。
 そして、老婆は念を押すように言う。
 勘違いして貰っては困る。厳しい職業なのだということを。

 「本当に良いんだねビィト。何度でも言うが、これを一度押しちまったら、もうカタギとは言えない。死んでも文句は言えないってことだよ? それでも、良いんだね」
 
 鋭い老婆の双眸に冷や汗を流しながら、ビィトは強い口調で宣言した。

 「おう! もちろんだぜッ、俺は今日こそバスターになって決めてるんだからな!」

 威勢良く啖呵(たんか)をきり、茶色一色のシャツを脱ぐビィト。
 彼の胸部に鑑定士の老婆は焼き鏝を当てた。
 ジュワァと肉が鉄板で焼かれるような音が響く。

 ビィトは焼かれるような痛みに我慢できず、身をよじらせて絶叫する。
 そんなビィトを冷えた眼差しで身ながら、老婆は「痛かっただろう」と問う。  

 「全ッ然! それどころかむしろ、一人前の男になれたって感じですがすがしいぜ!」

 涙を流しながら、ビィトは必死に強がってみせた。
 だが、苦悶(くもん)の表情や涙から、老婆には痛みを我慢してるのが丸分りだ。

 こんなことで大丈夫かと、胸中で呟(つぶや)きながら、走り去っていくビィトの背中を老婆は追う。
 息急ぎの馬鹿な子供だと、捨て置く気にはどうにもなれないらしい。
 頼りない足取りでハウスをあとにするビィトを見つめながら一言。 
 
 「やれやれ、こりゃぁ、また、問題児が現れたみたいだねぇ」

 そう言う老婆の顔は、なぜか少し嬉しそうだった。
  
 
 
 ——————

 End

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