二次創作小説(紙ほか)

Re: 少年陰陽師1夜 『花』 ( No.16 )
日時: 2013/02/14 16:51
名前: 透明 (ID: xLaEhu2C)

 時が過ぎ二年後—

竹三条宮にて昌浩は物の怪と共に内親王の宮付き陰陽師として庭を歩いていた
昌浩はふと歩みを止め、御簾の向こうにいる人影に微笑んだ
「藤花」
呼ばれた彼女はゆっくりと彼の近くの御簾に歩み寄って膝をついた
「もっくん、昌浩…」
沈黙が続いた
それきり黙ってしまった藤花に昌浩は話しかけた
「今日は結界の様子を見に来たんだ。…姫宮様は?」
「風音様に教わりながら書の練習をしていらっしゃるわ」
「伺ってもいいかなあ」
「それは…。昌浩ちょっと待ってて、姫宮様に訊いてみるから」
そう言って衣を翻して奥へと向かう藤花の後姿を昌浩は揺れる瞳で見送った
物の怪が心配そうに見上げているが、彼は気づかなかった
—わたしはどなたのもとにも…
あの日、彼女から聞いてからその言葉が何度も反響している
昌浩は唇を噛みしめて溢れだしそうな自分の気持ちを抑えた

きっと気のせいだ
彼女との距離が近いのに遠く感じるのは…