PR
二次創作小説(紙ほか)
- Re: 少年陰陽師1夜 『花』 ( No.17 )
- 日時: 2013/03/07 15:29
- 名前: 透明 (ID: 8comKgvU)
この宮の主のもとへと歩いていた藤花は部屋の前で止まると口元をそっと単の袖で覆った
「…どうして私」
まともに昌浩と会話ができないのだろう
彼を見たとたん、どくどくと鼓動が速まり頬が熱くなって頭の中がぐちゃぐちゃになる
そのせいでまた昌浩に変に気を遣わせてしまったではないか
訳がわからない
昔はこんなことなかったのに…
俯いて泣きそうな彼女の後姿に呼びかける人がいた
「…藤花様?」
振り返ると、髪をおろしている風音が不思議そうに藤花を見ていた
藤花は慌てて一礼すると、どうしたらいいかと言い澱んだ
「風音様、その、昌浩が姫宮様にお会いしたいと…」
昌浩、と口にした瞬間また頬が赤くなったのを藤花は自覚した
耳まで赤くなっている藤花を見て何かを悟った風音は、気にしていないように笑った
「では私が姫宮様に訊いてくるから藤花様は昌浩に知らせにいってあげて」
「は…い……」
そのまま風音は部屋の中に姿を消すと藤花はため息をついた
「昌浩に話しかけるなんて今の私にはとても無理だわ…」
風音は昌浩と二人でわずかな時間だが他愛無い話ができるようにと藤花にそう言ってくれたのだろう
しかし、藤花には呼びかけることすら勇気がいるのだ、会話なんてなおさらだ
理由がわからずとも、自分は彼をみつけたまま話しかけられずに局に戻ってしまいそうで
「せめて、そうなる理由がわかればいいのに…」
藤花は目を伏せてぽつりと呟いた
PR