二次創作小説(紙ほか)

少年陰陽師3夜 『春は…』 ( No.27 )
日時: 2013/04/02 11:50
名前: 透明 (ID: xlcSC1ua)

次の日

晴天で心地良い、花見には最高の日和だ
昨日、紅蓮が文句を言いながらも場所を取ったおかげで桜の近くで食事ができる
今日のお花見には安倍家はもちろん、小野家の蛍や国津家の比古、彰子も来ている
久々に兄たちに会えるとあって昌浩はこの花見を誰よりも楽しみにしていたのだ
「おとといに太陰と玄武が照る照る坊主を作ってくれたおかげだね」
「とーぜんよっ、あたし結構頑張って作ったんだもの」
「我は別に作らなくても、太陰や白虎が通力で雨雲をなんとかすれば問題ないと思うのだが」
それか晴明か吉昌が術を行使すれば雨雲のひとつやふたつ造作もないだろう。大きな声では言えないが、安倍家は陰陽師を生業としているのだから
それを玄武が口にしたところ、太陰と昌浩がなんとも言えない顔をした
「いや、それはそうなんだけどさ。気持ちは呪につながるし、俺は嬉しいよ?」
「そうよっ。あんたそんなこと言ったら労力が無駄になっちゃうじゃない!」
ぎゃんぎゃんと叫んだ太陰の肩を大きな手が掴んだ
「おいおい、三人とも何を騒いでるんだ?」
「会うのは久しぶりだね、昌浩」
「お兄、昌兄!」
長男の成親と次男の昌親だ。昌浩は瞳を輝かせて二人に駆け寄った
成親は昌浩の頭をぽんぽんと叩き、にかっと笑った
「また随分と大きくなったなあ」
「え、本当!?」
聞き返すと昌親が本当だよ、と頷いた
昌浩は小さい頃から背が伸びると、とても喜ぶのだ
そこに車から降りてきた彰子が包みを抱えて昌浩のもとにやってきた
「昌浩っ。お兄さま方も、こんにちは」
行儀良く一礼すると成親は感心したように会釈した
「やっぱり藤原家のお嬢さんはほかの女の子と違うなあ。礼儀作法がしっかり身についている。こんな子といつも一緒にいられるなんて、良かったな、昌浩や」
「そんな、私こそ優しい安倍家の皆さんにお世話になっているのですから。今日のお花見も誘っていただいて、とても嬉しいです」
彰子は首を振ると微笑した。その隣で昌浩は赤面している
三人を眺めていた昌親は苦笑した
「兄さん、そんなに昌浩で遊ばない。昌浩も兄さんの冗談だから」
「昌親、冗談とはひどいなあ。俺は本気で言ってるんだが」
「はいはい」
安倍家三兄弟の応酬を聞いていた彰子は目を細めた
彰子には兄弟がいないので、こういう光景は見ていて心が温かくなる
彼女は日本で有名な藤原グループのお嬢様なので、家族が忙しくて滅多に家族で団らんなどできない
その代わりに安倍家に滞在することも少なくはない
だから、彰子にとって安倍家の人々は家族に近い存在なのだ