二次創作小説(紙ほか)

雑鬼達のトリック・オア・トリート ( No.34 )
日時: 2013/10/25 17:26
名前: 透明 (ID: FA6b5qPu)

ハプニングは一つ鬼の一言から始まった。

「…おれ、思ったんだけどさ」
「なんだ、ひとつの」
やけに真剣な様子の一つ鬼の顔を竜鬼が覗きこんだ。
「おれたち生まれてから一度もやってない大切なことがあった」
「やってないこと?」
猿鬼が繰り返すとそれまで俯いていた一つ鬼が顔を上げて叫んだ。
「ハロウィンだよハロウィン!!!」
「…………………は?」
竜鬼と猿鬼は目を丸くする。
心配したのに、出てきた言葉は重大性の欠片もない。
「ひとつの、何が言いたいんだ?」
「いきなりどうしたんだ、ひとつの」
二匹の反応が気に入らなかったのか一つ鬼がわめく。
「だから、おれたちの楽しみであるイベントを今まで見逃していたんだよ!!人間たちを驚かせておまけにお菓子が貰いえる、最高のイベントじゃないかよ!」
一つ鬼がハロウィンを知ったのはつい数日前。昌浩がやたらと菓子を買い込んでいたのを不思議に思って聞いてみたのだ。
——うん?ああ、このお菓子はハロウィンで使うやつだよ。雑鬼達はハロウィンって知らないんだっけ?
その日妖生初めて耳にした、いや、聞いたことがあっても聞き逃していたかもしれないが、イベントに一つ鬼は愕然とした。
そんなに面白そうなことを妖生で一度も経験していなかったことに。
「だから今年はハロウィンってものをやってみたいんだよ!!」