二次創作小説(紙ほか)

Re: 第四十五話 熱血 ( No.106 )
日時: 2013/08/15 14:06
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

N・E空中輸送ドッグが飛び去って行ったあと、八階からマゼンタが登って来た。
「マゼンタ! そっちは大丈夫だったか?」
「……んー、まあ何とか勝ったで」
壁が破壊されたあの後、ラピスが外に気を取られた隙を突いて悪巧みで特攻を上げ、すかさず気合玉を放ってブラッキーを倒していた。
しかしそのあと、ラピスはすぐに空中輸送ドッグに乗り込んでしまった。
「こっちもギリギリで勝ったけど、かなり強かったぜ。やっぱり侮れないな、N・E団」
「そやね。あれで六位と四位なんやから、その上は……」
その時、複数の人間の階段を駆け上がる音が響き、カラタチとジムトレーナー三人衆が駆けあがってきた。
「二人とも、無事だったか!?」
荒い息をつきながら、カラタチが言う。
「ええ、まあ何とか」
「そっちはどうやったん?」
「途中で逃げられた。下っ端とは言え、流石にあの人数はきつかったな」
だが、とカラタチは続け、
「『ブロック』のリョーマ……だったか? から連絡があった。とりあえずこの町は解放されたそうだ。町にいた下っ端も全員撤退したそうだ」
ふとレオが前を見ると、先ほどトパズが立っていたところにいくつかの鍵が落ちていた。
「カラタチさん、あの鍵はもしかして」
「ああ、おそらくはこの町の住民が閉じ込められている部屋の鍵だろう。二人とも、よく頑張ってくれた。後は私たちに任せて、先に戻っていてくれ」
カラタチにそう言われ、レオとマゼンタは一回に降り、高層ビルを後にする。
ビルを見ると、三階、八階、九階の壁がなくなっていた。
ポケモンセンターに戻ると、中で待機していた者たちが二人を迎える。
リョーマとテレジアは、既に帰ってしまったらしい。
「二人とも、大丈夫だった? 心配したんだからね」
真っ先にアスカが二人の元へ駆け寄ってきた。
「まあな。何とか親玉は倒したし、この町も解放したぜ」
レオがそう言うと、それを聞いていた周りの者たちがそろって歓声を上げる。
とりあえずは、コウホクシティは解放された。


「マゼンタは、この後どこにいくんだ?」
翌日。
レオとアスカは、次の町へと向かうマゼンタを見送っていた。
「次のジムがある町やから……ツクモシティやな。レオくんはこの後ジム戦なんか?」
「ああ。この後、すぐジムに行くつもりだぜ」
「カラタチさんの格闘ポケモンはえらい強いでー。頑張りいや。アスカちゃんも、元気でな」
「うん、またどこかで会いましょう」
ほななー、とマゼンタは手を振り、次の町へと歩き出していった。
「さて、ところでアスカは、ここのジム戦は?」
「この前行ったわ。もちろん勝ったわよ」
自慢げにアスカはコウホクジムバッジを取り出す。
「一つ言っておくけど、カラタチさんの格闘ポケモンは強敵揃いよ。飛行タイプやエスパータイプを持ってても油断しないことね」
「当たり前だろ。ジムリーダーが弱かったら、面白くないじゃんか」
「ふうん。じゃ、ポケモンセンターで勝利報告を待ってるわよ」
そう言って、アスカはポケモンセンターへと戻っていく。
「……やってやるぜ」
レオはそう呟き、気持ちを入れなおすと、ジムへと向かっていく。
コウホクジムは、体育館か武道館のような外観をしている。ジム自体も大きい。
「お願いします!」
ジムの扉を開けると、シンプルなバトルフィールドと、その向こう側に立つ赤いジャージの大男。
「コウホクジムによく来たな、レオ」
カラタチは腕を組み、笑みを浮かべてレオを見据える。
「昨日はN・E団撃退の協力をしてくれてありがとう。おかげで町もすぐに復興しそうだ」
「それはよかったです。だけど、それとバトルは勿論別ですよね」
「ガハハハハ! そう来なくてはな。勿論、このカラタチ、全力で相手をしようではないか」
カラタチは豪快に笑い、ボールを取り出す。それを見てレオもボールを手にかける。
「いざ、尋常に勝負!」
カラタチが叫んだのを引き金に、二人は同時にポケモンを繰り出す。
「頼んだぜ、トゲチック!」
「根性見せろ、ハンタマ!」
レオの一番手はトゲチック。
対するカラタチの一番手は、振袖のような武道着を着た、白いオコジョのようなポケモン。その後ろには黒くひょろ長い魂が出ている。
ハンタマ、半霊ポケモン。ゴースト・格闘タイプ。
「ハンタマか、懐かしいぜ。僕のハンタマは元気にしてるかな」
一年前、レオはハンタマを持っていた。今は幼馴染に預けてあるが、それ故愛着のあるポケモンでもある。
「では、行くぞ! ハンタマ、まずは氷柱パンチ!」
ハンタマの拳に冷気が込められる。
その冷気は鋭く尖った氷柱のようにハンタマの拳を覆い、その拳を構えてハンタマはトゲチックへと突っ込む。
「トゲチック、マジカルリーフ!」
対してトゲチックは不思議な光を放つ葉の刃を飛ばす。
しかし、ハンタマは素早い動きで葉を回避し、必中であるはずのマジカルリーフを掻い潜ってトゲチックまで接近、その氷柱のような拳でトゲチックを殴り飛ばす。
「来るぞハンタマ、シャドークロー!」
先ほどまでハンタマの拳を覆っていた氷柱は一瞬で消え、代わりに拳は爪のように鋭い影をまとっていた。
振り向きざまにハンタマは影の爪を振るい、後ろに迫っていた葉を切り裂く。
「ッ、何て機動力だ!」
マジカルリーフを掻い潜り、トゲチックを攻撃し、さらにはそのマジカルリーフをも破ってしまう。
このハンタマ、なかなかの曲者だ。
「僕のハンタマと戦ってきた人たちは、皆今の僕と同じ思いをしてたんだろうな」
過去を思い出し、レオは小さく笑うが、すぐに気持ちを切り替える。

『コウホクシティジム ジムリーダー カラタチ  愛と根性の熱血漢』