二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第五十二話 羽休め ( No.117 )
- 日時: 2013/08/15 14:21
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)
「行ってきなさい、チルット!」
アスカの二番手は、雲のような翼を持つ、一頭身の青い鳥型のポケモン。
綿鳥ポケモン、チルット。ノーマル・飛行タイプだ。
「飛行タイプかよ。僕のルクシオは、まだまだ戦えるぜ」
「それくらい分かってるわよ。こっちにも戦術ってものがあるの」
そして、
「チルット、突進!」
先に動いたのはチルット。
勢いをつけて飛び出し、文字通り突進、ルクシオへと激突する。
「だけど突進は反動ダメージがあるぞ。ルクシオ、反撃だ! 十万ボルト!」
すぐに体勢を取り戻すと、ルクシオは高電圧の強力な電撃を発射する。
良い返しのタイミングで放たれた電撃は、攻撃直後のチルットをまともに捕らえる。
しかし、その直前で。
「チルット、羽休め」
電撃が命中する寸前、チルットは羽を折りたたむ。
(あれ? 何だ今のは?)
チルットに電撃は命中。
飛行タイプには電気技は効果抜群故、大ダメージになるのは確実。
しかし。
「チルット、龍の波動!」
効果抜群の電撃を浴びたとは思えない動きでチルットは再び颯爽と飛び上がり、龍の力を溜め込んだ波動を撃ち出す。
「なにっ!?」
レオもルクシオもこのような反撃が来るとは全く予想しておらず、ルクシオは波動の直撃を喰らい、大きく吹っ飛ばされる。
「もう一発よ!」
さらにチルットは龍の波動を放つ。
立て続けにルクシオに直撃し、ルクシオはさらに吹っ飛び、地面に落ちた時には戦闘不能になっていた。
「ルクシオ、よくやった。戻って休んでてくれ」
レオはルクシオを戻し、アスカの方に向き直る。
「なあ。さっきの羽休めってのは、一体何だったんだ?」
「あら、知らない? 羽休めは自己再生みたいな回復技の一つよ」
だけど、と笑みを浮かべ、アスカは続ける。
「羽休めを使うと、そのポケモンは一時的に飛行タイプじゃなくなるの。つまり、飛行タイプの弱点である電気とか岩とかが効果抜群じゃなくなるってこと」
つまり、先ほどチルットは電撃を食らう瞬間は飛行タイプがなくなっており、だから大きなダメージを受けなかった、ということになる。
(強引すぎる戦法だけど、アスカらしいな)
思わず舌を巻くレオだが、すぐに次のボールを取り出す。
「空中戦と行こうぜ。任せたぞ、トゲチック!」
レオの二番手はトゲチック。空を飛べるため、環境的には互角に戦える。
「先攻は頂くぜ! トゲチック、原始の力!」
トゲチックは周囲にいくつかの岩を浮かべ、一斉にチルットへと撃ち出す。
「この量は躱せなさそうね。チルット、羽休め!」
チルットは羽を折りたたみ、地面に降りる。
岩が命中するが、飛行タイプがないので効果抜群ではない。
「次はこれだ! トゲチック、エアスラッシュ!」
トゲチックは羽ばたき、空気の刃を飛ばす。
「チルット、躱しなさい!」
チルットは再び空へと舞い上がり、刃を避けると、
「冷凍ビーム!」
トゲチックへと冷気を込めた光線を放つ。
「トゲチック、防御だ。原始の力!」
トゲチックは正面に岩を浮かべ、冷気の光線を遮断するが、
「突進!」
原始の力の終わりを見計らって、チルットが突っ込んでくる。
トゲチックは避けられず、チルットの激突をまともに喰らってしまう。
このチルット、小さくて可愛い見た目と裏腹にかなり攻撃的である。
「つっても、攻撃的なだけだ。別に攻撃力が高いってわけじゃなさそうだし」
実際、トゲチックは突進を正面から受けたが、思ったほどダメージは多くなさそうだ。
「まあね。でも特攻はそこそこあるわよ? チルット、冷凍ビーム!」
再びチルットは冷気の光線を撃ち出す。
「トゲチック、原始の力!」
対して、トゲチックはいくつかの岩を浮かべ、今度は冷凍ビームを押し切って直接チルットへと放つ。
「避けられないわね……羽休め!」
アスカは回避不可能と判断し、チルット地上へと降りて羽を折りたたむ。
岩の直撃を喰らうが、効果抜群ではないので余裕で持ちこたえる。
「トゲチック、次はマジカルリーフ!」
そこへトゲチックは不思議な光を放つ葉の刃を放つ。
必中技故、チルットは避けられずに葉の刃を喰らってしまう。
「羽休めは一時的に飛行タイプがなくなるからな。そのタイミングなら、効果今一つの草技も普通に通るだろ?」
「そうよ。だけど威力は等倍の原始の力と同じ。チルットは耐久も高いし、そんなに痛くはないわ」
実際、チルットは大してダメージを受けていないようで、またすぐに空へと飛び上がる。
(ちくしょう、羽休めが本当に面倒だな……)
アスカが本来の用途と大きく離れた使い方で羽休めを使うために忘れそうになるが、アスカが言っていたように、本来羽休めは回復技である。
一応与えられているダメージも、すぐに回復されて帳消しになってしまう。
(これは原始の力を使わない方がいいかもな。トゲチックも決定力が高い訳でもないし)
と、そこでレオは閃く。
(いや、使うならまずは相手の動きを止めればいいのか。よし!)
「っし、トゲチック、神通力!」
トゲチックは不思議な霊妙の力を発し、チルットの動きを止める。
「ッ、チルット、抜け出しなさい! 次の技が来るわよ!」
「その通り! トゲチック、原始の力!」
チルットの動きを封じたまま、トゲチックは無数の岩をチルットへと放つ。
神通力の影響でチルットは動けず、岩の直撃を喰らう。初めて大きなダメージがチルットへと入った。
「もう一発食らうと危ないかも……チルット、一旦回復よ。羽休め」
「させるかよ! トゲチック、エアスラッシュ!」
チルットは地面へと降りようとするのだが、トゲチックがそれを許さない。
トゲチックの羽から放たれた空気の刃が、チルットを思うように動かせず、
「もう一発だ!」
さらにトゲチックは空気の刃を、今度はチルット目掛けて発射する。
「ううー、こうなったら正面勝負! チルット、龍の波動!」
逃げ場を失ったと見たのか、アスカは戦法を変える。
チルットは着地を諦めると、飛び上がって空気の刃を躱し、龍の力を溜め込んだ波動を撃ち出す。
「トゲチック、原始の力!」
対してトゲチックは無数の岩を飛ばすが、龍の波動の方が強く、原始の力は打ち破られてしまう。
「それなら、神通力!」
咄嗟にトゲチックは霊妙の力を放ち、龍の波動を何とか相殺。
「突進!」
しかし、いつの間にか間合いを詰めてきていたチルットが突撃を仕掛け、トゲチックを吹っ飛ばす。
「もらった! チルット、冷凍ビーム!」
吹っ飛ぶトゲチックに向けて、チルットは冷気の光線を放つ。
「やばいっ……トゲチック、あれは避けろ!」
吹っ飛ぶトゲチックだが、何とか体勢を立て直すと、間一髪のところで上へと飛び上がる。
冷気が、トゲチックの足を掠めた。
「あれを喰らってたらまずかったな。今度はこっちの番だぜ! トゲチック、エアスラッシュ!」
「あんたの番になんかさせないわよ! トゲチック、龍の波動!」
チルットは龍の波動を撃ち出し、トゲチックは空気の刃を二発放った。
一発目の刃で波動の威力は削がれ、二発目の刃は波動を貫通してチルットへと迫る。
「躱して冷凍ビーム!」
チルットは飛来する刃を横へと逸れて回避、さらに冷気の光線を撃ち出して反撃する。
「原始の力!」
トゲチックは無数の岩を放って、冷凍ビームを破壊するが、
「ちょっと無理させるわよ。チルット、気合見せなさい。突進!」
冷凍ビームで威力を削がれた岩へと、チルットは突っ込む。
あろうことか岩へと次々にぶつかって行き、岩を全て打ち返している。
「はぁ!?」
流石のレオでもこれには驚きを隠せない。
チルットの額は赤く、少し腫れているが、それでもチルットは耐えた。
そして、跳ね返った岩は使用者へと牙を向き、トゲチックは岩の直撃を喰らい、吹っ飛ばされる。
「決めるわよチルット! 龍の波動!」
最後にチルットは普通よりも力を込め、強力な龍の波動を放った。
体勢の大きく崩れているトゲチックに命中、トゲチックは地面に落ち、戦闘不能となってしまう。
「トゲチック、よく頑張った。あとはあいつが勝って来てくれる」
レオはトゲチックを労い、ボールに戻すと、
「小さい割に相当なアタッカーだな。恐れ入ったぜ」
「私が育てたポケモンだからね。私にかかれば耐久型でもアタッカーに変貌するわよ」
アスカのその発言に恐怖とは別の冷や汗をかきつつ、レオは最後のボールを取り出す。