二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第五十五話 洞窟 ( No.122 )
- 日時: 2013/08/15 14:26
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)
「ッ……痛え、くそ……」
レオとセイラが落ちた穴の中は、大きな洞窟が広がっていた。
天井の亀裂から光が入ってくるので、洞窟の中がある程度ははっきり見える。
「むー、随分と大規模な洞窟だな。ハガネールの群れでも住んでるのかもな」
「おいおい、そうだとしたらまずいぞ。ハガネールの群れになんか襲われたら一巻の終わりだぞ」
「ふふ、心配するな。こりゃ天然の洞窟じゃない。掘ったのはポケモンだろうが、人工的な匂いを感じる」
「人工的な匂い、ねえ……」
レオには全く分からないが、裏社会を生き続けて来たセイラには分かるのだろう。
しかし、
「昔の私たちと同じ匂い、とも言う」
この言葉だけは聞き逃せなかった。
「……おい。それって、まさか」
「ふふ、間違いない。N・E団、だったか? そいつらがいるぞ」
「ちっ、マジかよ……」
N・E団がいるかもしれないとなると、ゆっくり探索している訳にもいかない。
「セイラ、人を乗せて飛べるポケモンは?」
「いると言えばいるが、あの亀裂を通り抜けられるほど小さくない」
となると、やはり出られそうなところを探すしかなさそうだ。
「ポッチャマ、出て来てくれ」
「出て来い、チェキラス」
レオはポッチャマを、セイラは紫と黒を基調とした猫型の獣人のようなポケモン、デビルポケモンのチェキラスを繰り出す。
N・E団にいつ出くわしてもいいようにポケモンを出しておき、出口の捜索を開始する。
と、その時。
バッ! と。
天井の亀裂から、何かが飛び降りて来た。
「何だ!?」
それはポケモンだった。
美しい白の体毛に、悪魔の翼のような尻尾、漆黒の鎌を額に持つ、四足歩行のポケモン。
災いポケモンの、アブソルと言うらしい。
そのアブソルは、二人をじっと見据えると、短く声を上げ、尻尾で奥の道を指す。
「ついて来い、ってよ」
突然、セイラが言った。
「!? お前、ポケモンの言葉分かるのか?」
「ふふ、自分のポケモンならな。あと、悪タイプのポケモンの言葉も分かる。とにかく、ついて来いだと。出口に案内してくれるらしいぞ」
「本当か!? アブソル、助かる。ありがとう」
何故このアブソルが道を教えてくれるのかは不明だが、とにかく今頼れるのはこのアブソルだけだ。
とりあえず、二人はこのアブソルに続き、歩き出す。
アブソルは振り向くこともなく、歩き続ける。
「セイラ、人の気配はするか?」
「いや、しないな。つっても、私だって気配が完全に分かるわけじゃない。あまり当てにしないほうがいいぞ」
確かに、慎重に進むのに越したことはない。
アブソルに連れられ、歩き続けていると、
「?」
唐突に、アブソルが止まった。
二人に向けて小さく吼えると、次の瞬間には、素早い動きで岩陰の隙間に飛び込んでしまう。
「どうした?」
「む、誰かいる。来るぞ!」
セイラがそう言った、次の瞬間。
「ケッ、何で二匹もネズミが迷い込んでんだよ、面倒くせえな」
正面から、見たことのある顔が現れた。
長身の、立たせた緑の髪の男。前とは違って赤いチェック柄の服を来ているが、やはり胸にはN・E団の紋章。
碧天のセドニー。傍らには彼のポケモンであるサーナイトを、後ろには下っ端を引き連れている。
「N・E団、どうしてお前たちがここにいるんだ!」
「そりゃこっちの台詞だ。どうしてお前らはここにいるんだよ」
面倒臭そうに頭を掻きながらセドニーは言葉を続ける。
「せっかく地下にN・E団のアジトを造り上げようと工事をしてたってとこなのによ、お前らに見られちまったら秘密に造ってた意味がねえじゃねえかよ」
最後に小さく舌打ちし、セドニーは無線のようなものを取り出す。
「おい、聞こえるか。例のレオってのと変な小娘が入り込んでやがった。もうここにアジトを造る意味はねえ。撤退すっぞ」
しかし、無線の相手の声を聞くと、セドニーの表情が変わる。
「何? ああ、そういやそうだったな。あれの許可はもう出てたんだったな、すっかり忘れてたよ。それじゃ、別のとこ見つけるのも苦労するし、そうすっか」
じゃあそっちは頼むぜ、とセドニーは言い残し、無線の通話を切る。
レオたちの方へと向き直り、
「計画変更。新しいアジトを造るのも大変だし、しかも何より、突然邪魔が入ったわけだし」
セドニーがそこで言葉を切り、不敵な笑みを浮かべる。
「ムカついた。お前らぶっ潰して、その口を封じて任務完了だ」
その笑みと共に、セドニーはポケットへと手を突っ込み、
「さあどっちからだ? 俺としてはどっちが来ても構わねえけどな」
「へっ、以前カンタロウに押されてた程度のお前が何言ってんだ。僕一人で十分だ」
「そーかい。だったらまずは、お前からだ」
セドニーはレオを指差す。
「セイラ、下がっててくれ。こいつは僕が片付ける」
「ふふ。じゃ、貴様の戦いを見せてもらおう」
セイラがそう言って一歩下がり、レオが前に出たところで、
「下っ端!」
不意にセドニーが叫ぶ。
「はい! 今だ、イワーク!」
そのセドニーの声に応じ、下っ端が何か指令を出す。
刹那、天井と壁が崩れ、この空間を分断してしまう。
具体的に言うと、崩れた天井の壁が瓦礫となり、土砂の壁を造ってしまった。
レオとセイラを、別々に分ける形で。
「……ッ!」
レオは咄嗟にライブキャスターを起動させ、セイラの番号に繋げる。
「セイラ、大丈夫か!?」
『……何とかな。ちょっと反応が遅れていたらまずかったが、まあこっちは無事だ。貴様はさっきの奴を倒せ。この程度の壁なら、一時間もあれば私のポケモンで壊せる』
「分かった。なるべく早く終わらせてこっちも手伝うぜ」
セイラが無事なら、一安心だ。
レオはすぐに気持ちを切り替え、セドニーの方へと向き直る。
「待たせたな、さあバトル開始だ。序列5位のお前くらい、速攻で終わらせてやるぜ」
「おいおい、寝言は寝てから言うもんだぜ、クソガキが」
対峙する二人は、互いに余裕を浮かべつつ、それぞれのボールを取り出す。