二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第五十七話 抗体 ( No.126 )
- 日時: 2013/08/15 14:28
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)
「んじゃ次だ! ひねり潰せ、リーフィア!」
「遊んでやろう。出て来い、チェキッド!」
メジストのポケモンは、クリーム色の体毛を持ち、耳や尻尾が葉と同化し、体から所々草の生えた、四足歩行のポケモン。
深緑ポケモンのリーフィア、草タイプ。
対するセイラのポケモンは、紫色の大きなリスのようなポケモン。人型にも見えるが、妖精のような印象を受ける。
チェキッド、妖精ポケモン。チェキラスと同じ進化元を持つポケモンで、こちらはノーマル・悪タイプ。
「リーフィア? 本来は、貴様のような奴には合わない、イーブイの進化系の中でも極めて温厚な性格のポケモンだと思うが」
「そいつぁどうかねえ。俺様が使うポケモンだから、随分と好戦的で狡猾かもしれねえぞ? ギャハハ!」
メジストの言葉に、セイラは呆れたように息を吐くと、
「まあ、それでも私のやる事は変わらない。チェキッド、スピンテール!」
先に動いたのはチェキッド。
地を蹴って飛び上がり、空中で華麗にスピンしながら、リーフィアへと尻尾を叩きつける。
「リーフィア、リーフブレード!」
対してリーフィアは右前足に小さく生えた草を刃のように伸ばし、その刃を振るってスピンテールを相殺する。
「シザークロス!」
「影分身だ!」
さらにリーフィアは左前足の草も刃のように伸ばし、双刃を交差させて切りかかる。
しかし、チェキッドは瞬時に影を利用した無数の分身を作り上げる。
リーフィアの刃は、チェキッドの分身を切り裂くだけに終わった。
「だが無意味だぜ! リーフィア、燕返し!」
リーフィアの攻撃はそこで止まらない。
全神経を研ぎ澄ませ、本体を見極め、刃を構えて本来へと突撃する。
「ほう。チェキッド、スピンテール!」
直後、分身が一斉に消える。
そして本体のチェキッドは、華麗に体を回しながら、その勢いで尻尾を振るう。
刃と尻尾の一撃が交錯し、勢いが相殺される。
「リーフブレード!」
「躱して辻斬り!」
返す刀で、リーフィアが右前足の葉の刃を振りかざす。
チェキッドは体勢を屈めて、ギリギリのところでその刃を躱すと、すかさず爪を振り抜き、リーフィアを切り裂く。
「ちっ、一発目はお前に入れられたか。だったらリーフィア、潜る!」
リーフィアは素早く地面に穴を開け、その中に潜ってしまう。
「む、チェキッド、気を切らすなよ。どこから来るか分からんぞ」
神経を集中させ、チェキッドは地中のリーフィアの気配を探る。
しかし、この行動に意味はなかった。
リーフィアが飛び出してきたのは、右の壁からだったからだ。
「ッ!?」
予想外の方向からの攻撃に、咄嗟の反応が出来なかった。
死角からの突撃を喰らい、チェキッドは吹っ飛ばされる。
「ここは洞窟だ。この壁は地面と繋がってんだぜ? もうちょっと深ければ、天井から奇襲する事も出来たはずなんだが、ここは地上に近いからなあ。天井までは行けなかったみてえだが」
メジストは高笑いを浮かべ、
「さあ、次だ次! リーフィア、潜る!」
再びリーフィアは地面に潜ってしまう。
「チェキッド、影分身!」
チェキッドは影を利用し、再び無数の分身を作り上げる。
(しかし、無駄かもな)
セイラは心の中で呟く。
(奴が気配を察して攻撃するのならば、奴は本体を攻撃してくる。分身は影で作っただけ、気配なんてしないからな)
そして、実際。
リーフィアは、今度は地面から的確に本体を目掛けて襲ってきた。
「チェキッド、下だ!」
今度はセイラも反応が追い付いた。
チェキッドは何とか飛び退き、リーフィアの強襲を避ける。
メジストが言っていた通り、このリーフィア、通常の性格と違い、かなり攻撃的なようだ。
「チェキッド、反撃だ! スピンテール!」
チェキッドは高く跳び上がり、体をスピンさせながら尻尾を叩きつける。
「リーフィア、潜る!」
しかしまたしてもリーフィアは地面へと潜ってしまう。
だが、
「それはもう効かん。チェキッド、怒りの炎!」
激しい怒りの如く燃え盛る炎を、穴の中へと放つチェキッド。
一拍置いて、炎をまともに浴びたリーフィアが地面から飛び出して来た。
「スピンテール!」
そこにチェキッドの尻尾が叩き込まれ、リーフィアは吹っ飛ばされる。
しかし、効果抜群の一撃の直撃を受けたのにも関わらず、リーフィアはまだ倒れない。
「このリーフィアは確かに攻撃特化だが、本来リーフィアが優れるのは防御だ。物理攻撃なら、そう簡単に倒れねえぜ」
確かに、リーフィアの体は所々が焦げているが、まだまだやれる、という構えを見せている。
「なるほど。こいつは物理技しか無いから、ちょっと面倒かもな。……?」
ふとセイラの言葉が止まった。
メジストの口が、不気味な笑みから、珍しい物を見る時のような驚きのようなものに変わっていたからだ。
「おい」
メジストの口調が変わった。
何かに驚かされたかのような声で、さらにメジストは続ける。
「お前、何故俺の能力が効いていない?」
そう。
メジストの危険なあの能力が、セイラには効いていないのだ。
「俺は、敵の精神力や戦意を奪い取るという天性の能力を持っている。ヨザクラのジムリーダーのような規格外の精神力を持つものや、アカノハのジムリーダーのように決してペースが崩れない者に効かない事は知っているが、見たところただの小娘にしか見えんお前は何者だ?」
怪訝な表情で(フードで顔は見えないが)メジストは尋ねる。
対して、セイラは薄笑いを浮かべた。
「ふふ。貴様と同業者だよ」
ただし、と続け、
「私の場合は『元』だがな。昔の私はもっと暗かったし、人への感情は捨てていたから、精神力とか鍛えられたのかもな。自覚はしてなかったが、抗体でもあるのかもしれない」
「なるほど」
謎が解け、満足そうに口元を歪めるメジスト。
「ギャハハ! 面白え、久々にまともに戦えそうだよ! リーフィア、リーフブレード!」
リーフィアは右前足の草を伸ばし、チェキッドに切りかかる。
「チェキッド、スピンテール!」
軽やかなステップでチェキッドはリーフィアの刃を躱すと、回転しながら尻尾を叩きつける。
「怯むな! シザークロスだ!」
尻尾はリーフィアの脳天に直撃したが、リーフィアの動きは止まらない。
左前足の草も伸ばし、刃を交差させてチェキッドを切り裂いた。
「チャンス! リーフィア、もう一発シザークロス!」
「ふふ、あまり舐めるなよ。チェキッド、影分身!」
リーフィアがさらに切りかかるが、チェキッドは瞬時に影を利用した分身を作り、リーフィアの刃は偽物を切り裂く。
「意味ねぇっつってんだろうがよ! 燕返し!」
リーフィアは全神経を集中させ、瞬時に本体を見極める。
だが。
「それはどうかな。チェキッド、怒りの炎!」
刹那、無数のチェキッドが一斉に炎を噴き出した。
勿論本物は一つだけだが、これでは避けようがなく、リーフィアは炎を全身に浴びてしまう。
それでもまだリーフィアは倒れず、何とか立ち上がろうと足を動かすが、
「諦めな。チェキッド、辻斬り!」
チェキッドが一瞬でリーフィアとの距離を詰め、リーフィアを切り裂き、確実に止めを刺す。
「ちっ、リーフィア、戻っときな」
メジストは小さく舌打ちし、リーフィアをボールに戻すが、
「ギャヒャヒャ! いいねえ、久々にまともな戦いが出来てるぜ! 滅多にない機会だし、最後まで俺を楽しませてくれよぉ!」
再び狂ったような高笑いを上げ、メジストは最後のボールを取り出す。