二次創作小説(紙ほか)

Re: 第五十八話 黒鎌 ( No.127 )
日時: 2013/08/15 14:29
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

セドニーのバジリールは、非常に強かった。
そもそも、レオのポケモンはバジリールと戦うには相性が悪すぎる。
ヘラクレスの次のルクシオは、主力の電気技がろくに通らず、何発かは攻撃を当てたものの、すぐに倒され、次のトゲチックは電気技をまともに浴び、一蹴された。
今出しているポッチャマに至っては、草・電気共に弱点である。
最早今のレオの戦術は、回避に専念し、僅かな隙を何とか見つけて攻撃しているだけだが、それもいつまで続くか分かったものではない。
「随分と頑張るな。何としても勝とうとするその努力だけは認めてやるよ」
だが、とセドニーは言葉を続け、
「そろそろ諦めな。仮にお前がこのバジリールを倒したとして、俺にはまだ二体ポケモンが残ってる。もちろん覚醒によって強化されている。お前にはもう勝ち目は無いぞ」
「それがどうした」
対するレオの気持ちは変わらない。
残り一体であろうと、どんなに力の差があろうと、絶対に諦めない。
それが、彼の性格であり、彼の信念であるからだ。
そして、そんなレオを見て、セドニーはため息を吐くと、
「そーかい」
呆れたように呟き、直後、カッと翠の目を見開く。

「だったら、一思いに決めてやるよ!」

刹那、ポッチャマを囲い込むように、無数の蔦が地面から飛び出した。
大成長の蔦が、ポッチャマを包囲し、動きを止めてしまう。
「終わりだ! バジリール、大成長!」
ポッチャマを囲む蔦がポッチャマに狙いを定める。
「まずい……ポッチャマ、ドリル嘴!」
ポッチャマが嘴を伸ばし、ドリル状に回転して蔦を迎え撃つ。
しかし。
突如、ポッチャマの足元が割れ、一本の蔦がポッチャマを突き上げる。
「しまッ……!」
下からの奇襲を喰らい、体勢を崩して打ち上げられたポッチャマ。
そこに、周りの蔦が容赦無く襲いかかる。
はずだったのだが。

物陰から黒い影が跳び出し、全ての蔦を一瞬で切り裂いた。

「!?」
突然の事に驚きを表すレオとセドニーの前で、その黒い影は動きを止めず、さらに高速で二、三度バジリールを切り裂く。
そして、その黒い影は動きを止め、ようやくその正体を現した。
それは、
「アブソル!」
そう。
先程レオとセイラを導いた、あのアブソルだったのだ。
「ああ? おいおい、何だそのアブソルは? 伏兵でも潜ませておいたのかよ」
「いいや。このアブソルは僕のポケモンじゃない」
「だったら何でお前を助け、俺のバジリールを攻撃した」
「さあね。お前たちが悪い奴だ、って分かってるんじゃないか?」
レオの言葉を聞き、セドニーの表情に明確な不快感が表れる。
セドニーは小さく舌打ちすると、
「ムカついた。いいぜ、この際二体纏めて相手してやる。バジリール、大成長!」
バジリールは地面に力を送り込む。
地面から大量の蔦が飛び出し、二手に分かれ、それぞれポッチャマとアブソルに襲いかかる。
「この量なら破れる! ポッチャマ、ドリル嘴!」
二手に分かれた分、ポッチャマに襲い来る蔦の量は少ない。
ポッチャマは嘴を伸ばし、ドリルのように高速回転しながら突撃、蔦を強引に突き破る。
アブソルは俊敏な動きで蔦を躱し、鎌を妖しく光らせてバジリールへと突っ込む。
「サイコカッターか。バジリール、迎え撃て! 十万ボルト!」
バジリールの尻尾が光る。
アブソルを迎撃すべく、その尻尾から強烈な電撃が打ち出されるが、
「こっちにもいるぞ! ポッチャマ、ドリル嘴!」
バジリールがアブソルへと電撃を放った瞬間、ポッチャマは再びドリルのように回転しながらバジリールへと突撃する。
バジリールは当然避けられず、嘴の直撃を喰らう。
「それくらいどうってことねえよ。バジリール、薙ぎ払え! サイコバーン!」
バジリールは一瞬で体勢を戻す。
念動力を爆発させ、周囲にその衝撃波を飛ばす。
と、そこでアブソルが動いた。
横から思い切りポッチャマにぶつかり、ポッチャマを弾き飛ばす。
サイコバーンの衝撃波を突っ切り、アブソルはすれ違いざまにバジリールを切り裂く。
仲間割れにしか見えないが、そうではない。
ポッチャマがサイコバーンの直撃を喰らうのを避けるため、アブソルはわざとポッチャマに体当たりし、ポッチャマを衝撃波の圏内から避けた。
エスパー技のサイコバーンは、悪タイプのアブソルには効かない。
「少しはやるじゃねえか。バジリール、まずはあのアブソルからだ! 十万ボルト!」
「やらせるかよ! ポッチャマ、冷凍ビーム!」
バジリールがアブソル目掛けて高電圧の強烈な電撃を放つが、後ろからポッチャマが冷気を込めた光線を撃ち出す。
冷気の光線がバジリールを捕らえた。バジリールに、初めて効果抜群の大きなダメージが通る。
「バジリール、シグナルビーム!」
しかしバジリールは、効果抜群の一撃を浴びたにも関わらず、すぐに反撃を仕掛ける。
尻尾から放たれた妖しく光る光線が、ポッチャマを吹っ飛ばす。
「バジリール、後ろからも来るぞ! シグナルビーム!」
さらにバジリールはすかさず後方にも光線を放ち、アブソルを牽制する。
咄嗟に跳び上がって回避しようとするアブソルだが、光線が足元を掠めた。
「まだ来るぞ! 弾き飛ばせ!」
鎌を光らせて攻撃を仕掛けようとするアブソルを、バジリールは尻尾を振るって薙ぎ払う。
技ではないのて威力は弱いが、それでもアブソルは壁に叩きつけられる。
(やっぱり相当強え……だけど、勝てない相手じゃない)
二対一になったことにより、バジリールが隙を表す頻度が高くなってきた。
その隙を的確に突いていけば、勝てないことはない。
「やっぱり二対一は少々手こずるな。だが、こちらが勝つのは明確だ! バジリール、大成長!」
アブソルの足元から、無数の蔦が飛び出す。
アブソルを打ち上げ、さらにその鈍器のような蔦がアブソルを殴り飛ばす。
「もう少し張り合いがあると思ったがな。バジリール、決めろ! シグナルビーム!」
アブソル目掛けて、バジリールは尻尾から妖しく光る光線を放つ。
ポッチャマが動くが、間に合わない。
アブソルに炸裂し、煙が上がる。
「まずは一体。あとはポッチャマだけか」
アブソルの方には目もくれず、バジリールはポッチャマに向き直る。
「バジリール、十万ボルト!」
バジリールの尻尾から火花が飛び散り、強烈な電撃が放たれる。

よりも早く、燃え盛る業火がバジリールに襲い掛かり、バジリールは炎に包まれてしまう。

「何だ!?」
慌てて炎が飛んできた方を振り向くセドニー。
そこには、何事もなかったように立っているアブソルが。
「ッ、何故だ! 今の一撃で仕留めたはずだぞ」
対して、素早くレオは図鑑を取り出す。
(さっきのは……なるほど、身代わりか)
身代わりは、自身の体力を少し削り、文字通り身代わりを出現させる技である。
「ケッ、どうせ守るか身代わりかでも使ったんだろう。種が分かればどうってことねえぜ。バジリール、十万ボルト!」
炎に包まれながらも、何とかバジリールは強烈な電撃を発射する。
アブソルは炎を噴き出して応戦するが、十万ボルトの方が強く、炎は破られてしまう。
「こっちだ! ポッチャマ、ドリル嘴!」
「邪魔だ! サイコバーン!」
ポッチャマがドリルのように高速回転しながら突撃するが、バジリールは周囲に念動力の爆発を起こし、ポッチャマを吹っ飛ばす。
さらにアブソルにも電撃が命中する。
「さあ今度こそこれで終わりだ! まずはお前からだ、バジリール、大成長!」
バジリールは蔦を伸ばし、アブソルに絡みつかせて動きを止めてしまう。
「バジリール、十万ボルト!」
だが。
「させるかぁ!」
レオの叫びと共に、荒れ狂う波のような水を纏ったポッチャマが全力で突っ込んでくる。
アクアジェットは先制技。バジリールは反応が一瞬遅れ、脳天に直撃する。
その衝撃で、蔦が緩む。
「アブソル、今だぞ! ポッチャマ、冷凍ビーム!」
その隙を逃さず、ポッチャマが冷気の光線を、反対側からアブソルが灼熱の業火を放つ。
今度こそ、バジリールは両面からの効果抜群の攻撃をまともに受け、地面に倒れる。
それでもバジリールは力尽きていなかった。
体を震わせ、立ち上がろうとする。
しかし、そこにアブソルが鎌で最後の一撃を加えた。
碧天の切り札バジリールは、遂に体力を使い果たし、戦闘不能となった。