二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第五十九話 九死一生 ( No.128 )
- 日時: 2013/06/15 22:54
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: d1Bequrp)
- プロフ: 文字数の関係で後書きはありません。
「叩き潰せ、オニゴーリ!」
メジストの最後のポケモンは、鬼の顔のようなポケモン。岩の体を氷の鎧で固めた姿をしている。
オニゴーリ、顔面ポケモン。氷タイプ。
通常サイズよりも一回り大きく、人が頭に座って移動出来そうだ。
「氷タイプなら、チェキッド、怒りの炎!」
チェキッドは憤怒の如く燃え盛る炎を放つが、
「オニゴーリ、吹雪!」
オニゴーリは雪を暴風に乗せて吹雪を起こし、炎を打ち消してしまう。
「アイアンヘッド!」
間髪いれずに、頭を鋼のように硬化させたオニゴーリの頭突きがチェキッドを捉える。
チェキッドは吹っ飛ばされ、リーフィア戦でのダメージも重なり、戦闘不能となってしまう。
「チェキッド、よくやってくれた。休んでな」
無表情でセイラはチェキッドをボールに戻し、最後のボールを取り出す。
「期待してるぞ、私の新エース。さあ、こいつに勝てるか? 出て来い、ミカルゲ!」
セイラの最後のポケモンは、紫色の霊魂の集合体のようなポケモン。周囲に緑色の無数の人魂のようなものが浮かんでおり、その体は石に繋ぎとめられているように見える。
ミカルゲ、封印ポケモン。ゴースト・悪タイプ。
と、不意にメジストが小型の機械を取り出した。
機械を見ると、メジストは舌打ちし、
「ちっ、セドニーの野郎、覚醒したのに切り札やられてんじゃねえかよ」
忌々しそうに呟くと、機械を仕舞い、セイラに向き直る。
「せっかくまともに戦える相手に会えたってのに、残念だがタイムリミットが近いみてえだ」
「む、それは残念だな。撤退して試合放棄にでもしとくか? 私は特に構わんが」
「いいや」
セイラの言葉に対し、メジストは不気味な笑みを浮かべる。
「そういうのは俺の性に合わねえ。試合放棄って響きも何か腹立つしな」
つーことで、とメジストは続け、
「速攻で潰す! オニゴーリ、絶対零度!」
ミカルゲの周囲の大気が、みるみるうちに温度を失っていく。
ガチガチと音をたて、ミカルゲの周囲が凍りついていく。
絶対零度も、ハサミギロチンと同じ一撃必殺。
決まればどんな相手であろうと、一瞬で戦闘不能にしてしまう。
しかし。
よりにもよって、セイラはその性質を再び逆手に取る。
「ミカルゲ、道連れ」
直後、ミカルゲは絶対零度の氷に閉じ込められる。
全方面からの極寒の冷気が、一瞬でミカルゲの体力を奪い取る。
当然ミカルゲは戦闘不能。
だが、ミカルゲが地面に倒れる寸前、緑の人魂が妖しい光を放つ。
刹那、オニゴーリが呻き声をあげ、その場に崩れ落ちた。
「……ケッ、またしても道連れかよ。ギャハハ、こりゃ一本取られたかねえ」
少し悔しそうに、破天のメジストは笑い、オニゴーリをボールに戻す。
「さて、俺様はまだ本気を出す気はねえから、これで撤退だ。お前、久々にまともにバトル出来て、なかなか楽しかったぞ。折角だ、名前を教えろよ」
「ふふ、いいだろう。私の名はセイラ。脳内によく刻んでおきな」
「セイラか。それじゃ、次に会う時は俺の本気を見せてやるよ。ギャヒャヒャヒャ!」
狂ったような高笑いをあげながら、破天のメジストは洞窟の闇の奥へと消えて行った。
「ふー、なかなか強かったな、あいつ」
そしてセイラは、一息吐くと、二人を分断した壁の破壊に取り掛かる。
「俺のバジリールを倒すとは、なかなかやるじゃねえか」
バジリールを倒され、エースを失ったセドニーの表情に焦りはない。
「だが、ここまでだ。お前たちが二体で来るなら、ここからは俺も二体で戦う。バジリールは倒されたが、覚醒の力は他のポケモンにも勿論影響する。この時点でお前たちに勝ち目はねえんだよ。あとサーナイトを傷つけたら絶対に許さねえ」
セドニーが言葉を言い終えると同時、セドニーの後ろにいたサーナイトが進み出る。
そしてモンスターボールからは、気球ポケモンのフワライドが繰り出される。
「くっ……」
悔しいが、セドニーのいう通り、ここでレオが戦っても勝ち目は薄い。
確かにアブソルはこの二体に有利だが、ポッチャマもアブソルも体力は残り少し。
覚醒で強化された二体を相手にするのは、かなり辛い。
「だけど、やるしかないか……!」
覚悟を決めるレオ。
しかし、
「……? 何だ?」
唐突に、セドニーのライブキャスターから着信音が鳴る。
「こちらセドニー。どうした?」
『セドニーか。今し方、俺の戦力が全部やられた。ここのアジト計画は捨てるぞ。先に俺は撤退する。お前も急げ』
セドニーの通話の声は、レオの聞き覚えのあるような声だった。しかし、洞窟内ということもあって繋がりが悪いのか、雑音が入り、誰の声だったかははっきりと分からない。
「何!? お前が負けただと? 何があった?」
『久々にまともに戦えたんだよ。とにかく急げ。もうここに用はない』
「お前、まさか覚醒使わなかったのか!?」
『当たり前だ。折角まともにやりあえる奴と会ったのに、覚醒なんざ使わねえよ馬鹿』
そして通話は切れた。
セドニーはしばし硬直していたが、
「どうやら撤退命令が出たらしい。俺はここで撤退する。命拾いしたことを喜ぶんだな」
苛立ちを込めた口調でレオにそう吐き捨てると、サーナイトを抱きかかえ、フワライドに乗る。
「フワライド、シャドーボール!」
フワライドは天井に影の弾を撃ち込み、天井を破壊。
もはやレオには目もくれず、セドニーを乗せたフワライドは空へと飛び去っていった。
(覚醒、か……)
危険は去ったが、レオの心は晴れなかった。
アブソルがいなければ、確実にバジリールにやられていた。
いや、アブソルがいた今の状況でも、サーナイトとフワライドには負けていただろう。
(N・E団、やっぱり侮れないな……)
N・E団の恐ろしさを、レオは改めて感じたのだった。
二人を分断した壁は、双方からの攻撃を受け続け、30分ほどで崩れた。
「む、さっきの緑の奴はどうした?」
「途中で撤退した。正直危なかった。そっちは?」
「こっちもこっちで戦ってたよ。どうにか相打ちだったが、向こうは本気を出してなかったようだったな」
そして、セイラは天井を見上げる。
「これくらいの穴があれば、ここから出られる。出て来い、ぺガーン!」
セイラが出したのは、白い美しい体に紫の模様を持ち、大きな翼を持った馬のようなポケモン。
ぺガーン、羽馬ポケモン。エスパー・飛行タイプ。
セイラはぺガーンに飛び乗ると、
「さあ、乗れ」
レオに促し、レオもぺガーンに乗る。ついでにアブソルも飛び乗った。
ぺガーンは一声嘶き、翼を大きく羽ばたかせて、ゆっくりと飛び上がった。
優雅に翼を羽ばたき、ぺガーンは天井の穴を抜け、レオとセイラはようやく地上に戻ってくる。
「はあ、疲れた。とりあえずN・E団は退散したみたいだな」
二人と一匹はぺガーンから飛び降り、レオはそう呟くと、
「じゃ、セイラ、シラハタウンに行ってこいよ。父さんに僕のことを話せば」
「待て」
レオの言葉を、セイラは遮って言う。
「そのアブソル、貴様に言いたいことがあるようだぞ」
レオの後ろにいるアブソルをセイラは指差す。
レオが振り向くと、そこにいたのはアブソルだけではなかった。
先程レオが手当したパンプリーが、アブソルの後ろにいる。
「どうやら、そのパンプリーは貴様が気に入ったらしい。是非ついて行きたいようだぞ」
「本当か!? そうなのか、パンプリー?」
レオがそう訊くと、パンプリーは前に進み出て、笑顔で頷く。
「それと」
さらにセイラは続ける。
「そのアブソルも貴様と共に行きたいようだ。どうやらそのアブソル、この森の野生ポケモンのリーダーだったらしい」
悪タイプの言葉が分かるセイラは、アブソルの言葉を通訳しているのだ。
「このパンプリーはアブソルによく懐いてるらしい。そんなパンプリーを一人にすると不安だから、アブソルもついて行く、だそうだ」
これはレオにとっては非常に嬉しいことだ。
仲間が二体も増えるのだ、こんなに心強いことはない。
「つまり、二人とも、一緒に来てくれるのか?」
改めてレオが訊くと、パンプリーは笑顔で、対照的にアブソルは微かに笑い、小さく頷いた。
「それじゃ、これからよろしくな!」
レオは二つのボールを取り出す。
パンプリーとアブソルは自らボールに触れ、ボールの点滅はすぐに止まった。
「じゃ、私はシラハタウンに行く。レオ、貴様には借りを作ってしまったな」
「気にすんなって。これからは正式なポケモントレーナーとして、お互い頑張ろうぜ」
「……ああ」
そして、セイラはぺガーンに乗り、飛び去って行った。
レオはそれを見送ると、新しい仲間が加わった喜びと共に、次の街へ向かう。
ツクモシティは、もうすぐだ。