二次創作小説(紙ほか)

Re: 第六十二話 霰 ( No.133 )
日時: 2013/08/15 14:31
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

「それでは行きましょうか。お出でなさい、ユキメノコ!」
シズカの二番手は、振袖を纏った雪女のようなポケモン。
しかし胴体に見える部分は空洞で、足もない。
雪国ポケモンのユキメノコ。氷・ゴーストタイプである。
「まずはルクシオを仕留めましょう。ユキメノコ、シャドーボール!」
ユキメノコは影の弾を作り、素早くルクシオへと放つ。
「ッ、速い! ルクシオ、アイアンテール!」
ルクシオは影の弾に何とか追いつき、硬化した尻尾を振るって弾を破壊。
「もう一度です!」
しかしいつの間にかユキメノコはルクシオの上空まで移動し、更にもう一度影の弾を発射する。
この二発目に対処出来ず、ルクシオは影の弾を喰らい、戦闘不能になってしまう。
「ルクシオ、よくやった。先鋒として上出来だぜ」
レオはルクシオをボールに戻し、次のボールを取り出す。
(他の三体じゃちょっと相性が悪いな。ポッチャマはとっておきたいから、ここはやっぱりこいつしかいないな)
「さあ、初陣だ。期待してるぜ、アブソル!」
レオの二番手は、満を持して登場、これが初陣となるアブソル。
アブソルはフィールドに出ると、静かに立ち、ユキメノコを見据える。
「アブソルですか。気品と風格を併せ持つ、強そうなポケモンですね」
「実はこのアブソル、先日ゲットしたばかりなんですよ」
とは言っても、力試し程度に何人かのトレーナーとバトルしてはいる。
「そうですか。その割にはなかなか強そうですが、私のゴーストタイプ相手にどこまでやれますか?」
「やれるだけやってやりますよ。行くぞ、アブソル! まずは辻斬り!」
アブソルは軽く地面を蹴り、次のの瞬間、一気にユキメノコとの間合いを詰める。
「速いですね……ッ! ユキメノコ、躱しなさい!」
間一髪でユキメノコはふわりと浮かび上がり、惜しくも鎌の一撃は空を斬る。
「冷凍ビームです!」
間髪入れず、ユキメノコは冷気の光線を撃ち出す。
「アブソル、火炎放射!」
対してアブソルは灼熱の業火を噴き出して冷気を打ち消し、さらにユキメノコを狙うが、ユキメノコは再び炎を避ける。
「シャドーボール!」
そしてユキメノコの手から影の弾が放たれる。
「アブソル、辻斬り!」
直線を描いて襲い来る影の弾を、アブソルは鎌を振るって切り裂く。
(こいつ、一つ一つの切り替えが速いな……)
このユキメノコは、攻防を素早く切り替えることが出来、さらに技の出が非常に速い。
特にシャドーボールは技の速度自体も非常に速い。
アブソルが悪タイプなのでダメージは少ないが、アブソルのうちに倒しておきたい。
だが。
「流石に、悪タイプ相手となると相性は悪いですね。しかも炎技持ち。やはり、ここはこうしましょう」
シズカの言葉を受け、ユキメノコは腕を広げ、天を仰ぐ。

「ユキメノコ、霰です!」

天を仰いたユキメノコが、上空へと極寒の冷気を放つ。
その冷気は天井で黒い雲を作り、その刹那、霰が降り始める。
「霰か。一定ダメージはちょっと痛いけど、そんなに影響はないよな」
レオの言葉を受け、当然だ、とでも言うかのようにアブソルはレオを一瞥する。
「っし! アブソル、辻斬り!」
再び軽く地面を蹴り、アブソルは一瞬でユキメノコに近づき、すれ違いざまに額の鎌を振りかざす。
しかし。

そこにいたはずのユキメノコが、突然消えてしまった。

「何だ!?」
突然の事に驚くレオ。
アブソルも驚いたように見えたが、周囲を警戒し、ユキメノコの気配を探る。
対して、ユキメノコはいつの間にかシズカの近くまで戻っていた。
「ユキメノコの特性、雪隠れです。霰の天候で回避率が上昇する特性です」
「回避率って、そんなもんじゃないでしょう。気配すら消えてましたよ」
「ユキメノコのゴーストタイプの力もありますね。雪に紛れて消える雪女のように、気配も消してしまいますよ」
レオは僅かに歯噛みする。
先鋒のムウマージといい、ゴーストタイプらしい変則的な戦術が非常に戦いづらい。
「さあ、ユキメノコ、冷凍ビームです!」
ユキメノコが口から冷気の光線を放つ。
「アブソル、躱してサイコカッター!」
冷気の光線を横へと躱し、アブソルは額の鎌に念力を込め、ユキメノコへと振りかざす。
「ユキメノコ、躱しなさい!」
「アブソル、逃がすな! もう一度だ!」
一発目の斬撃は避けられたが、アブソルは気を集中させ、気配を消したユキメノコの位置を見抜く。
二度目の斬撃は、雪隠れを発動させたユキメノコを捉えた。
「流石です。ユキメノコ、十万ボルト!」
だがユキメノコの体勢の切り替えが速い。
すぐに体勢を整え、すかさず強烈な電撃を放つ。
アブソルは回避しようとしたが間に合わず、電撃の反撃を喰らう。
「くそっ、やっぱり速え! アブソル、火炎放射!」
体に残る痺れなど気にせず、アブソルは目を見開き、灼熱の炎を放つ。
しかしまたしてもユキメノコは雪隠れを利用し、雪に溶け込み、炎を躱してしまう。
「ユキメノコ、シャドーボール!」
火炎放射が切れたところへ、猛スピードで影の弾が飛んでくる。
効果は今一つだが、アブソルの体勢を崩すのには十分。さらに、
「冷凍ビームです!」
その一瞬の隙を狙い、冷気の光線が襲い掛かる。
「そこか! アブソル、辻斬り!」
何とかアブソルは冷凍ビームを躱し、一気にユキメノコへと迫る。
だが、やはり鎌を振るった時には既にユキメノコの気配は消えている。
「シャドーボール!」
「そこだ! サイコカッター!」
ユキメノコが現れ、高速の影の弾を放つ。
その瞬間、アブソルも鎌に念力を込め、ユキメノコを切り裂く。
今度はお互いの技が命中した。アブソルが体勢を整える隙に、ユキメノコは再び消えてしまう。
「成る程、攻撃する瞬間は危ないのですね。さて、どうしましょう」
困ったような口調のシズカだが、対照的に顔には寧ろ戦いを楽しむような、薄い笑みを浮かべている。
(ちくしょう、本当に戦いづらい!)
ウチセトにもゴーストタイプ使いのジムリーダーがいたが、ここまで戦いづらい戦法はして来なかった。
初めて相手にするパターンというのもあり、余計に戦いづらい。
(とりあえず霰をどうにかしないといけない。待つのを止むしかないけど、また使われたらそれこそループだよな……)
「さあ、考え事をしてる暇はありませんよ! ユキメノコ、冷凍ビーム!」
「ちっ、アブソル、火炎放射!」
ユキメノコが放った冷気の光線を、アブソルは灼熱の炎で打ち消す。
その時。
(まてよ)
レオの頭に、考えが浮かぶ。
(奴はさっき、どうやって霰を出現させていた?)
もしも。
頭上の黒雲が、普通の水、水滴で出来た雲ではなく、冷気で作られているのだとしたら。
閃いた。
レオはニヤリと笑うと、アブソルに次の指示を出す。

「アブソル! 天井に向かって火炎放射!」