二次創作小説(紙ほか)

Re: 第六十五話 失策 ( No.152 )
日時: 2013/08/15 14:33
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

「ヨノワール、岩雪崩!」
ヨノワールが両手を掲げると、虚空から無数の岩がポッチャマへと降り注ぐ。
「ポッチャマ、アクアジェット!」
対してポッチャマは、水を纏って突進する。
一気に前に跳んで岩を躱し、そのままヨノワールに突撃する。
「迎え撃ちなさい! 雷パンチ!」
「来るぞ! ドリル嘴に変更!」
ヨノワールは拳に雷撃を纏わせ、ポッチャマを迎え撃つ。
対してポッチャマは勢いそのままに、嘴を伸ばしてドリルの如く回転しながら突っ込む。
拳と嘴が激突し、威力は互角。しかし、
「雷パンチ!」
雷撃を纏ったヨノワールの左拳が、ポッチャマを捉えた。
右腕が利き腕なのか、右拳に威力は劣るようだが、それでも効果抜群、ポッチャマのダメージは大きい。
「なかなか痛いな……ポッチャマ、大丈夫か?」
ポッチャマは起き上がり、レオの方を振り向き、勿論、と頷く。
「よっし! ポッチャマ、水の波動!」
ポッチャマは水の力を溜め込み、波動状に凝縮した弾を放つ。
「ヨノワール、喰らい付く!」
腹の口を開き、ヨノワールは水の弾を噛み砕く。
「うーん、どうにも展開が単調になりがちですね……」
それでは、とシズカは続け、
「接近戦を狙いましょうか。ヨノワール、喰らい付く!」
腹の口を大きく広げ、ヨノワールが襲い掛かる。
「接近戦は危ないよな……ポッチャマ、躱して冷凍ビーム!」
ポッチャマは後ろに下がって冷気の光線を放つが、ヨノワールは冷気の光線すらも喰らい付き、粉砕し、さらにポッチャマに狙いを定めてくる。
「雷パンチが怖いんだよな……ポッチャマ、水の波動!」
無駄だと分かっていてもポッチャマは水の波動を放つが、やはり大口に噛み砕かれてしまう。
「さあ、逃げられませんよ!」
ガチガチと音を立て、ヨノワールが迫ってくる。
「しょうがねえ! ポッチャマ、アクアジェット!」
ついにポッチャマが水を纏い、突貫する。
「やっとその気になりましたね! ヨノワール、迎撃しなさい!」
ヨノワールも腹の口を思い切り広げ、ポッチャマを迎え撃つ。
しかし、
「ヨノワールの弱点は知ってるんですよ! ポッチャマ、水の波動!」
ポッチャマは水の波動をヨノワールの口の中に撃ち出す。
精一杯口を広げていたヨノワールは、噛み砕くことが出来ず、弱点の口内に水の波動の直撃を喰らう。
かつてウチセト地方で、レオはトゥレイスという男と戦ったことがある。
その時に、ヨノワールの弱点は口内だと知ることが出来たのだ。
「やっぱり過去の戦いは、全部今までの力になってるよな」
シズカに聞こえない程度に、レオは小さく呟く。
「追撃だ! ポッチャマ、ドリル嘴!」
「ッ、ヨノワール、岩雪崩!」
ポッチャマは嘴を伸ばし、ドリルのように回転しながら突っ込む。
ヨノワールが虚空から無数の岩を落とし、止めようとするが、ポッチャマの動きに追いつかず、嘴の一撃がまともに命中する。
「なかなかやりますね。ですが、ヨノワールが本来優れるのは耐久力。まだまだ、やれますよ」
立て続けに攻撃を喰らったヨノワールだが、それでも体勢を立て直し、拳を握り締める。
「とはいえ、接近戦でも厳しいときますか」
少々困ったような表情をし、シズカは続ける。
「ではこうしてみましょう。ヨノワール、岩雪崩!」
ヨノワールは両手を掲げ、虚空から無数の岩を落とす。
しかし、ポッチャマに、ではない。
無数の岩は、ヨノワールの真上に降り注ぐ。
「!? 何をする気だ……!」
何か来る。
警戒するレオを見て、シズカはうっすらと笑うと、
「ヨノワール、雷パンチ!」
両手に雷撃を纏い、落ちて来る岩へヨノワールは次々とパンチを繰り出す。
それによって、電撃を帯びた岩が次々とポッチャマへ襲い掛かる。
「な、何だこりゃ!?」
ヨノワールはとにかく岩を前に飛ばすだけのため、全てがポッチャマを狙っているわけではないのだが、それ故に避け辛い。
「躱すのは難しいよな……しょうがねえ、ポッチャマ、ドリル嘴!」
ポッチャマは嘴を伸ばし、回転しながら地を蹴り、突っ込む。
しかし、先ほどは全て破れた岩だが、今度は電気を帯びているのもあり、やすやすと貫くことが出来ない。
最後の岩を破壊すると同時、ポッチャマの動きは止まってしまった。
そして、その僅かな隙は、最大の隙でもあった。
「ヨノワール、雷パンチ!」
動きを止めた瞬間を見計らい、ヨノワールは一気にポッチャマとの距離を詰め、雷撃を纏った拳を叩きつける。
「まずい! ポッチャマ、水の波動!」
レオの判断は正しかった。
この距離とタイミングでは、絶対に回避出来ない。
だから、ポッチャマは咄嗟に水の力を込めた波動の弾を放つ。
しかし、それでもヨノワールのパワーには及ばない。
雷撃の拳は水の波動を打ち破り、右拳が今度こそポッチャマを捕らえた。
「ポッチャマ!」
ポッチャマの小さい体が宙を舞い、床に落ちる。
咄嗟の水の波動が功を奏したのか、まだ戦闘不能ではないようだ。
とはいえ、もう体力はほとんど残っていないだろう。
何せ、耐久力のそこそこあるトゲチックを僅か数発で突破した破壊力を持つヨノワールだ。これでまだ倒れていないのがよほど幸運だった。
「すぐには立てないでしょう。これで決めます。ヨノワール、怒りの炎!」
しかし。
ここで、シズカは一つの小さなミスを犯した。
すぐには立てないだろうとはいったものの、ここでシズカはポッチャマの特性、激流を恐れた。
雷パンチを使えば、確実に仕留められるが、仮に激流の水技を至近距離で喰らえば、それこそこちらが危うい。
だからシズカは怒りの炎を指示した。
効果今一つとはいえ、確かにこの体力なら仕留められるだろう。
「くっそ、ポッチャマ、立ってくれ!」
レオが必死に叫ぶ。
ポッチャマは体を震わせ、そして、何とか立ち上がった。
しかし、すぐそこには荒れ狂う炎。
(やはり怒りの炎を指示して正解でした。ここで不用意に近づけば、それこそ喰らい付くでも使っていれば、また腹の中に激流の水の波動を叩き込まれたかもしれません)
しかし。
ポケモンバトルというのは、その小さなミスが命取りになる。

「これに懸けるぞ! ポッチャマ! 気力を振り絞れ! ドリル嘴!」

(え?)
シズカの思考がそこで止まる。
アクアジェットなら分かる。しかし、この局面でのドリル嘴の意図が分からない。
ポッチャマは大きく啼き、最後の力を振り絞り、嘴を伸ばし、高速回転と共に飛び出す。
炎の中に突っ込むポッチャマ。そして、怒りの炎に変化があった。
ポッチャマの高速回転に呼応し、ポッチャマを中心に炎が渦を巻き始めたのだ。
「!?」
言うなれば、炎のドリルとでもいうべきか。
「……ッ! ヨノワール、雷パンチ!」
右腕を振り回し、全力で雷撃の拳を振るうヨノワール。
しかし、炎の力を借りたポッチャマの嘴には勝てず、拳は弾き返され、さらにヨノワールの腹に炎のドリル嘴が激突する。
かなりのダメージだったのか、流石のヨノワールも叫びをあげながら吹っ飛ばされる。
その叫びをあげた瞬間を、レオは見逃さない。
ヨノワールが叫んだ、つまりは、
「ポッチャマ! ヨノワールの口内に、水の波動だ!」
ポッチャマは水の力を凝縮し、波動の弾を生み出す。
激流の力で二倍の大きさに膨れ上がったその水の波動は、一直線に飛び、再びヨノワールの弱点、すなわち腹の口の中に命中した。
ヨノワールはのたうち回り、断末魔のような叫びを上げ、その場に崩れ落ちる。
「ヨノワール!」
床に倒れた時にはすでに、ヨノワールは戦闘不能となっていた。



「いいバトルをさせていただきました。私の心の弱さが出てしまいましたね。最後のあの場面では、思い切って攻めていくべきでした」
「こちらこそ、いいバトルでした。前半二体のトリッキーな戦術も、後半二体のパワータイプも、とても強かったです」
「ですがこうして貴方は私に勝利しました。ツクモジム突破の証を差し上げましょう」
シズカが箱を取り出す。雲のような白い形の枠で、表面は紫、中央には青い目のような模様があるバッジだ。
「ツクモジム制覇の証、プリオルバッジです。是非、受け取ってください」
「ありがとうございます!」
レオのバッジケースに、五つ目のバッジ、プリオルバッジが填め込まれた。