二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第六十六話 少女 ( No.157 )
- 日時: 2013/08/15 14:34
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)
シズカに勝利し、レオはツクモジムを出る。
空はやはり曇っているが、ジムには朝早く行ったため、まだ実は昼にもなっていない。
まずはポケモンセンターでポケモンたちを回復し、その後レオはタウンマップを広げる。
「次の一番近い町は……ジムのある町だとシヌマシティだけど、その間にスティラタウンって町があるな」
シヌマシティではデンエイシティで知り合ったママルが待っているので、一刻も早く行きたいところだが、まずレオはスティラタウンに行くことにした。
スティラタウンまでの道のりはそう遠くなく、夕方前に着くことが出来た。
そこそこの家はあるものの、ジムのある町に比べると、やはりどこか寂しげではある。
町の周りには、広い森が広がっているらしい。
「とりあえず、今日はここで休むとするか」
シヌマシティに向かうのは明日と決め、レオが町に入ろうとしたその時。
「ウパー、水鉄砲!」
すぐ横の木の上から、レオの頭目掛けて水が降ってきた。
バシャア! と。
レオは、何故かいきなり頭から水を被ることになった。
木の上を見上げると、そのには水色のウーパールーパーのようなポケモンがいる。
「……」
無言でレオはルクシオを繰り出す。
まあ水タイプだろうと判断したレオは、
「ルクシオ、十万ボルト」
無表情のままルクシオに指示し、ルクシオはそのポケモン目掛けて強烈な電撃を繰り出す。
しかし、
「あれ?」
電撃をまともに喰らっても、そのポケモンは平然としている。
そして、
「キャハハ! ウパーは地面タイプももってるから、電気技はきかないよ!」
木の枝や葉に隠れてよく見えないが、少女の幼い声が聞こえてくる。
そしてどうやら、このポケモンはウパーというらしい。
作戦変更。レオは今度はヘラクロスを繰り出し、
「ヘラクロス、あの木の後ろに誰かいる。捕まえてきてくれ」
ヘラクロスは羽を開くと、木の後ろに回り込む。何かを見つけたようだ。
「うわっ! 何かきたよ! ウパー、水鉄砲!」
ウパーは後ろに水鉄砲を放つが、レオが水浸しになる程度の威力しかない。
ヘラクロスにはほとんど効かず、
「きゃっ! いたーい!」
その少女はあっさりと捕まった。
ヘラクロスがその少女を捕まえ、レオの元へ運んできた。
まだ非常に幼い少女だった。髪は茶色で長く、赤いスカートを履いている。六歳くらいだろうか?
「なにするのよーっ!」
ヘラクロスが少女を下ろすと、その少女は頬をプクッと膨らませてレオを睨む。
「悪い悪い。だけど、お前が最初に水鉄砲をぶつけてきたんだぜ?」
「きづかなかったあなたがわるいのよ。きづいてよける人だってちゃんといるわよ!」
そして、その少女はレオの後ろに回る。
かと思うと、慣れた動きでレオに掴みかかる。
「うおっ!?」
驚くレオを尻目に、その少女はまるで気に登るかのように、レオの肩まで登り、レオが肩車をしているような形になる。
「ねえ、私が行きたいとこまでつれてってよ」
「何だよそれ!?」
しかし、何をどうしてもこの少女は離れなさそうだ。
止むを得ず、レオはこの少女を運んで行く事にした。
とはいえ、そこまで嫌な訳でもなかった。
というのも、
(ま、子供ってのは、本来こんなもんだよな……)
ウチセトのジムリーダーや、『ブロック』のメンバーにも、やたら大人びた子供がいた。
子供というのは本来こうあるべきだと、レオは自分で納得する。
「ところで、お前名前何て言うんだ?」
「マリアだよ。おにーちゃんは?」
「僕か? 僕はレオだ」
「レオだね。おっけー、じゃあレオ、とりあえずスティラの一番大きな建物に連れてって」
「っし、一番大きな建物だな。任せろ」
いつの間にか、レオも乗り気になっていた。
マリアを乗せたまま、スティラタウンの一番大きな建物に向かう。
「ところで、あのウパーは何だったんだ? マリアの年を考えるとお前のポケモンじゃないだろ?」
「うん。私の友だちだよ。森の中にすんでるポケモンはみんな友だちなんだ」
「へーえ。森の中に家でもあんのか?」
「うん。ちょっとまえに、エフィシが森に家をつくってくれたんだ」
冗談で聞いたのだが、本当だったらしい。
「エフィシ? 誰だそれ」
「この町にすんでる、やさしいおにーちゃんだよ」
てゆーか、とマリアは顔をしかめ、
「この町で私の味方をしてくれるのは、エフィシだけだよ」
「?」
マリアの言っていることがよく分からず、マリアを見上げるレオ。
「ほかのみんなは私が森に行こうとするとすぐおこるんだよ。森のポケモンはみんなおもしろいのに、あぶないからやめなさい、って」
それはまあ当然だろう、とレオは思ったが勿論口には出さない。先程ウパーと一緒にいた時のマリアは、とても楽しそうだった。
「お前の親はどう言ってんだ?」
「いないよ」
即答が返ってきた。
「私のおかあさんとおとうさん、私がもっとちっちゃいころにいなくなっちゃったんだ」
声のトーンを変えずに、マリアは言う。
「このことをいうといつもあやまられるんだけど、あやまらなくていいよ。私はさびしくないし。だって森には友だちがたくさんいるからね」
「そっかあ。 町の皆も、分かってくれるといいのにな」
「うん。森のポケモンたちはほんとうにみんなおもしろいんだよ」
あーあ、とマリアは軽く息をつき、
「私も、一回でいいからポケモンになってみたいなあ」
「ポケモンになれたら、何がしたいんだ?」
「お空をとんだり、お水の中をおよぎまわったりしてみたいな。あと、ポケモンになったらおこられることもないでしょ?」
「それはまあ、そうだな」
「あ、そうだ、今ホロ君っていうおもしろい子があそびにきてるんだよ。まだレオより小さいのに、とってもつよいんだよ!」
「本当か? それは一度戦ってみたいな」
そんな事を話しながら歩いていると、
「ここだよ」
どうやら着いたらしい。
見た感じは、それほど大きくない宿舎といったところか。
しゃがんでマリアを下ろすと、マリアはその建物の中に入っていった。
レオも入ろうとするが、
「あれ?」
建物の扉の上に、見覚えのある模様が描いてある。
「これは……『ブロック』の紋章じゃないか」
どうやら、この建物は『ブロック』の支部の一つであるらしい。
とりあえず、レオもマリアを追って建物に入る。
内装も、いかにも宿舎です、というような作りである。
もしかしたら、本当に宿舎だったところを『ブロック』が買い取ったのかもしれない。
マリアは迷う事なく通路を進んで行く。
「キャハハ! レオ、おそいよー! はやくー!」
「マリア、速えよ……。僕はこの建物初めてなんだからさあ……」
階段やら通路がやたらと長い上に、マリアを見失わないように走っているので、どうしても疲れてしまう。
マリアが全く疲れているようにみえないのが不思議である。子供というのはそんなものだ。
階段を登り切り、何とかマリアに追いつくと、
「ここだよ」
普通の部屋の扉よりも少し豪華に装飾されているその扉を、マリアは開く。