二次創作小説(紙ほか)

Re: 第七十話 襲来 ( No.163 )
日時: 2013/08/15 14:36
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

次の日の朝。
「失礼するぜ」
レオたち四人が集まっているエフィシの部屋に、二人の人間がやってきた。
「おお、リョーマ、テレジアさん、来てくださいましたか」
アカノハ支部からの応援として、リョーマとテレジアが駆け付けた。
「あれ? リョーマさん、N・E団のアジトを探していたんじゃ……?」
テレジアと通話した時の会話を思い出し、疑問の声を上げるレオ。
「ああ。本当は俺はここに来る予定は無かったんだが、さっき偶然テレジアに会ってな。特に焦って調べる必要もねえし、事情を聞いてこっちに来たって訳だ」
「と、そういう事です。私たちが来たからには、心配ありませんわ」
「そういや、シヌマの方にも応援を送ったんだろ? 返信は?」
そう言えばエフィシはまだシヌマ統括から返信が来ていないと言っていた。
「それが、まだ来ていないのですよ。メッセージを見ていないのでしょうか……」
「はあ、まああいつにはよくある事か。ま、代わりに俺が来たと思ってくれや」
ふう、と息を吐き、リョーマは言葉を続ける。
「奴らが来るまでにはまだまだ時間がある。やれることはしっかりやっておこうぜ」



「時が来たか」
遠く離れたN・E団の本拠地で、輝天のトパズは目を開き、立ち上がる。
「ソライト、そろそろ時間だ。『ホエール』の調子は」
『調整は終わっています。問題ありませんよ。すぐに出動出来ます』
無線の向こうから、蒼天将の声が聞こえる。
「よし。それでは、出撃するぞ」
『分かりました』
ソライトは短く答え、通信は切れる。
トパズは無線を仕舞わず、通話の相手を変え、再び通信を繋げる。
今度の通信相手は、全ての輝天将の部下。
「輝天隊に告ぐ! これよりスティラタウンへと出撃する。今すぐ『ホエール』に乗り込め! 繰り返す、これよりスティラタウンへと出撃する。今すぐ『ホエール』に乗り込め!」
自身の部下に出撃を告げ、トパズも『ホエール』の元へ急ぐ。
「来ましたね、トパズ。さあ、こちらです」
『ホエール』の前では、蒼天のソライトが待っていた。
先に部下が乗り込み、最後にトパズが乗り込む。
「よし! それでは、出動! 目標、スティラタウンへ!」
トパズの号令と共に、『ホエール』——N・E空中戦艦が浮上する。



スティラタウンの住民は全てポケモンセンターか『ブロック』支部に避難させた。
マリアは危なかっしいので、森の奥で隠れておくようにとエフィシが言った。
「これからN・E団という悪い奴らが来ます。何をしてくるか分かりませんから、マリアさんは森に隠れているといいでしょう。一週間くらい隠れていた方がいいかもしれません」
「わかった。だいじょーぶだよ、もともと一人で住んでたし、食べものもポケモンたちがもってきてくれるから」
こんな感じのやりとりがあった。
そして現在。遂に午後七時、N・E団の予告の時間だ。
時計の秒針が、12を指したその瞬間。

ドガァン! と。
近くで爆発が起き、同時に大量のN・E団の下っ端が姿を表した。

「来ましたね! 私はここを守ります。皆さん、戦いの時間です! 何としても、奴らを撃退します!」
エフィシの声と共に、『ブロック』の構成員たちがモンスターボールを手に取り、走り出す。
「よし、ここはエフィシに任せて、俺たちも行くぞ! サクッと下っ端を殲滅だ!」
「ええ。とっとと終わらせてしまいましょう!」
リョーマとテレジアがそう言い、構成員たちに加勢すべく動き出す。
しかし、

「おやおや、これはなかなか豪華な顔触れですね」

突然、空から男の声が聞こえた。
見上げると、そこには円盤のようなものに乗って空に浮かぶ人間が。
黒の執事服を着、手袋をし、朱色の髪を少し伸ばした美青年だ。
胸に付いているのは、N・E団の紋章のバッジ。
「どうです? N・E団の科学力の産物、フライングボードです。充電式で、最高24時間飛べる優れものです」
「知るかそんなもん。お前は何者だ。まさか情報のなかった最後の天将か」
「いえいえ」
リョーマの一言を、執事服の男は軽く返す。
「残念ながら、私はそんな大層な身分ではありません。私は緋天将直属護衛、名前はブレイズ」
執事服の男は、一礼してその名を名乗る。
「何? 緋天将だと?」
「ええ。今回の任務は重要ですから、輝天隊の他に緋天隊も動員されております。ちなみに輝天隊はまだ来ておりませんが、もう少しで到着するかと」
「ちょっと待て。つまり、あの下っ端共は」
「ええ。あの下っ端は、緋天隊のものです。もうすぐ、輝天隊の大量の下っ端が増援に来ますよ」
一通り話すと、ブレイズはフライングボードから飛び降り、
「そういうことですので、一戦交えさせて頂きます」
静かにボールを取り出す。
その時、
「ここは私に任せてください」
エフィシが一歩進み出る。
「スティラ支部統括として、ここは私が食い止めます。無関係な住民たちには、指一本触れさせない」
リョーマたちの返事も待たず、エフィシもボールを取り出す。
「分かった。エフィシ、負けるなよ! テレジア、行くぞ。輝天隊が来る前に、緋天隊の下っ端を出来るだけ蹴散らすぞ」
「了解です」
そして、二人は大勢が戦っている中へ飛び込んで行く。
「レオ君、ホロ君! 貴方たちも、リョーマに応援してあげてください」
レオの方を振り向かず、エフィシは言う。
レオとホロは頷き、リョーマの後を追って駆け出す。
「さて、N・E団、貴方の相手は私だ。速攻で終わらせてくれる」
ブレイズと対峙すると、エフィシの目つきが変わる。
同時に、口調も厳しいものへと変化する。
だが、そんはエフィシを見ても、ブレイズは顔色一つ変えない。
「ふふ、出来るなら名前で呼んで欲しいですかね。私にはブレイズという名前があるのですから」
そして、二人は同時にボールを投げる。


下っ端軍との戦いに向かうリョーマとテレジア。
しかし、その途中で、テレジアが突然足を止める。
「テレジア、どうした?」
振り返り、怪訝な表情を浮かべるリョーマ。
対して、テレジアは薄笑いを浮かべ、リョーマの顔を見上げる。
「リョーマさん。いや、リョーマに変装した誰かさん。いい加減、本性を見せたらどうですの?」
「なに? おいテレジア、突然何を言い出すんだよ」
「誤魔化しても無駄ですわ。リョーマさん、貴方は偽物です。さっさと正体を表しなさい」
テレジアはさらに厳しく詰め寄る。
対して、
「あーあ、ばれちゃいました?」
リョーマの声が、少年のようなものに変わる。
「おっかしいなー、『ブロック』副統率のデータは隅々まで読み込んだし、完璧な変装のはずだったんだけどなー」
そして、リョーマに変装した何者かは自分の顔を掴み、思い切り引っ張る。
リョーマの顔が剥がれ、別の人間の顔が現れた。
さらに、着ている服も掴み、バッと脱ぎ捨てる。
女のような顔立ちと、一つに束ねたやたらと長い黒髪だが、声からして男だ。
サングラスをかけ、白いハンチングを被り、服装は白いポロシャツに水色のパーカー、黒のカーゴパンツと、簡素でラフな格好。
年は、レオと同じか、それより少し下くらいだろう。
「どうして分かったんです? 僕の変装は完璧だったはずなのに」
「データを完璧に把握していたって、あまりにもプライベートな事は分からないはずですわ。リョーマさんは、エフィシさんと話す時はいつもやたらとエフィシさんをからかうんですの。エフィシさんはあまり気に留めていないから分からなかったようですが、私の目は誤魔化せませんわ」
種が分かると、その少年は額に手を当て、
「そういうことですか。僕、あんまり戦うの好きじゃないですし、変装がばれた以上、本当は逃げちまいたいところですけど」
ちらりとテレジアの表情を見、さらに言葉を続け、ボールを取り出す。
「トパズ様からの指令もありますし、時間稼ぎさせて頂きますね。僕の名はマツリ、輝天将直属護衛です。以後お見知り置きを!」