二次創作小説(紙ほか)

Re: 第七十二話 増軍 ( No.165 )
日時: 2013/08/15 14:37
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

武装した鯨のようなその軍艦のようなものが、ゆっくりと下降してくる。
もはやどのような原理で空を飛んでいるのか、そもそもこんな巨大なものがどうして空を飛べるのか知りたくなるほどの大きさだが、今一番大事なのはそこではない。
重視すべきは、戦闘のプロ、輝天隊が到着したということだ。
鯨の口のような部分が開き、舌を模したような大きな赤い板がゆっくりと伸びる。
その上には、百人を軽く超える下っ端が乗っている。
板が着地すると、その下っ端たちは動きを乱すことなく、すぐに整列する。
それを五回繰り返すと、スティラタウンの一角がN・E団の下っ端で埋まってしまう。
そして、
「輝天隊、出撃せよ! 緋天隊に加勢し、敵軍を蹴散らすのだ!」
鯨型の軍艦から、スピーカーを通したようなトパズの声が聞こえる。
それと同時に、下っ端たちは統制の取れた動きで進軍し、『ブロック』構成員たちの背後から攻撃を仕掛ける。
これで『ブロック』構成員は、緋天隊と輝天隊に挟まれる形となった。
「くっ……後ろと戦う人数を増やせ! 輝天隊の方が厄介だ!」
『ブロック』のリーダー格が叫ぶが、不利な状況は全く変わらない。
こちらは隊を二つに分けなければならないのに対し、向こうは隊が追加されたため、今まで通りに戦える。
さらに。

「うん、いい感じだね。そのまま押し切っちゃおうか!」

輝天隊の下っ端の後ろの方に、明らかに下っ端ではない女がいるのをホロは見た。
恐らくは、あの女が輝天隊の大将だろう。
「あいつを倒せばいいんだな。頼む、ドサイドン!」
ホロは素早くボールを取り出し、ドサイドンを繰り出す。
「アームハンマー!」
ドサイドンは両腕を思い切り地面に叩きつけ、その女目掛けて衝撃波を起こし、その線上にいる下っ端をまとめて吹っ飛ばす。
統制が少し乱れたその隙を狙い、ホロは一気にその女の所まで走り抜く。
「お前の相手は俺だ!」
ボールを手に、ホロはその女がの前に勢いよく飛び出す。
見たところ、レオと同じくらいの年だろう。クリーム色の髪はサイドテールにし、黒のカッターシャツの上に白いブレザーを着、紺色のスカートを履いている。
「あら? 戦うのはいいけど、私の相手はこんな子供なの?」
その女はホロを見て、首を傾げるが、
「ま、いっか。後ろで指揮を執るよりバトルする方が楽しいしね。まあでも、もし負けても泣かないでね?」
「それはこっちの台詞だぜ。あと、俺とそう年も変わらない人にそんなこと言われても何も怖くないぞ?」
ホロがそう言った次の瞬間。
「何ですって……?」
その女の口調に、明確な怒りがこもる。
「誰が貴方とそう年が変わらないってのよ!? 私は確かに子供に見えるけど、それはよく分かってるけど! 私はもう二十歳なんだよ! 立派は大人なんだよ!」
急に怒り出す女に、少し押されるホロ。
「許さないんだから! このシーアス、絶対に貴方を倒すんだからね!」
シーアスと名乗ったその女は、勢いよくボールを取り出す。
「……ま、とりあえずはポケモンバトルだよな。悪いけど勝つのはこっちだぜ!」
気を取り直し、ホロも気合を入れてボールを構える。


ロズレイド対アブソル。ダメージはお互いに同程度受けている。
先ほどから、一歩も譲らない互角の戦いを繰り広げていたレオとガーネットだが、
「な……何だありゃ!?」
スティラタウンの別の一角で、レオが上空の軍艦を見上げて叫ぶ。
「ついに『ホエール』の登場ね」
対照的に、ガーネットの声は落ち着いていた。
「ホエール? 何だよ、そりゃ」
「N・E団の科学力の産物、N・E空中戦艦こと『ホエール』。名前の由来は見た目通り。輝天将の有する軍艦よ」
となると、ついに輝天隊がやって来たということになる。
「まあそんなに焦る必要はないんじゃない? トパズからの挑戦状を読んだなら知ってると思うけど、今回の私たちの目的はあくまでとある物の回収。トパズは戦線には出てこないわ」
それより、とガーネットは続け、
「今、目の前に脅威がいるんじゃないの? ロズレイド、ヘドロ爆弾!」
ロズレイドが有害なヘドロの塊を撃ち出す。
「っ、アブソル、躱して火炎放射!」
ヘドロを躱すと、アブソルは口から灼熱の炎を発射する。
「ロズレイド、もう一発よ」
さらにロズレイドはヘドロの塊を撃ち、炎を相殺すると、
「ギガドレイン!」
ロズレイドはまるでダンサーのような素早い身のこなしで、一気にアブソルとの距離を詰めると、手に持つ青い方の薔薇から棘だらけの蔦を伸ばす。
「躱して辻斬り!」
絡みつこうとする蔦を掻い潜って、アブソルはロズレイドの横を通り過ぎ、そのすれ違いざまにロズレイドを切り裂く。
「ロズレイド、シャドーボール!」
まだロズレイドは倒れない。
アブソルの方に向き直り、三つの影の弾を飛ばす。
しかし、その影の弾をアブソルは額の鎌で難なく切り裂き、
「辻斬り!」
再びロズレイドとの距離を詰め、額の鎌を振りかざす。
しかし、
「ロズレイド、ギガドレイン!」
アブソルが動くよりも速く、赤い方の薔薇から飛び出した蔦がアブソルに絡みつき、その体に刺さる棘からアブソルの体力を吸い取る。
少しすると蔦はほどけ、アブソルから離れるのだが、
「……? アブソル、どうした?」
アブソルの調子がおかしい。
まるで麻痺したかのように、目を見開き、体を痙攣させている。
「あーら、ごめんなさいね」
そんな様子を見て、ガーネットがせせら笑う。
「ロズレイドの薔薇の中の蔦には、毒が含まれてるのよ。毒の種類は左右で違うんだけど、どっちも強力な猛毒。そのアブソルは、蔦の棘を通じて、毒を送り込まれたってことね」
ガーネットは薄ら笑いを浮かべ、アブソルを見据えると、
「今のうちに決めちゃいましょうか。ロズレイド、止めを刺しなさい。ギガドレイン」
動けないアブソルの元へと、花束を構えたロズレイドがゆっくりと詰め寄る。



現在、テレジアのポケモンは、もはや龍にも見えるほどの長い体を持つ、長魚のようなポケモン。上半身は肌色だが、下半身の鱗は綺麗に光り輝いている。
水タイプのミロカロス、慈しみポケモン。
マツリのポケモンは、音符のような形の頭に、カラフルな羽毛を持つ鳥ポケモン。
オオペラー、お喋りポケモン。エスパー・飛行タイプ。戦況はマツリが少々優勢。
というのも、
「くっ、戦いづらい戦術を使ってきますわね……!」
先ほどからこのオオペラー、フェザーダンスや怪しい光を駆使し、非常に戦いづらい。
物理技はないのでフェザーダンスは脅威ではないが、怪しい光は混乱させられるので厄介だ。
(それにしても)
テレジアはちらと『ホエール』を見、
(あんなとんでもない兵器を持ち合わせていたとは……本当にこいつら、何者なのですか?)
冷や汗をかきつつも、今はバトルに集中する。
「なかなか当たらないですねえ……オオペラー、怪しい光!」
オオペラーは瞳から怪しく光る光線を発射する。
「ミロカロス、躱しなさい!」
ミロカロスは体を捻って光線を躱すと、
「吹雪です!」
雪を風に乗せ、荒れ狂う冷たい風を撒き散らす。
「オオペラー、ハリケーン!」
吹雪に対抗し、オオペラーも激しく羽ばたき、暴風を起こす。
互いの暴風がぶつかり合い、やがて消滅する。
「そこですよ! 怪しい光!」
風が消えた瞬間を狙って、オオペラーは怪しく光る光線を放つ。
「ッ! ミロカロス、ハイドロポンプです!」
咄嗟にミロカロスは大量の水を噴射し、光を打ち消し、さらにその水はオオペラーにも襲いかかる。
だが、その時にはオオペラーは既に空に飛び上がり、水を躱していた。
「これは……少々手こずりそうですわね……!」
オオペラーを見据え、テレジアは忌々しそうに小さく呟く。