二次創作小説(紙ほか)

Re: 第七十五話 標的 ( No.168 )
日時: 2013/08/15 14:38
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)

チルタリスが、恐怖と絶望の込められたような歌を歌い出す。
「滅びの歌……聴いた者を一定時間後に戦闘不能にしてしまう技ですか。しかし、このタイミングでなぜそれを? 貴女のチルタリスも倒れてしまうのに」
「だからこそですわ」
マツリの疑問に、テレジアは軽い口調で返す。
「こっちとしては貴方との戦いで時間を潰す余裕なんてないのですよ。一刻も早くあちらの構成員たちに加わらなければならないのですから、時間をかけて勝つより、引き分けでさっさと決めた方がましです」
テレジアが話している間にも、滅びの歌のカウントは減って行く。
「だったらそれより前に決めるまでですよ! フォリキー、サイコキネシス!」
「全て打ち消しますわ。チルタリス、大文字!」
フォリキーの放つ念力の波を、チルタリスは大の字型の炎を噴き出し、相殺する。
「っ、電磁砲です!」
「無駄ですわ。躱しなさい」
今度は電撃を一点に集め、砲弾のように撃ち出すフォリキーだが、チルタリスに楽に避けられてしまう。
そして。
「滅びの歌、カウント0ですわ」
テレジアがそう言ったと同時、突然現れた闇の瘴気がフォリキーとチルタリスを包む。
滅びの歌を聴いた者の力を吸い取り尽くし、フォリキーとチルタリスは同時に地面へと倒れる。
「ありがとう、チルタリス。休んでてください。さて、これで終わりです。とっとと消えてください」
最早テレジアはマツリには目もくれず、ビークインを出し、その肩に乗って、『ブロック』構成員とN・E団下っ端の大群の中に突っ込んで行った。



ホロのディザソルとシーアスのドラピオンは、鎌と鋏の激しい打ち合いの末、相打ちとなった。
「次、行くわよ! ビビッドン!」
「よーし、頼むぜ、ガブリアス!」
シーアスのポケモンは、赤、青、黄の三色を貴重とする宇宙人のような奇怪なポケモン。
シグナルポケモンのビビッドン。電気・エスパータイプ。
対するホロのポケモンは、背中と腕に鮫の鰭のような翼を持つ、青いドラゴンポケモン。
マッハポケモンのガブリアス。地面・ドラゴンタイプ。
「ちょっと、どうして地面タイプなのよ。私のビビッドンが不利すぎるんだけど!」
「そう言われても、ここでねーちゃんがビビッドンを出したのが悪いんだぜ。ガブリアス、地震!」
ガブリアスは地面に強く踏み込み、地面を揺らして衝撃を起こす。
「ビビッドン、気合玉!」
ビビッドンは地面へ、気合を凝縮した弾を撃ち出し、地震を強引に止めてしまう。
「サイコバーン!」
さらにビビッドンは念力を溜め込み、それを爆発させて衝撃波を飛ばす。
「ガブリアス、ダブルチョップ!」
衝撃波を受けるガブリアスだが、当然それくらいでは倒れない。
ガブリアスは地を蹴って跳び、両腕の翼を連続で刃のように振るう。
「ビビッドン、気合玉!」
二連撃を喰らったビビッドンは、三本の奇妙な足でしっかりとその場に踏み止まり、気合を凝縮した弾を撃ち出す。
「ガブリアス、躱して地震だ!」
ガブリアスは跳び上がって気合玉を躱し、そのまま上空から地面へと勢いを付けて落下し、地震を起こす。
「っ、ビビッドン、サイコバーン!」
上から襲い掛かってくるガブリアスを迎撃するように、ビビッドンは念力を溜め込み、それを爆発させて一気に放出する。
ガブリアスは衝撃波をまともに浴びるが、それでもその勢いは止まらず、地面に激突、大きく地面を揺らし、ビビッドンを吹っ飛ばす。
「まだよ! ビビッドン、磁力線!」
効果抜群の一撃を何とか耐え、ビビッドンは磁力を操作し、強い磁力の波を起こす。
「ちっ、起動が見えないな……ガブリアス、ここは耐えてくれ」
ガブリアスは翼を盾のように構える。
磁力の波がガブリアスに襲い掛かるが、ガブリアスは押されながらも、吹っ飛ばされる事なくその一撃を耐え切った。
「よくやった! よっしゃ、ガブリアス、地震だ!」
ガブリアスはすぐさま反撃する。
地面を思い切り踏みつけ、大きく揺らして衝撃波を起こす。
「ビビッドン、サイコバーン!」
ビビッドンは念力を溜め込むが、少し対応が遅れたのか、放つのが遅れ、地震の威力を軽減したものの、衝撃波を喰らってしまう。
「決めるぜ! ガブリアス、龍星群!」
その隙を逃さず、ガブリアスは体内の龍の力を一点に集中させる。
その凝縮された龍の力を、エネルギー弾として真上に打ち上げる。
そのエネルギー弾は空高く打ち上げられると、空中で炸裂。
龍の力を込めた無数のエネルギー弾が、流星のようにビビッドン目掛けて一斉に降り注ぐ。
「……ッ!? ビビッドン、サイコバーン!」
慌ててビビッドンは念力を溜め込み、爆発させて衝撃波を放つが、龍星群には殆ど通用しなかった。
ビビッドンに、流星の雨が襲い掛かる。



鋏を開き、ハッサムが猛スピードで襲い掛かってくる。
「迎え撃つのはあまり賢くありませんね……コーシャン、躱してギガスパーク!」
素早く横に跳び退き、ハッサムの一撃を避けると、コーシャンは電撃を凝縮させ、破裂音を立てる大きな電撃の砲弾を撃ち出す。
ハッサムは馬鹿力の勢いがまだ止まっておらず、砲弾の直撃を受ける。
「そこです!コーシャン、火炎放射!」
その隙を逃さず、コーシャンは灼熱の業火を放つ。
ギガスパークで、ハッサムは痺れて動けないようだが、ブレイズの表情に特に変化はない。
「狙いはいいですね。しかし甘い。ハッサム、馬鹿力」
しかし、ハッサムは目を見開き、地面に鋏を思い切り叩きつける。
ハッサムの足元の地面が割れ、穴が出来、ハッサムはそこに落ちる。
火炎放射をやり過ごし、炎が消えると、その穴の中からハッサムが飛び出す。
「ま、こんなところですよ。ハッサム、バレットパンチ」
鋏を構えたハッサムは、一気にコーシャンとの距離を詰めると、弾丸のような連続パンチを放つ。
「くっ、コーシャン、サイコバレット!」
「全て打ち消しなさい。ハッサム、バレットパンチ」
コーシャンはマシンガンのように無数の念力の銃弾を放つが、ハッサムはそれに合わせて凄まじいスピードで連続パンチを打ち、念力を全て相殺する。
「ハッサム、襲撃」
一瞬でコーシャンの後ろに回ったハッサムが、鋏を振りかざす。



「トパズ様、負けてしまいました。すいません」
『ホエール』内部のトパズの元に、マツリが戻ってきた。
謝ってはいるが、その口調はどこか軽い。
「そうか。誰に負けた?」
トパズはマツリが負けた事は特に咎めない。
「『ブロック』アカノハ支部統括補佐です。テレジアって名前の」
「あいつか。最近『ブロック』に来た女だな。奴の情報はまだあまり入ってなかったはずだ、分かった情報を書いておけ。後でまた報告しろ」
そう言って、トパズはレポート用紙が何枚か入った封筒を放り投げる。
マツリはそれを受け取ると、
「了解です」
それだけ言って、部屋から出て行った。
「ソライト、そっちの解析は順調か」
マツリが部屋を出て行くのを確認し、トパズは傍で作業をしているソライトに声を掛ける。
「ええ。しかし、なかなか見つかりませんね。確かに今回のターゲットはこの町にいるはずなのですが」
ソライトが操作しているノートパソコンには、スティラタウンをある程度簡単に書いたような地図が映っている。
「まあ焦る事もないだろう。マツリがやられたとはいえ、我が軍を突破するにはそれなりに時間がかかるはずだ」
トパズがそう言った、その時だった。
ピコン、と。
パソコンから小さい音が鳴り、地図の一点に青い光が灯る。
「おっと、ようやく見つけましたよ。まさか、この森のこんな奥深くとは」
パソコンを畳み、抱えると、ソライトは立ち上がる。
「では、私も行くとしましょう。今回の任務、案外早く終わりそうですね」
「戦場での略奪行為には賛同しかねるがな」
「この組織に入った時点で、その考えは通用しませんよ」
「ふっ、それくらい分かっておるわ」
トパズの言葉を聞き終えると、では、とソライトはジバコイルを出し、部屋を出て行った。