二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第七十八話 手紙 ( No.173 )
- 日時: 2013/08/15 14:40
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Q1X0ZXes)
「やるぞ、ジバコイル!」
ホロの声に答えるように、ジバコイルはユニットを回転させる。
「よーし! ジバコイル、思いっきりヤミクラゲに近づけ!」
指示通り、ジバコイルはヤミクラゲに急接近する。
「近づいてくれるなら好都合! ヤミクラゲ、ハイドロポンプ!」
ヤミクラゲが大量の水を溜め込み、それを放つ、まさにその直前。
「ジバコイル、大爆発!」
ジバコイルの目がカッと光り、次の瞬間、文字通り大爆発した。
爆発したジバコイルは勿論戦闘不能。
そして爆心地のすぐそこにいたヤミクラゲも盛大に吹っ飛ばされ、同じく戦闘不能となった。
しかし、ホロにはまだガブリアスがいる。
「君、まさか、この時のためにガブリアスを……!」
「へへっ、ねーちゃん察しがいいな。その通りだぜ。これで俺の勝ちだ! N・E団に好き勝手させるわけにいかないからな。ちゃんと勝ったぜ」
さて、とホロは呟き、N・E団の下っ端の殲滅にかかろうとしたその時。
突然にして、森から火が上がった。
「火事か!?」
咄嗟にN・E団の仕業と判断し、シーアスの方を振り向くが、シーアスは既にフライングボードに乗って空高く飛び上がり、『ホエール』へと向かっていた。
「とりあえず、火を消さないと!」
ボールを取り出し、ホロは火の元へと向かう。
テレジアが加わった事により、流れは大きく『ブロック』側に傾いた。
テレジアが出した、人型の、物凄い筋肉と四本の手を持つ、怪力ポケモンのカイリキーは、N・E団の下っ端のポケモンだけでなく下っ端本人たちも次々となぎ倒していく。
しかし、そこに森の火事が起こった。
『ブロック』の一部が消火に向かったが、戦況は変わらない。
テレジアのカイリキーを、誰も止められないのだ。
そこに、
「テレジア!」
ボールを持ったホロが走ってきた。
「ホロさんですか。見ての通り、火事が起こっています。今すぐ——カイリキー、爆裂パンチ!——消火に向かってください。私は先にここを何とかします」
「分かった! だけどそっちも無理はすんなよ!」
「ええ。あと、火はどんどん広がっています。私の部下たちも消火に——カイリキー、横から来ますわ! 吹っ飛ばしなさい!——行っていますから、協力をお願いします!」
「よし、任せろ! すぐに消してやるぜ!」
そして、ホロは奥へと走っていった。
「ミロカロス、冷凍ビーム」
「アルデッパ、躱してメタルニッパーです!」
ミロカロスが冷気の光線を放つが、アルデッパはそれを躱し、歯を鋼のように硬化させると、ミロカロスの体を連続で三回噛み付く。
「ミロカロス、ドラゴンテール」
メタルニッパーは鋼技。あまりダメージは無く、ミロカロスは青く光る尻尾をアルデッパへと叩きつける。
「そこです。ミロカロス、ハイドロポンプ」
ミロカロスはすかさず大量の水を撃ち出す。
「くっ、まだだ! アルデッパ、パワーウィップです!」
すぐに体勢を立て直し、アルデッパは蔦を伸ばし、ミロカロスへと叩きつける。
「これは手痛い。ではミロカロス、自己再生」
「させない! アルデッパ、パワーウィップ!」
ミロカロスは自らの細胞を回復させ、体の傷を癒すが、すぐにアルデッパが伸ばした蔦を叩きつけたため、完全に回復は出来なかった。
「やってくれますね。ミロカロス、ドラゴンテール」
「アルデッパ、受け止めなさい!」
ミロカロスが青く光る尻尾を振るうが、再びアルデッパは噛み付き、尻尾を受け止める。
「同じ手は喰らいませんが。ミロカロス、冷凍ビーム」
しかし、アルデッパが反撃をたたき込む前に、ミロカロスは冷気の光線を放ち、アルデッパを引き剥がす。
「アルデッパ、パワーウィップです!」
「ミロカロス、ドラゴンテール」
アルデッパは蔦を伸ばし、思い切り叩きつける。
対してミロカロスは尻尾を青く光らせ、バットのように振り抜く。
双方の一撃が激突し、威力は互角。
(くっ……早くこいつを倒して、森の火を消さなければ! そうしなければ、マリアさんが!)
少しづつ焦りを感じていくエフィシ。
火は今や、森の奥まで広がっている。
「何を焦っているのです? 勝てるものも勝てませんよ?」
エフィシが焦っている事は、ブレイズも気付いているらしい。
「お前には関係のない事だ! アルデッパ、パワーウィップです!」
「関係ありますよ、そちらが不調ならそれだけこちらが勝ちやすくなりますから。ドラゴンテール」
アルデッパの蔦と、ミロカロスの尻尾が再び激突する。
しかし、その時、一羽のクロッチが飛んで来た。
エフィシの前で止まると、一枚の大きな葉を差し出す。
葉には、文字が刻まれていた。
『わたしは だいじょうぶです。ひが こわくない ところにいるから しんぱいしないでください』
全てひらがなで書かれている。
間違いない。これはマリアからの手紙だ。
枝か何かで、葉に文字を彫り、クロッチに送らせたのだろう。
「マリアさん……無事でしたか。よかった」
思わず、エフィシはそう呟いていた。
ブレイズが怪訝な表情を浮かべるが、エフィシは気にしない。
自身を焦らせる要因はなくなった。これで心置きなく戦える。
「アルデッパ、申し訳ありませんでした。私が焦ってしまい、貴方の力を引き出せませんでした。ですが、もう大丈夫です。さあ、覚悟しろよN・E団。ここからが本番だ」
「ようやく目が覚めましたか。後は私の事を名前で読んでいただければ完璧なのですが」
エフィシは自信に満ちた表情を浮かべ、顔を上げる。
ブレイズは相変わらずの薄ら笑いを浮かべる。
そして、『ホエール』のはるか上空に、一つの影があった。
N・E団のレーダーにも引っかからないような高さに、小型の飛行機が来ていたのだ。
「ふっふーん、ようし、いい位置ね」
その飛行機の中にいるのは五人ほど。
その中の一人、リーダーと思われる女が上機嫌で言う。
「ここでいいわ。さあ、行くわよ」
「ほ、本当に、ここから行くのですか?」
部下と思われる男が不安げに尋ねる。
それもそうだ。リーダーの女は、パラシュート等、安全器具など全く付けていないのだ。
桃色の髪を左右で団子にし、着ている中華風の服と短いスカートは共に赤。さらに服をある程度捲り、腹は露出させている。
腕や足、腹には、ピンクと黄色のリボンが絡みついている。
「あ、そうだ。ここから落ちて、下のクジラに激突しないでしょうね」
「風の流れから見て、その心配はありません。しかし、本当に……」
「しつこいわよー。じゃ、早速行こうかしら。さあ、出撃よ」
その女が飛行機の床に立ち、両腕を広げる。
刹那、飛行機の床が開いた。
「いぃぃぃぃぃぃやっほぉぉぉぉぉぉう!」
満面の笑みを浮かべて叫びながら、女は落ちていった。