二次創作小説(紙ほか)

Re: 第八十一話 虫使い ( No.178 )
日時: 2013/11/16 21:28
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: CWUfn4LZ)

次の日の朝。朝食を食べ終えた後のこと。
「そおだ、レオちゃん」
サクラがいつもの猫撫で声でレオに声を掛ける。
「どうしました?」
「あたし、小型飛行機でここまで来たんだけどお、よかったら乗ってく? ここからシヌマシティまで、意外と遠いからねえ」
思いも寄らない申し出だ。もしかしたら今日中にもママルに挑戦出来るかもしれない。
「はい! ぜひお願いします!」
「よおし、決まりねえ。もう準備は出来てる?」
「え、今すぐですか? まあ大丈夫ですけど」
「じゃ、呼ぶわよお」
サクラはポケットから何かの機械を取り出し、ボタンを押す。
飛行機内にサクラからの信号とサクラの位置が伝わり、飛行機が飛んで来る。
飛行機と言うよりも、ヘリコプターの形状に近かった。プロペラも付いている。
「さあ、乗った乗った。それじゃあ、行くわよお!」
サクラの掛け声と共に、プロペラが回転し、小型飛行機が飛び上がる。
シヌマシティに向けて、一っ飛びだ。



シヌマシティ。
割と大きな町だが、木や草がそこら中に生えており、人口もそこまで多くない。
道が舗装されているが、道の脇はたくさんの池があったり、地面が泥濘んでいたりと、湿地帯に町を作ったような感じだ。
「さあ、着いたわよお」
木で作られた小屋のような建物の裏に飛行機が着地する。
「シヌマ支部って、こんな小さいんですか?」
「地下に広がってるのよお。大っきくしても町の景観に合わないしねえ」
確かに、この町にはあまり大きな建物はない。
一番大きな建物で、ジムくらいだろう。
「レオちゃん、ジムに挑戦するんでしょお? ママルの虫ポケモンたちは強いわよお、頑張ってねえ☆」
「ありがとうございます。絶対勝ってきます!」
サクラに別れを告げ、一旦レオはポケモンセンターに向かう。
少し休んで、いよいよジム戦だ。



シヌマジムは、木製の建物だった。
大きさは他のジムとほとんど同じくらいだが、屋根が無い。
繋がっている小さめの小屋には屋根が付いている。恐らくそこでジムトレーナーたちが日々鍛えているのだろう。
「お願いします!」
扉を開け、大きく叫んで、レオは中へと踏み入る。
バトルフィールドには何本か木が生えており、床には草と、所々濁った水溜りがある。
シヌマシティの特徴をよく表したフィールドだ。
そして、
「おーう! 今日は朝早くから挑戦者が来たね……って」
懐かしい彼女が出てくる。
赤髪のロングヘアー、露出の高めの緑を基調とした服、羽織った茶色のコート。
「レオじゃん! 久しぶりね、やっと来てくれたんだ!」
「ママルさん、お久しぶりです。元気でしたか?」
「そりゃもうめっちゃ元気だったよ。さあ、もう早速始めるよ!」
「いつでもいいですよ。望むところです!」
「そうこなくちゃね! バトルは三対三、それじゃ、スタート!」
その言葉を引き金に、二人はポケモンを繰り出す。
「まずはトゲチック、頼んだぞ!」
「バトルスタート、ストライク!」
レオの一番手は虫タイプに有利な飛行タイプのトゲチック。
対するママルのポケモンは、蟷螂のような大きな鎌と翅を持つ緑を基調とするポケモン。
蟷螂ポケモンのストライク、虫・飛行タイプだ。
「さあ、行くよ! ストライク、燕返し!」
ストライクは空高く飛び上がると、滑空するように猛スピードで突っ込む。
「ッ、速い! トゲチック、原始の力!」
トゲチックは前方に岩を盾のように浮かべ、ストライクの攻撃を防ぐ。
「よし、今だトゲチック!」
ストライクの動きが止まったところで、トゲチックが岩を一斉に放つ。
「ストライク、真空波!」
対してストライクは素早く空気の波動を放って岩の一つを破壊すると、
「燕返し!」
そこを突破口にして猛スピードで突貫し、今度はトゲチックを吹っ飛ばす。
「さあ攻め立てるよ! ストライク、シザークロス!」
さらにストライクは鎌を交差させてトゲチックに切りかかる。
「トゲチック、エアスラッシュ!」
体勢を崩しながらも、トゲチックは羽ばたいて空気の刃を飛ばし、ストライクを迎え撃つ。
ストライクの鎌は、空気の刃と相殺される。
「神通力!」
「躱してシザークロス!」
トゲチックは念動力でストライクの動きを止めようとするが、そへよりも速くストライクが動き、再び鎌を交差させ、トゲチックを切り裂く。
「くっ、やっぱり速い! あのスピード、誰も追い付けないぞ……!」
「当ったり前よ! 私のエースを舐めんなよ! ストライク、真空波!」
ストライクは素早く空気の波動を撃ち出す。
トゲチックは横に飛び退き、何とか回避。
それにしても、
「エースだって……?」
どうやらママルは先鋒にいきなり切り札を出してきたらしい。
「そ。このストライクは私のエースだよ。そんじょそこらのただ弱点突ける程度のポケモンじゃ、この子には勝てないよ! ストライク、燕返し!」
翅を広げ、ストライクは突貫する。
「そこだ! トゲチック、神通力!」
ストライクが激突する寸前、トゲチックは念動力を放ち、ストライクの動きを操る。
「叩き落として原始の力!」
念力を操作し、トゲチックはストライクをフィールドの水溜りに叩きつけ、さらに無数の岩を宙に浮かべ、一斉に放つ。
「ストライク、躱して!」
ストライクは何とか起き上がり、間一髪で岩を躱す。
しかし、先ほどより明らかにスピードが落ちている。
水溜りに落ちた事により、翅が濡れ、スピードが出せなくなっているらしい。
「スピードさえなくなればグッと楽になるはずだ。反撃だぞトゲチック、エアスラッシュ!」
「っ、ストライク、シザークロス!」
トゲチックは羽ばたいて、空気の刃を飛ばす。
対してストライクは鎌を交差させて振り抜き、エアスラッシュを相殺。
どうやらこのストライク、翅が濡れたことにより、スピードが落ちただけでなく、思ったように飛べなくなるらしい。
「さあママルさん、どうします? ジムリーダーは原則としてポケモンの交代は不可なんですよね!」
「そうなんだよねー。地上から真空波で地道に攻撃するしかないかな、なーんて」
そこでママルが言葉を切った。
不敵な笑みを浮かべ、そして再びママルは口を開く。

「そんな戦術、本当に私の前で通用すると思ってる?」

刹那。
「ストライク、蜻蛉返り!」
ストライクが地面を蹴り、凄まじいスピードでトゲチックに突貫する。
トゲチックに激突し、その勢いのままストライクはママルの元まで戻り、さらにモンスターボールの中に戻ってしまう。
「トレーナーが交代させられないなら、技で交代すればいい話。さあ、バトルスタート、トノッパー!」
そして代わりに出て来たのは、頭に卵の殻を被った、大きなバッタのようなポケモン。
バッタポケモンのトノッパー。虫タイプ。
「ま、こんな感じ。そう簡単には勝たせないよ?」
「……っ」
小さくレオは舌打ちする。
レオが思うに、ストライクの蜻蛉返りには二つの意味がある。
まずはストライクが不利になった時に、素早く交代させるため。
それと同時に、これで戦いやすくなる、と考える相手の思考や流れを崩し、こちらに流れを引き寄せるため。
「まあでも、まだまだここからだ。やるぞ、トゲチック!」
レオの言葉を受け、トゲチックは頷く。
「よし、トゲチック、エアスラッシュ!」
「トノッパー、エアスラッシュ!」
トゲチックが放った空気の刃を、トノッパーも空気の刃も放って相殺し、
「トノッパー、飛び跳ねる!」
トノッパーは思い切り地面を蹴り、大きく跳び上がる。
建物をはるかに超えるほど高くジャンプし、その姿がほとんど見えなくなる。
そして、十秒ほど過ぎた後。
超高速で落下してきたトノッパーがトゲチックに激突、トゲチックは大きく吹っ飛ばされる。
壁に激突、トゲチックはまだ倒れていないようだが、
「エアスラッシュ!」
トノッパーの放つ空気の刃が飛ぶ。
トゲチックは躱せず、空気の刃の直撃を受け、早くも戦闘不能になってしまった。